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大相撲三月場所を観戦した。昨年の11月場所以来である。実は1月場所の升席も取ったのだが、コロナの非常事態宣言下、躊躇してしまって、結局テレビ観戦だった。しかし相撲協会は良心的で、しっかり払い戻しをしてくれた。

 さて、今回は中日8日目の観戦である。席は11月よりも少し前方の升席であった。写真は土俵入りだが、写真を撮ってもやはり前の方で撮ると迫力がある。上の写真は一眼レフカメラである。少しズームしている。
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これは、携帯で撮ったもの。全景が見渡せる。本日は満員御礼だ。

 先場所のコロナ影響下の休場者多発に比べると、今場所は休場者が横綱2人と琴勝峰の3人だけだから、充実した場所を期待したが、少し裏切られ、でもやはりこのメンバーがそろうと面白さはしっかり味わえる場所である。8日目になると、星の動きがだんだん見えてきて、したがって優勝やら、勝ち越しやらの展望だんだん見えてくる。

 中日8日目だけに、良い取り組みが連続して、幕内の特に後半はあっという間に終わってしまった。さて、その中でも目玉は2つ、一つは宇良×炎鵬。十両の取り組みなのがもったいないくらいだ。もう一番は今場所の優勝を占う相撲、高安×照ノ富士である。一敗同士で激突だ。

 炎鵬は惜しかった、土俵際でもつれ合って外に飛び出たのだが、物言いがつき、わずかに炎鵬が先に出ていたという判定だった。
 帰宅してから録画しておいたもので見たが、これは取り直しでもよいのではないかと思われた。
 ついでに、勝負判定につき一言。果たしてどういう基準でもつれた勝負の勝ち負けを決めているのかがよくわからない場合がある。ある場合は足が先に出ているからとか、足の甲が返っているとか、死に体だからだとか、外に飛び出るのが早いとか、その都度と云っては語弊があるが、どういう基準で判定しているのか、いつも割り切れない思い、そういう取り組みが1場所に2つか3つは必ずある。勝負審判の恣意で決められるということはないとは思うが、わかりやすい判定の優性順位を教えてもらいたいものだ。例えば足の甲が返っているのと、足が出ているのとではどちらを優先にするのか、などである。P3210023

 ついでに、行司の軍配の基準もよくわからない。特に立ち合い、厳しい人はちょんづきではだめだが、甘い人はOKだなど。例えば今場所照ノ富士が阿武咲との対戦で、最初の立ち合い、手つき不十分でストップをかけられた。ところが2回目でも同じちょんづきなのにOK、どういうことだろうか?立ち合いで両手をつくと云うのが基本だそうだが、しっかりついている相撲は数人しかいやない。あとは片手付きやさっと砂を撫でるくらいである。そして不思議なのは同じ立ち合いでもやり直しをさせる厳しい行司もいれば甘い行司もいるということだ。それは解説者も公言しているのだ。
 たとえて言えばこれはゴルフの「あるがままに原則」と同じで、どの行司に当たるのかも勝負の一環なのだと思えということなのだろうか?

 さて、余談が長くなったが、高安×照ノ富士戦を制したのは高安だった。高安は大関経験者ながら、優勝経験がないという不思議なお相撲さんだ。それは型と云うのが明確にないためか、強い時と弱い時の差が大きいからだろう。めちゃくちゃに強いかと思えば、ころっと負けてしまう。まるで御嶽海のお兄さんだ。
 そしてけがをしやすい。と云うこともあって、大関を陥落してしまった、今場所は安定している、体もしまってきているうえに大きくなっているようにすら感じる。強烈な体当たりからの攻撃はスゴイ威力を発揮している。今日の照ノ富士戦も当たり負けせず、しっかり中に入って、詰めもあせらず丁寧に攻めたのが良かった、あれではさすがに受けの照ノ富士は勝てない。
 しかし照ノ富士はこれで2敗したが、負けた相撲は同じように、中にはいられて、結局こらえきれずに負けてしまうのだが、気になるのは、先場所はもう少し前に出て相撲を取っていたような気がする。このような受けの相撲を取っていると、古傷を痛めやしないかとはらはらする。
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 今日の高安の勝利は大きい。照ノ富士は10勝すればまず大関復帰の場所、高安は、小結まで這い上がり、今場所大勝ちするか優勝でもすれば、来場所の成績いかんで大関と云う目が出てくるからである。ライバルを撃ち落とした高安は会心の思いだろう。部屋の親方の元横綱稀勢の里もラジオ解説でべた褒めだったらしい。部屋でも稀勢の里がまだ稽古をつけているのがきいているのかもしれない。

 その他で印象に残ったのは、明生×隆の将戦である。この2人の立ち合いの激突は今日一番、2人のあたりはゴツンではないのだ、ゴチンという、あたかも何かがひしゃげたような音。よくあれで脳震盪を起こさないものだ。勝負は明生の勝利だったが、この二人の対戦は今後とも目を離せない。

 これも余談だが、アメリカンフットボール(NFL)では脳震盪を起こすと、プロトコルがあって、症状しだいでは、1試合休場とかそういうルールになっている。それはかつてのフットボール選手でアルツハイマーになる選手が多く、問題になったからだ。これは映画ににもなったほどだ。相撲の場合はそいう言うルールがあるのだろうか?今日も翔猿が少々ふらついていた。

 ころっとかわるが、翔猿は好きなお相撲さんだ。お兄さんが同じ幕内の英乃海で兄弟で幕内と云うすごい一家である。しかしこの二人、体形が全く似ていないのは面白い。若隆景兄弟は比較的体形が似ているので、初めはこの翔猿と英乃海の二人が兄弟とは信じられなかった。翔猿は名前の通り激しい動きが売りで実に生きの良い相撲を取る。体形も最近の足の長いお相撲さんと比べると低重心。まあとにかく、生きの良さは幕内随一といって良いだろう。それにしても良い名前をもらったものだ。P3210032

 さて、今日の相撲で印象に残ったそのほかの相撲。志摩ノ海×北勝富士戦がその一つ。勇み足で北勝富士が負けてしまったが、テレビアナウンサーがもったいないというくらい、もったいなかった。
 結びの大栄翔は昨場所の進撃を彷彿とさせる、強烈な立ち合いで、大関朝乃山を吹っ飛ばしたのが痛快。押し相撲の怖さを感じさせる一番だ。それしかできない大栄翔にいいようにやられる大関もいかがなものか?
 今場所今一盛り上がらないのは、大関陣が精彩がないということだろう。特に正大は昔に戻ってしまった。大関になったころのあの前に出る相撲はどこへいったのだろう。貴景勝も17キロ減量した効果が、星に結びついていないのが、評価の分かれるところだろう。わたしは稽古をして体が大きくなるのならかまわないと思うのだが!
 例えば十両の石浦の今場所のムキムキマンぶりは相当なものだ。これは鍛えてこのように大きくなったそうである。
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 いつも解説者が云うことだが、昔と比べてけいこ量が減少しているそうだ。コロナのせいで出げいこができないということも一因らしいが、それはいいわけで、工夫次第では、けいこ相手が格下でも十分力がつくという。結局は大関にもなると親方も稽古や日常生活に口をはさめないということではないか?
 高見盛が部屋を引き継ぐのを断ったそうだが、自分をよく知った人間の判断なのだろう。私は潔いと思う。現役では強くても指導者としては不十分な人と云うのは、どのスポーツ界にもおられるのだ。相撲界にもそういう弊害があるのではあるまいか?

 最後に横綱の欠場はがっかりだが、それに対して厳しく指導できない相撲協会、親方には猛省を促したい。白鵬や鶴竜のけがの具合はよくわからないが、少なくとも、貴乃花や稀勢の里のけがよりも重傷だとは思えない。だから2人の過去をうんぬんして、白鵬、鶴竜の横綱延命を肯定はできまい。昨年の11月場所の観戦記も横綱への不満で終わったが、今回も同じになってしまった。残念なことである。

 今日は朝から雨、出かけるときは大雨だったが、帰りは雨も上がりさわやかだった。大いに相撲を楽しんだ一日だった。〆

追記:宇良が昨日の相撲で肉離れ、今日から休場と云う残念なニュースが飛び込んできた。今場所は6勝2敗と好調だっただけに残念。