2017年9月22日
於:NHKホール(1階18列中央ブロック)

NHK交響楽団、第1865回定期公演
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:デニス・コジュヒン

グリンカ:幻想的ワルツ
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第四番

スクリャービン:交響曲第二番

オール・ロシアプログラム。すべて初めて聴く曲である。初めての曲は疲れる、どういう素性の曲なのか、どこが聴きどころなのか、好きになりそうな旋律があるのか、などと考えながら聴いてしまうからだろう。
今日は特に前半の2曲はCDももっておらず、まったく手探りだった。グリンカはあのひげ面のロシアの農民風の肖像画が思い出されて、きれいなワルツのこの曲とはどうも結びつかず、そんなことを考えていたら終わってしまった。9分くらいの曲だ。ヤルヴィが好きな曲だそうだ。
 ラフマニノフはどうしても有名な二番や三番と比べてしまう。この四番は初稿が1926年だがその後書き直され、今夜聴いたのは第3稿・最終稿で1941年版だそうだ。何度も書きなおすくらいだから本人もきにいらなかったのではなかったのだろうか?今夜初めて聴いてみて、有名な曲たちに比べると、華がないし、耳に残る旋律もない。ラフマニノフらしくない地味さである。二番、三番に比べると演奏回数が少ないのもわかるような気がする。ピアニストはロシアの人。昨日は韓国の17歳の少女の独楽鼠のようなくるくる回るピアノを聴いたが、今夜は熊のようなド迫力。二番か三番を聴いてみたかった。アンコールはスクリャービンの3つの小品(作品2)から練習曲一番。若いころのスクリャービンの耳に優しい美しい曲だ。演奏も思い入れたっぷり。

 最後はスクリャービンの交響曲二番である。スクリャービンはロシア音楽院でラフマニノフと机を並べたそうで、二人はその当時の天才ピアニストで1,2位を争ったそうだ。二人はその後全く違う道を歩んだが、今夜の交響曲はまだスクリャービンの後年の神秘性や難解さがなく、ラフマニノフと似通ったような音楽だ。実は本箱をあさったらなんとアシュケナージが指揮をしたスクリャービンの交響曲全集があった。今回の公演にあたって、3度ほど聴いてみたが、もうそれで充分。とにかく聴きやすく、耳に優しい旋律満載。特に1楽章のクラリネットの吹く主題や5楽章の脳天気な主題など一度聴いたらまず忘れないだろう。初演はあまり評価されなかったようだがなぜだろう。本人も後年この作品に見向きもしなかったそうだから物足りないところがあったのだろう。後年の神秘的な音楽とは別人のように違う音楽。晩年は狂気に襲われ、すさんだ生活をしたそうだが、同じ天才でもラフマニノフとはずいぶん違った人生を歩んだようだ。
 ヤルヴィの演奏はベートーベンやブラームスなどの音楽とはずいぶんと違ったおおらかなもの。甘い旋律を思い切り歌わせる。5楽章もスケールが大きく、音楽がすべてあけっぴろげだ。こういう曲だからだろう。3楽章、5楽章が聴きごたえがあった。N響の木管群の美音をたっぷりと聴かせてもらった演奏だった。演奏時間は44分
 今夜は雨のせいか、プログラムのせいかお客の入りが悪い。後方や前方両翼(1階)は空席が目立った。今夜のようなプログラムは意欲的というべきか、ヤルヴィの自己満足というべきか?ひがみ根性かもしれないがいつもCプロが割を食っているような気がする。