猟奇的サスペンス映画だが、主人公原田 智(佐藤二朗)の娘の楓(伊東 蒼)の自然な演技がそのいやらしさを薄めてくれて、よくできた娯楽作となっている。
原田 智は妻がALSの闘病の末亡くなり、少々自暴自棄的な生活を送っているが、彼の救いはしっかりものの娘、楓の存在だった。しかしある日彼は突然失踪する。前日楓に指名手配犯山内照美を見かけたので、その賞金3百万円をもらうといっていた末での失踪だった。楓はその失踪に疑問を抱き、失踪当日働きに行っていた現場まで探しに行くが、そこで出会った原田 智は父とは似ても似つかぬ男だった。その顔は指名手配犯の照山だったのだ。果たして父親はどこに行ったのか?楓はその影を追って追跡をする。映画の前半は娘の孤軍奮闘ぶりが描かれるが、しかし後半から話はガラッと変わる。果たして父親と照山の接点はどこにあったのか、映画は急激にサスペンスの様相を見せて緊迫の場面の連続となる。
このストーリーの緩急の切り替えが見事である。佐藤と伊藤の演技が秀逸であり、ヒューマンドラマとも、猟奇ドラマともいえない、独特の雰囲気のサスペンス映画となっている。夏の夜にふさわしい?一作だ。
〆