
バブル経済の折、大阪の 北浜の天才相場師と云われた、尾上 縫をモデルにし、社会派ミステリースタイルにした小説。かなり実在の尾上を思わせる記述もあるが、創作部分がかなり多いので小説のジャンルだろう。
面白いのは小説のスタイルである。著者と思しき人物が、コロナ禍の現在、尾上 縫を題材に作品を書こうと、尾上にまつわる人物たちをインタビューする。そういうインタビュー形式で次第に尾上の素性を明らかにしてゆく。ここで登場するインタビューを受ける人物たちの造形が面白く、尾上が主人公だろうに、わき役のような印象すら受ける。ただその造形は小説的に見て面白いのであって、リアリティと云う意味では少々物足りない。ノンフィクションにしてはその面白みが消えるので、小説にしたのは正解だろう。しかしこの尾上なる人物、小説にしてもノンフィクションにして魅力的な人物であることは間違いあるまい。
最後でこの作品がミステリー仕立てであることがわかるという寸法。なかなか凝った作品だ。好みとしてはノンフィクションで読んでみたい。〆