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 主人公は白石と云うもと家庭裁判所の調査官、ゆえあって、退職し今は妹の家に居候して、主婦業に徹している。
そこへ同期で茨城県警の捜査一課に勤める和井田が訪ねてくる。かつて白石が担当した薩摩治郎と云う青年がホテルで刺殺されたという。和井田は調査官時代の薩摩治郎についての情報収集に来たのだった。
 しかし事件は思わぬ方向へ流れてゆく。薩摩治郎の自宅を調べたところ、地下室に女性を監禁していたのだという。しかも彼女以外にもう一人いて、その女性はすでに亡くなっているというのである。すでに現役をひいている白石だが過去のつながりから、和井田に協力して、治郎の周囲について調べ始る。しかしこの事件は思わぬ様相を呈して、事件は混とんとしてくる。

 この作品はDVの連鎖、DVの連続である。次から次へといろいろなDVが登場して気持ちが悪くなるくらいだが、それが主題である。つまり、DVを受けたものがDVをする、DVの源流を暴いたものだといえよう。

 一気読みしてしまったが、今少し不満を言えば、主人公たち例えば白石や和井田、治郎の父親など多くの登場人物が今ひとつリアリティに欠けるように感じた。あえていえばステレオタイプか。地獄の底をのぞくような人間の心までは描き切れていないように思った。