ワイルド
 僕は「イエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」が面白かったので、続けて読んでみた。
ブレイディ・みか子氏の作品である。前作は自分の息子の周囲を描いたものだが、今回は自分の連れ合い(夫だろうが、そう呼んでいる)とその仲間たちを描いている。もちろんイギリスのブライトンが舞台である。
 著者はおっさんたちを描いていると述べている。1956年前後に生まれた人々だから、いずれも60歳代である。いわゆるベビーブーマー世代である。
 ブレイディ氏の語り口は相変わらずくだけているが、描いている内容は結構厳しい。イギリスと云えば福祉国家、「ゆりかごから墓場まで」というのが金看板だったと思うが、どうもサッチャーからブレアへ続く時代から変わってきたらしい。本書は21のエッセイ(1章)と付録(2章)からなっているが、そのなかで、多くのページがそれに割かれている。一番大きい例としては保健センター(NHS)で、医療は無償のシンボルだったが、緊縮財政によりそれが変化していると云うのである。そのことが保健センターの恩恵を受けている人々がブレグジットへ向かわせた一つの理由としている。

 エッセイに出てきている人々は労働階級の人々である。しかしこの労働階級と云うのが読んでいて、ちょっと曲者。エリートやミドルクラスと比較して、ちょっと社会の底辺のような描き方をしているが、その仲間意識や、生活行動、家族関係は結構まともな生活である。日本でいう労働階級とはちょっと違うような気がする。
この労働階級のブレグジットに対する考えも本書のいたるところで描かれていて、この問題の難しさを改めて感じさせる。

 日本の小泉政権の民営化から安部政権のアベノミクスも日本社会の構造に大きな影響をもたらしているが、イギリスでも同様の変化が起きている。階級と云う点でいえば労働階級のクラスターが崩れつつあるということではないだろうか。従来のイギリス社会では、親が労働者階級なら子供もそれを引き継ぐという。教育によりジャンプする人々もいるが、多くはそうだった。しかし今日、その労働階級の子供たちがそれを引き継げなくなっている。それも本書では一つのテーマとして描かれている。

 本書を読んでいると、いかに自分がイギリスについて無知であるかがよくわかった。、
 また、ブレイディ氏のいろいろな引用(歌など)について行けないことなどにより、表面をかじる程度にしか読めなかったのがちょっと残念。