島田氏の競馬小説である。ブリーダーーズとあるからこれは血統に関係する話かと思い読み始めたがすこぶる面白い。勿論競馬好きには面白いが、知らなくても競馬と云う競技と云うか、博打と云うか、一種独特の世界にロマンを感じるストーリーだ。
主人公は競馬週刊誌のベテランライター。目の付け所が独特であり、調教師らから一目置かれている。彼が目をつけたトナミローザと云う牝馬がもう一つの主人公。
この馬のレースローテーションと騎手に通常と違うパターンを感じて、その馬主やら生産牧場の調査を始める。するとなんとこの馬は明治時代の初めのころに輸入されたローザと云う牡馬の血脈を持っている最後の一頭だという。しかも過去、ローザと云う牡馬の子供たちの中には障害レースで勝ち上がったもいるという特異な血脈だった。
そのローザの血を持ったトナミローザは障害ではなく、なんと平場のオークストライアルのフローラステークスに勝ってしまう。清水はこの血脈の不思議さと関係者のミステリアスな行動に関心を持ったのだった。
少々ネタバレになるが、真偽のほどは分からないが、馬の血統はけっして遺伝子通りではなく、その馬の経験値がその子供たちに受け継がれる場合があるということをこの作品で初めて知った。とにかく面白いこと間違いない小説だ。
文庫が初出である。
〆