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著者の作品の「煉獄の獅子たち」の続編である。しかしこちらの作品の方が先に出ており、時系列的には前後している。つまり「煉獄の獅子たち」の後の物語となる。

 関東の暴力団の雄、東鞘会が内輪もめに終止符を打った後の物語である。東鞘会は警察の潜入者である十朱が支配。しかし十朱は警察とは縁を切り極道の世界に生きる。そんな中、警視庁の組織犯罪対策部の隊長、阿内は新たに兼高と云う男を東鞘会の下部組織の神津組に送り込む。兼高は経済やくざ化しつつある東鞘会のなかで、過激な暴力で、短期間で神津組の若頭補佐までのし上がる。

 そんなか、「煉獄の獅子たち」で内輪もめに敗れ、海外に逃避した神津太一が舞い戻り、東鞘会の会長の十朱を狙う。警察と神津太一、そして東鞘組の三つ巴の凄惨な争いが繰り広げられる。

 前作同様、過激な暴力描写がきついが、潜入捜査官の苦悩が色濃く描かれている。この作者の描く人物は、現実に存在しそうもないように思えるが、それにリアリティを吹き込むところが、すごいところ。
〆