2018年12月28日

今年もあとわずか、この一年に聴いた音楽を振り返ってみたい。

 今年年間スケジュールをとしあけに見たとき、あまり目玉はないなあとおもったが、80回ほどのコンサート、予想外に充実した音楽を聴くことができたというのが正直な気持ちである。まずベストコンサートを、10選んでみた。番号は一応順位付けであるが、目安程度でもある。

1.シューマン交響曲全曲演奏会 10/31,11/1(サントリーホール)
  指揮:ティーレマン、管弦楽:ドレスデン国立歌劇場管弦楽団

2.ボーイト「メフィストーフェレ」(演奏会形式) 11/16(サントリーホール)
  指揮:バッティストーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
  バッティストーニは神奈川県民ホールでのアイーダも優秀、また東フィルではミュンフン指揮で
  「フィデリオ」もあった。これも演奏だけ言うと新国立の「フィデリオ」と甲乙つけがたい素晴らしい  演奏だった。

3.ベートーベン交響曲全曲演奏会、6/2~3、5~7(サントリーホール)
  指揮:ウェルザー=メスト、管弦楽:クリーブランド交響楽団

4.ヴェルディ「椿姫」、9/12(東京文化会館)
  ローマ歌劇場公演
  「マノン・レスコー」も聴いたが演出の差で「椿姫」とした

5.バッハ「ヴァイオリン協奏曲第一番、第二番」、12/12(東京オペラシティ)
  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン、指揮:パーヴォ・ヤルヴィ、管弦楽:ドイツ・カンマーフィル

6.プッチーニ「三部作」9/7 (新国立劇場)
  二期会公演
  指揮:ベルトランド・ビリー、管弦楽:東京フィルハーモニー

7.モーツァルト「ドンジョバンニ」6/30(日生劇場)
  ニッセイ・モーツアルトシリーズ
  指揮:サバティーニ、管弦楽:東京シティフィル

8.ストラヴィンスキー「春の祭典」、6/12(東京オペラシティ)
  指揮:ロト 管弦楽:レ・シュクル

9.マーラー「交響曲第五番」、3/14(サントリーホール)
  指揮:スヴェーデン 管弦楽:ニューヨークフィル

10.マーラー「交響曲第三番」、4/10(サントリーホール)
  指揮:大野和士 管弦楽:都響

次点。新国立劇場のオペラ公演
   印象に残ったのはカルメン(11/25)、魔笛(10/8)、トスカ(7/8)
   フィデリオ(5/27)、アイーダ(4/8)
次点。ラフマニノフ「交響曲第二番」を含むジョナサン・ノットの公演
次点。ベートーベン「交響曲第四番」ブロムシュテット/N響

少し書き加えたい。ティーレマンのシューマンは迷わず今年のベストだ。ドイツ音楽の凄味を指揮者とオーケストラでこれだけ示した演奏はそうざらに聴けるものではない。
 2位のバッティストーニと3位のウェルザー=メストは比べるのもどうかとおしかりを受けそうだ。しかしこれらの演奏会から受けた感銘度から判断した。バッティストーニの、この滅多に演奏されないオペラを演奏会形式ながら東フィル定期に持ってくるという、卓抜な発想が素晴らしい。ライブで初めて聴いたこの「メフィストーフェレ」は、もっと国内のオペラ団体でも取り上げるべき名曲だということを改めて証明した名演である。

 ウェルザー=メストのベートーベンはすべて気に入ったわけではなく、私の物差しではばらつきが多かった。しかし2番、4番、7番などツボにはまった時、このベートーベンの演奏のきらめきは何物にも代えられまい。
 ローマ歌劇場の2演目は素晴らしい歌唱で魅了したが、総合的に「椿姫」を上位にした。オポライスのマノン、クンデのデ・グリューは素晴らしいが、マノン・レスコーの舞台・装置の貧弱さががっかりさせたのだ。ヒラリー・ハーンのバッハにこの順位をこの順位を与えることは迷ったのだが、あの時のバッハの愉悦に満ちた音楽が忘れられない。ヴァイオリンではパリ管と共演したファウストのベートーベンも良かったが、あまりにも研ぎ澄まされすぎていて、私には少しきつかった。

 二期会も健闘したがなかでも、プッチーニの「三部作は」歌手も、演出も立派なもので滅多に3つは一度に演奏されないだけにうれしかった。二期会はその他魔弾の射手などもあったが、演出に難があり、はずした。オペラでは日生劇場でのモーツァルトシリーズも健闘した。なかでも「ドン・ジョバンニ」はサバティーニの指揮、歌手、演出とも秀逸で大いに楽しんだ。そのほかコジや後宮からの逃走なども聴いたがいずれも演出が稚拙なのが難点。レ・シュクルとロトの「春の祭典」は初演時を再現するという試みが成功して、今まで聴いたことのない響きを聴くことができた。スヴェーデンのマーラーは大昔ショルティ/シカゴで聴いた、巨艦主義的な大マーラーで懐かしくて残した。ここで聴く響きは日本のオーケストラは絶対出せないだろう。なお別の日に聴いた「春の祭典」もギルバート/都響の演奏をぶっ飛ばす巨砲だった。
 日本の定期公演では大野/都響のマーラーが印象に残った、これはおそらく日本人でしか創造できない世界だろう。
 次点から新国立劇場の公演を挙げた。このなかでは「アイーダ」と「トスカ」の演出と舞台を評価した。読み替え流行の現在、伝統的なスタイルを守っている、この2曲の舞台は万人に愛される舞台ではなかろうか?11月に聴いたカルメンもそうである。
 ブロムシュテットのベートーベンには驚かされている。ここでの四番はかつてのブロムシュテットとはまるで別人のような演奏に聴こえる。90歳になっても成長を遂げる音楽家と云うのはなんと素晴らしいことだろう。ジョナサン・ノットも東響との定期でいくつかの名演を聴かせてくれた。私にはラフマニノフが印象に残ったが、ブルックナーの九番も良い。

今年も元気に良い音楽を沢山聴きました、来年はクルレンティスがきけるというお年玉があります。
みなさん、良い音楽を沢山聴きましょうね。