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 ペネロペ・クルスが演じている、キャスターのバージニア・ヴァレホの著書(LOVING PABRO HATING ESCOBAL)を下敷きにした映画である。
 麻薬組織メデジングループのリーダー、パブロ・エスコバルの1980年代から射殺されるまでのほぼ10年を描いている。

 コロンビアのメデジンを本拠地とする麻薬組織メデジングループはパブロ・エスコバルをリーダーに麻薬のアメリカ輸出で大きな財を成していた。しかしコロンビア政府は自国での制裁の困難さからアメリカと犯罪者引き渡し協定を結び、アメリカの法廷で裁きを受けさせるべく動いていた。パブロはそのような動きに対して自らが立候補して国会議員になり、法案を廃棄させるべく賄賂や暴力で、抑えていった。しかしメデジングループの中でもそういうエスコバルの過激な行動に批判的なカリグループなど、メデジングループも一枚岩ではなくなってきた。

 私生活ではエスコバルは愛妻家ではあったが、次々と女を変え妻を悩ましていた。コロンビアの放送局の美人キャスターバージニア・ヴァレホが1981年、メデジンのパーティーに招待された。
エスコバルがメデジンの貧しい人々に2000棟の家を提供するプロジェクトのお披露目パーティだったが、実はその日が麻薬組織メデジングループの結成式だったのだ。慈善を隠れ蓑にしたわけだ。バージニアは初対面のエスコバルに惹かれやがて二人は深い仲になる。

 小さな組織だったエスコバルが次第にのし上がり、頂点を極めるわけだが、スカーフェイス同様、しかし頂点の人間には落とし穴があったという寸法だ。それはエスコバルの完ぺき主義にあったということだろう。
 一切妥協は許さない。それは愛人に対してもそうだ。唯一の弱みは家族だというのは、本当だろうが、ほかでの悪逆非道ぶりから考えるちょっと疑問。ウイキペディアで彼の生涯を見てゆくと、本作品は他のエスコバル物に比べると、より本物っぽいといえよう。実に興味深い作品だった。他の麻薬組織ものの源流のような作品であり、そういう分野に関心のある方は必見。
 ハビエル・バルデムの麻薬王は見事なものである。相変わらずの役達者ぶりを見せている。お腹の人工的なメイクは異様だが、エスコバルのトレイドマークだったのだろう。
 ペネロペ・クルスも驕慢なジャーナリスト役が堂に入っている、没落の様も意味が通じる。いくつになったのだろうか?相変わらず美しい。