ぶんぶんのへそ曲がり音楽日記

オペラ、管弦楽中心のクラシック音楽の音楽会鑑賞記、少々のレビューが中心です。その他クラシック音楽のCD,DVD映像、テレビ映像などについても触れます。 長年の趣味のオーディオにも文中に触れることになります。その他映画や本についても感想記を掲載します。

カテゴリ:映画 > 謀略物

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ネットフリックスオリジナルの映画である(2018年)。今年のアカデミー賞でも「マンク」や「シカゴ裁判」がノミネート・受賞するなど、ネットフリックスの作品は目が離せない。
 最近いくつか見ているが、興味深いのは、視点がハリウッドとはずいぶん違うことだ。例えば中東戦争をエジプト側から描いたり、キューバ問題をキューバ側から描く。それも主人公はサダトやカストロではなくごく普通の人々、軍人であったり、外交官であったりすることだ。

 この「ベイルート」もごく普通の外交官が主人公である。舞台は1972年、ベイルート内戦前のまだ美しいベイルートがあったころ。メイソン(ジョン・ハム)はベイルートの外交官の代表をしている、妻とパレスチナ人のカリームという少年を引き取って育てている。しかしこの少年はミュンヘンオリンピックテロ事件の犯人の一人、ラジャールの弟だったのだ。
 そして、この1972年、ラジャールらがカリーム奪回にメイソン邸に侵入する。カリームは奪われ、妻は殺害される。メイソンは失意のまま外交官をやめ、アメリカに戻り、アルコール浸りのすさんだ生活をしていた。

 そして10年後亡霊のようにカリームが現れた。メイソンの友人のカルを誘拐したという。米国NSCはメイソンに交渉人を依頼する。政府代表のガイザー、NSCのルザック、現地工作員のサンディ(ロザムンド・パイク)そしてメイソンと云うチームでカルの救出を図る。

 冒頭書いたようにごくごく普通の外交官が事件に巻き込まれ、内戦後のベイルートに戻る。夢のようなベイルートが、破壊の限りを尽くされた町に変貌していた。そういう時代背景の中での謀略戦。こひねりのきいた佳作である。〆

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最近ネットフリックスと契約してからオリジナル映画を見るようになった。それぞれとても面白い。
アイルランドマフィアを描いた「アイリッシュマン」、イギリス史に残る考古学の大発見をした男の物語「DIG,時の闇」、ボニーとクライド事件と復活した老テキサスレンジャーズの物語「テキサスレンジャーズ」などである。それぞれ実話に基づいた作品であることが共通点である。しかも視点がニッチというか個性的であるのが良い。

 そういう意味でも今回見た「コードネーム・エンジェル」(原題はTHE  ENGEL)も秀逸。中東戦争におけるイスラエルとエジプトの謀略戦を描いている。通常ハリウッドだと、イスラエル側から見た映画になるが、これはエジプト側から見た中東戦争である。

 1967年ナセル大統領率いるエジプトはイスラエルに破れ、シナイ半島およびヨルダン川西岸などを失う。ナセルはロシアと組んででも失地を回復すべきと吠える。
 本作の主人公のアシュラフ・マルワンはナセルの娘婿で、外務省の高官(後になる)である。彼はナセルの息子ながら、ナセルのソ連寄りの政策に反対していて、むしろアメリカに近寄り、アメリカの力で失地を回復すべきと考えていた。そのためには短期的でよいから、反撃し、戦争で勝利をするという実績を作るべきと考えていた。

 やがて、ナセルは急死し、後継者のサダトが大統領になる。サダトはナセルのようなソ連寄りでなく、むしろアメリカ寄りで、次第にサダトはァシュラフを重用してゆく。ァシュラフは戦争をなるべく早く終わらせて、講和に持ってゆけるような諜報戦を考え、サダトの同意を取り付ける。ァシュラフが私生活を犠牲にして、中東の和平を考え行動するさまは英雄行為といって良いだろう。イスラエル側からもエジプト側からも後年評価されたという。

 歴史はカーター大統領の仲介でエジプトとイスラエル和平を見とどけている。2人の首相はノーベル平和賞を受けている。
 歴史に埋もれた人間はあまたいるが、このように丹念に掘り出す作業は清々しい。


 さて、ネットフリックスにくらべて、ツタヤの宅配はあまり良い作品がない。最近2作品を見たが、一稿を起こす気力もないような作品でここについで書きする。
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 一つは「コンタクト・消滅領域」、アフガニスタンのとある谷を挟んでフランス軍(国際平和治安部隊)の中隊が駐屯している。保護している村人たちとはあまり良い人間関係を築けていない。そんな中中隊から次から次へと失踪事件が起きる。つごう4名が行方不明となる。一方明らかにされていないが、村人の中からも行方不明者が出て、お互い疑心暗鬼になるというもの。結末はなんとなくよくわからないが、現代の神隠しらしい。中隊長のとった最後の行為は何とも痛々しいと思うのは私だけかもしれない。

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 もう一つはこれも謀略物。フランスの潜水艦チタン号がシリアから工作員を撤収させる作戦遂行中、異音を発見する。発見したのは音響分析官のシャントレッド、神の耳とも、靴下(靴を履かないで任務に就く)とも呼ばれている若者だ。最初その異音は潜水艦と判断するが、狼の唄声のような異音については最後まで自信が持てる分析ができなかった。結局作戦は成功するのだが、シャントレッドへの信頼は失墜する。
 しかしこの異音の発生源は、ソ連の原子力潜水艦だがすでに廃船になったものだった。それゆえシャントレッドも見逃したのである。しかしそれからしばらくのち、ミサイルがフランス目がけて発射された。発射源はソ連の潜水艦であるという分析の元、対抗のミサイル発射のためフランス側も原子力潜水艦を発進させる。このままでは世界戦争になる。
 そんな中、シャントレッドはこのミサイルは「廃船になった潜水艦」からのものだと分析する。果たして発射はソ連なのか、誰の手の物か?そしてフランス軍の行動はどうなるのか?

 この映画は時代背景がわからない。おそらく現代だと思うが、架空の時代の物語のようでもある。ソ連とフランス(西側)の対立している、冷戦時代かもしれない。そういうことなので、なんとなく絵空事のように思えてならない。フィクションにもそれなりのリアリティは必要かと思うのだが?


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金融資本主義に呑み込まれた韓国社会を描く。実話をもとにしたフィクション。

 アメリカの大手ファンドが大韓銀行買収に動く。しかし買収額は2兆ウオンにも満たない金額だ。資産価値は70兆ウオンだという。なぜこんなことが起きたのか?それはBIS(自己資本比率)低いという内部資料が流出してしまったからである。果たしてその真偽はやぶの中で、金額だけが先走り。、もしこれが韓国の金融委員会を通ればファンドはぼろ儲けできる。つまり安値で買った銀行を、高値で売り戻せば巨大な差益が出るのである。

 一方、このBISを流出した男女が不審な死を遂げる。男は交通事故。女は自殺である。しかもその女の自殺前には交通事故に絡んで検察の尋問があり、それがセクハラだったという。そしてそのセクハラが自殺の原因だとマスコミに暴かれてしまう。その検事がこの映画の主人公ヤン(チョ・ジヌン)である。彼は定職の処分を受けるが、濡れ衣を着せた陰謀を暴くため、孤軍奮闘するという話だ。

 結局これは政治決着となってゆくのだが、政治から司法まで金融資本主義にずぶずぶになった韓国社会経済の一面を描いている。
〆 



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著者の作品は「リボルバー・リリー」と「マーダーズ」を読んできた。このうち第1作の「リボルバー・リリー」は時代設定も、主人公も、そして現代のチャンバラともいうべき、激しい銃撃戦と逃避行。その独創的な内容はとても印象に残った。「マーダーズ」は私には少々未消化のところがあった。

 さて、第3作の「アンダードッグス」、これはまた前作らとは異なったスタイルで、大変面白かった。謀略物であり、サバイバルものである。また時代設定も今作はとても面白く独創的である。

 舞台は香港、時代は香港が中国に返還される直前の1996年末から1997年の春節までを描く。
主人公はもと農水省の官僚、今は証券マンの古葉圭太、彼は農水省の裏金事件と云う不祥事の責任を取らされ、役所をやめ、現在の証券会社に勤めている。ある日彼のクライアントである大富豪のマッシモ・ジョルジアンニと云う人物から面談を申し込まれる。面談の内容は1997年の香港返還のタイミングで香港の恒明銀行に預けられているフロッピーやら書類やら、アメリカの政財界人の不正蓄財の証拠を盗めという奇想天外のものだった。これはマッシモのかたき討ちであることが次第にわかってくる。具体的には古葉がリーダーに多国籍のメンバーでそれを実行せよというもの、多額の報酬が約束されていた。古葉は不祥事の追及をいまだ引きずっておりそれを引き受けることにした。そして香港にわたるが、彼と組むメンバーはいずれも過去に瑕を持つアンダードッグ(負け犬)だったのだ。

 ここからは、米、英、露、中が入り混じり、裏切りの数々、そして次から次へと明るみに出てくる真実、その中で素人も同然の古葉がどう立ち廻り、生き残るかがこの小説の肝である。
 構成としては1997年の銀行からの書類の奪還という古葉を中心にした話と、2018年の古葉の娘の瑛美の数奇な物語が交錯する。登場する人物の性格付けはあるものはステレオタイプということもないとはいえないが、多くは大変魅力的に描かれている。特に中国人のアニタ・チョウには魅かれる。
 これはリバルバーリリーを超えた、アクション巨編である。このジャンルの好きな方は必見。

 


pmc

 韓国映画と思われるが、せりふはほとんどが英語。
 タイトルのPMCとは民間軍事会社のこと。バンカーとは掩蔽壕のこと。38度線の下にある地下要塞の事である。

 アメリカは北朝鮮の非核化を条件に制裁を解除、しかし北朝鮮はアメリカの思うとおりにならず、むしろ中国とさらに接近。米中の経済摩擦は悪化、マクドナルド大統領の支持率は急降下。
 2024年再選を迎えたマクドナルド大統領は、38度線の地下の秘密壕で韓国ー北朝鮮会談に出席の大臣の亡命を企て、支持率アップを図る。任務は極秘でCIAが雇った傭兵部隊いわゆる民間軍事会社のラプター16が請け負う。リーダーはエイハブと云う暗号名の韓国人で10名のメンバーは多国籍で構成。しかしこのアメリカの企ては中国にすでに見破られていた。かなり話は複雑だが、要は中国は北朝鮮の乗っ取りを図る罠をアメリカにかける。傭兵部隊は地下の掩蔽壕の中で追いつめられる。

 話の構図としては、謀略物で面白いが、問題は映画化する手法である。リーダーのエイハブはじっとしてなにもせず、ただモニターを見てひとりでどうしようどうしようといっている姿はやり手の傭兵のリーダーとは思えない 。もう少し英雄的に描いたほうが、この謀略が生きる。
 もう一つ、話はほとんど掩蔽壕の中で展開されるので、謀略がどう展開しているのかは間接話法でしかないというのも、物足りない。
 話のスケールの割には映画の作りが小作りなのがもったいない。
 見るのは無駄な映画だ。

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