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骨太の犯罪映画、警察映画といって良いだろう。メル・ギブソンが老齢の刑事役を好演している。
この作品はかなりの長尺物だ。およそ160分。しかし決して冗長なところはない。それはこの作品が非常にがっちりした構造、すなわち起承転結で構成されているからだろう。あたかもクラシック音楽のソナタ形式のようだ。
 例えば「起」の部分ではこの映画の登場人物の紹介と描写である。強烈なのは主人公のふたりの刑事の登場シーンだろう。ブレット(メル・ギブソン)とトニー(ビンス・ボーン)は麻薬の密売人を張り込んで、突入するが、その際の犯人への尋問がまるでアメリカの黒人人種問題で全米を巻き込んだあの事件と全く同じだということだ。このショッキングなシーンは隠し撮りされTVに映る。そしてこのことがこれから承、転、結と続く犯罪に結びつくのだ。

 この映画のもう一つすごいところは、犯罪シーン、銃撃シーンは160分のうちのほんのちょっぴりである、例えばクライマックスの銃撃戦でも10分くらいであるが、そこにいたる、つまり犯罪に至る過程の描写、特に心理描写が実に緻密なことだ。犯人たちの心の動きが手に取るようにわかるようになっている。

 公開されたときにどの程度話題になったかはわからないが、このての作品を愛好する方には是非お勧めしたい。原題は「DRAGGED ACROSS CONCRETE」コンクリートの地べたを這いずり回ってと云う意味だろうか?