ぶんぶんのへそ曲がり音楽日記

オペラ、管弦楽中心のクラシック音楽の音楽会鑑賞記、少々のレビューが中心です。その他クラシック音楽のCD,DVD映像、テレビ映像などについても触れます。 長年の趣味のオーディオにも文中に触れることになります。その他映画や本についても感想記を掲載します。

カテゴリ:映画 > ミステリー


71jvCKtCgLL._AC_UL320_

バブル経済の折、大阪の 北浜の天才相場師と云われた、尾上 縫をモデルにし、社会派ミステリースタイルにした小説。かなり実在の尾上を思わせる記述もあるが、創作部分がかなり多いので小説のジャンルだろう。

 面白いのは小説のスタイルである。著者と思しき人物が、コロナ禍の現在、尾上 縫を題材に作品を書こうと、尾上にまつわる人物たちをインタビューする。そういうインタビュー形式で次第に尾上の素性を明らかにしてゆく。ここで登場するインタビューを受ける人物たちの造形が面白く、尾上が主人公だろうに、わき役のような印象すら受ける。ただその造形は小説的に見て面白いのであって、リアリティと云う意味では少々物足りない。ノンフィクションにしてはその面白みが消えるので、小説にしたのは正解だろう。しかしこの尾上なる人物、小説にしてもノンフィクションにして魅力的な人物であることは間違いあるまい。
 最後でこの作品がミステリー仕立てであることがわかるという寸法。なかなか凝った作品だ。好みとしてはノンフィクションで読んでみたい。〆

09386597

社会派ミステリーのもう代表作家といってよいだろう。「震える牛」は私が読んだ彼の作品ではベスト。何度読んでも面白い。
 その相場氏の最新作である。今回は日本社会の2極化をモチーフにしている。日本は貧困率は低く、貧富の差は少ないとされてきた。しかし昨今の社会環境、経済環境は本作のタイトルのアンダークラス(下層民)を生んでしまった。

 主人公はベテランの田川刑事とキャリアの樫山刑事。この不釣り合いのコンビが難事件を解決するという話だ。秋田県の能代市の老人ホームの老婦人藤井詩子の水死体が老人ホームの近くの池で発見される。側にはベトナムからの研修生アインがいて、彼女が第一発見者であるが、なんと彼女が藤井婦人に頼まれて殺害したという。しかしベテラン刑事の田川は不審に思い徹底的に事件を掘り起こし、アインと知り合いと云う樫山刑事と事件の真相を暴く。

 この作品の背景を象徴する企業としてアマゾン、ZOZO,ウーバー、ソフトバンクなどを思い浮かばせる名前が登場する。かなりストレートな描き方なので、少し安易に流れているように感じないでもないが、近年の世相を切り取って、近未来的に日本の社会を描いており面白く読んだ。
 ただ社会を描くことが主になり、ミステリーとしては案外と底が浅く、なかなか両立させるのは難しいんだなと感じた。彼の作品では「震える牛」のレベルまでは達していないように思うが。
 こうしてみると松本清張の「砂の器」というのはなんと巨大な金字塔であるか、改めて感じた次第。



41fNmPrko6L._SX336_BO1,204,203,200_
英国の推理作家協会賞受賞した作品。イモレーション・マンと名付けられた連続殺人事件。
イモレーションとは焼き殺すことを意味するそうだ。被害者はそれぞれ著名人でその世界では名のしれた人物たち。彼らは皆、カラブリア地方のストーンサークルで火で焼き殺される。被害者同士の関係は不明である。

 主人公は重大犯罪分析課の部長刑事。もともとは課長だったが、不祥事があり退職、しかし実績を買われて復職。名前はワシントン・ポーと云う不思議な名前。彼の上司は元部下だった、ステファニー・フリン警部。そしてもう一人ユニークな登場人物がいる。ティリー・ブラッドショーというコンピューターの専門家。博士号を2つも持っているが、まだ23歳である。ただ16歳からもう大学で研究にいそしんでいたこともあって、まったくの世間知らず。そういうチームが捜査に協力する。協力すると云うのは、捜査は事件のおきたカラブリア地方の警察が担当(いわゆる所轄)し、ポーたちはいわゆるプロファイラーの仕事となる。
 しかし熱血刑事のポーはそれではおさまらず、所轄とぶつかりながら、そしてティリーとの珍コンビ
で次々とこの事件の謎を解いてゆく。
 この事件の背景など面白いが、この小説の読み物としての面白さは人物の描き方と交じり合いだろう。例えばティリーとポー、ポーとフリン、ポーと所轄の関係が面白く描かれて興味が尽きない。
最後までページをめくる指が止まらない。
 一つ不満を言えば、イギリスの地方に不案内の私のようなものにとって、地名とロケーションがぴんとこない。地図をつけてもらえればいうことないだろう。

 


60ebc372147a097d
 タイトルの「暗数殺人」の暗数とは、「実際の数量と統計上扱われる数量との差、主に犯罪統計において警察などの公的機関が認知している犯罪の件数と実社会で起きている件数との差」をさす。
 本作品は韓国映画で警察ものであり、サイコパスものでもある。

 主人公は麻薬課の刑事キム・ヒョンミン(キム・ユンソク)。彼は自分の子飼いのタレコミ屋から死体遺棄をしたという男カン・テオ(チュ・ジフン)と会う。しかしその男は死体遺棄どころか恋人の殺人の容疑でその場で殺人課の刑事らに逮捕されてしまう。キムはその男の死体遺棄の話に興味を持つ。そして恋人殺人で15年の刑に服しているカンに面談をする。キムはそこで驚愕の資料を見る。その場でカンは7つの殺人の自供書を書いたのだ。キムはその事件を追うために刑事課に転属する。そして警察内では孤立しながら捜査を続ける。しかしそれはカンの仕掛けた罠だったのだ。ころころかわる証言でキムは振り回される。はたしてキムはカンに勝てるのか?

 暗数殺人として推定される数字は韓国内で約200件だそうで、キムはそれを警察の恥と考え執念を燃やす。静かな男キムをキム・ユンソクが熱演をする。対するカン・テオは素晴らしい頭脳を持つが、幼児からの虐待でねじ曲がった心を持つ男だ。キムを翻弄し刑を軽くしたり、金をせびったりする。チュ・ジフンはきれいな顔をしているのに突如狂ったよう男になる、異常者をこれまた熱演。2人の対決が見ものの作品だ。韓国映画のサイコパスものには珍しくエグイ場面がほとんどなく、丁寧に作られた作品だ。
事実に基づいた話である。


main
 原題は「NIGHT CLERK」である。アメリカの地方都市の小規模なホテルの夜勤をしている青年バート(タイ・シェリダン)が主人公である。この作品の肝はこのバートがいわゆる障碍者であるということである。とはいっても五体健常である。彼はアスペルガー障害だったのである。人との接触・コミュニケーションがうまくできないのだ。
 母と二人で住んでいるが、バートは地下に住んでおり、母とは事実上別居、食事も別にとるのだ。しかしこういう彼には定職がある。支配人の理解もあり夜の20時から朝の3時45分までの比較的暇な時間のホテルのフロントを受け持つ。小さなホテルだからその間彼は一人になる。

 彼の持つ秘密は盗撮である。ホテルの部屋にカメラを仕掛けホテル内の動きを撮影しメモリーカードに保存している。目的は写した人物の会話をまねして、自分の会話力や当意即妙の返事をして
コミュニケーション能力の改善を図るという涙ぐましい努力をしていたのだ。ただそれがなぜ盗撮なのかはこの映画のシナリオの奇妙なところ。映画でも見て練習すればよいのにと思ってしまう。
盗撮をしているうちに彼はとんでもないものを見てしまう。彼の盗撮はばれてしまうが、警察も周囲もとてもやさしくて、バートは首にならずにほかのホテルに移動するだけってのも随分とやさしい。

 しかし新しいホテルで彼は運命の出会いをする。それはアンドレアと云う魅力的な女性である。ここからは話が複雑に展開するのでカットするが、終わり方が私にはよくわからない、随分と生煮えな映画だ。

 アスペルガー症候群の主人公では韓国映画の「無垢なる証人」というのがあるが、あの映画のほうがずっと社会的な問題提起をしていて、しかも実に感動的だった。主演の少女もうまかった。

 本作もそういう後味を期待したのだが残念ながらこのような作品を「スタイリッシュな」というのかもしれない。バートの演技も半端である。わずかにアンドレアと云う女性(アナ・デ・アルマン)
と云う女性がすこぶる魅力的なのが収穫、というのは作品の趣旨に反すれけど!

↑このページのトップヘ