
「レミゼラブル」はカンヌ映画祭で審査員賞を受賞した作品である。あのミュージカルのレミゼラブルとは違う映画だ。フランス映画。
現代のレミゼラブルはとは移民の少年たちだという。最後にユーゴーの言葉を借りて本作のモチーフを表明している。
ユーゴーの「レミゼラブル」の舞台になったパリのその地区は今はアフリカ系移民たちの住む、アパートメントが林立する、スラムになっている。映像では荒廃としたアパートメントが描かれ、働くとも、学校へ行くとも、なんとも行動が不明な人々が行き交う。
主人公はルイスと云う犯罪捜査班にシェルブールから移ってきたルイスと云う男。3人でチームを組パトロールする場面が、前半を占める。そのなかでこの地域を支配する「市長」と呼ばれる男や、イマームを自称するアリと云う男、ドローンを飛ばして隠し撮りをするバズと云う少年、盗みの常習のイッサと云う少年らが登場する。
事件はこの地域に興行に来たロマのサーカス団から子供のライオンが盗まれたことから起きる。ロマたちはこの地域に殴り込みをかけるぞと市長を脅す、クリスと云う警察官をリーダーとするルイスら3人のチームはそれを食い止めるべく子ライオンを探索する。やがて犯人が判明する。この小さな子ライオンの窃盗と云う小さな事件が、さらにとんでもない大きな事件を引き起こす。
移民たちのなんとも言えない閉塞感が画面を通して痛々しいくらい、感じられる。特に少年たちの絶望感は果たしてどこからきているのだろうか?しかしこの映画、フランス人らしいフランス人はルイスらの上司の本部長とクリスくらいしか、登場しない。ルイスも生粋のフランス人とは思えない。フランスのこの現状にフランス人たちは頬かむりしていると監督は云いたいのだろうか?
空回りしているがルイスの警察官としての矜持が痛々しいが、唯一の救いだろう。

なお、クリスらを自警団といっている解説もあるが、映画の訳では犯罪対策班といっており、その位置づけはよくわからない。上司の事を本部長と云っているのだから警察組織だと思うのだが!今写真はその班の3人組。左がルイス、中央がクリス。〆