20170618-01s
 東京フィルハーモニー交響楽団、第942回サントリー定期シリーズ
指揮:渡邊一正

ドヴォルザークプロ
  序曲「謝肉祭」
  交響曲第八番

九月の東フィル定期は大幅変更となった。バッティストーニがコロナで来日できず、プログラムもベートーヴェンやシューマンからドヴォルザークプロとなった。指揮者は前月もドヴォルザーク新世界を振った渡邊である。

 公演は2曲だけで休憩はなし。前回も同様だが演奏の前にソリストが出てきて何曲か演奏する。
 今夜はまずコンサートマスターの三浦氏によるソロでバッハのヴァイオリン無伴奏「パルティータ第三番からガヴォット」、2曲目は三浦に弦3人を加えて弦楽四重曲を、「ベートーヴェン弦楽四重奏曲第十三番から第五楽章」、特にベートーヴェンはこういう時期でのコンサートにふさわしいすこぶるしめやかなもの。ただ中間のヴァイオリンのため息のような部分はいささか外面的。まあ会場は開演前でざわざわしているときに無理か?

 謝肉祭は聴き映えのするオーケストラピースだが、今夜の私には騒々しい音楽としか聴こえなかった。

 前回に引き続いてのドヴォルザーク、今回は八番である。新世界以上に構成的にシンフォニックにできているとの評価の高い曲だ。渡邊は新世界同様感傷を抑えて、交響曲としての構造を明確にした演奏。このようにがっちりしたドヴォルザークは聴きごたえがあるものの、わがままな言い方だが物足りなさもある。
 例えば3楽章の中間部などはもう少ししなやかさ、あえて言えば心に響くような演奏が聴きたい。4楽章も決して急がず穏やかな演奏になっているが、これも終曲部分などはもう少し大見得を切っても良いのではないか。
 カラヤンのウイーンフィルとの古い録音のやりすぎかと思われるくらいの終わり方はいまでも聴くたびに唖然とするが、なかなか今の指揮者は恥ずかしいのかその様にはやってくれない。いまの指揮者はおそらくセルの演奏が一つのお手本かもしれない。でも久しぶりにこの名曲を楽しんだのは事実である。