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 よく、この本の表書きをみなかったのだが、これはどうも10歳から読める入門書のようだった。しかもキーになる音楽が
視聴できるQRコードつきで誠に便利な本である。小学生にも読めるように、ふりがなはていねいにつけてあって読みやすい。
一晩で読んでしまった。

 シューベルトと云う作曲家というのは、天は二物を与えずの典型的な芸術家ではないだろうか?

本書でも素晴らしい曲はつぎからつぎへと生み出されるが、お金や生活などについては全くの無頓着。実際のどうだったかはわからないが、普通だったらこういう人物は奇人として避けられるのだろうが、シューベルトの無邪気な性格は、多くの友やファンを集めたという。シューべルティアーデなどはそういうシューベルトのキャラがあってこそ生まれた集まりだったろうと思う。
 しかし出版もされず、公の演奏会でも演奏されない曲を、そういうあてのない曲をひたすら書きまくる、そういう姿は痛々しい思いでいっぱいになるが、シューベルト自身のそういう絶望感のようなものは彼の作品の一部に色濃く残っていると云えるだろう。例えば死の年に書かれたピアノソナタがあげられるだろう。死の年以外でも8つの即興曲や歌曲集「冬の旅」、弦楽5重奏曲、などもその例だろう。

 シューベルトと云うとリートや未完成交響曲がとくに有名だが、それ以外に素晴らしいのはピアノ曲であり、本書を通じてシューベルトの新しい世界が体験できればと思わせる、よくできた入門書である。