2017年4月21日
於:NHKホール(1階18列中央ブロック)

NHK交響楽団、第1859回定期公演Cプロ
指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:ベアTリーチェ・ラナ

ベートーベン:ピアノ協奏曲第一番
ブラームス:交響曲第四番

オーケストラの導入部の後ピアノが入ってくるが、実に素軽く、爽やかである。これはまるでフォルテ・ピアノのような気分にさせられるサウンドの様に思った。ベートーベン25歳の時の作品、第1番の協奏曲である。交響曲の1番や2番のようないかにもやってやるぞいうような曲ではなく、むしろまだモーツアルトなどの先輩の抜けがらを、少ししょった作品のようにいつも思って聴いていたが、今夜の演奏を聴いていると、誠にその様に感じられるのである。ただ2楽章、緩徐楽章は後年の3番、4番の緩徐楽章の様な、夢見るような楽想が現われ、このピアノとまじりあう音楽は何とも魅力的な雰囲気をたたえたものとなった。ルイージ/N響は端正で爽やかな響きでこの演奏全体を下支えした。ルイージの音楽作りはもう大家の雰囲気が感じられた。なおピアニストはイタリア人で音楽祭での優勝の実績もあるとのことである。演奏時間は約35分。1楽章のカデンツァがとても短かったのでちょっと驚いた。アンコールはバッハのパルティータ1番からジーグ。

 ブラームスはうって変わって構えの大きな演奏である。どちらかというと伝統的なスタイルと云えようか?大きな枠組みの中で音楽を細かく動かし、そして旋律をある時は思い切り歌わす、ロマンの香りいっぱいの、重厚なブラームスを志向したものと思われる。特に両端楽章はそういうスタイルが生きて、いかにも立派なブラームスを聴いたという印象だ。1楽章の導入はじつにゆったりと優しく入って来る、楚楚とした雰囲気であるが、しかし展開され再現されてゆくなかで音楽が次第に大きな流れになり膨れ上がって来る。終結部の壮大さは見事なもの。決してせかないのが良い。4楽章もじつに個性的である。ゆったりとした前半、そして展開から再現に音楽が進むうちに音楽が次第に燃え上がって来るのだ。しかし残念なことにこういう重厚なブラームスを志向したにもかかわらず、今一つ私には不完全燃焼だった。それは例えば1楽章の終結部の大伽藍がそびえたつような音楽が、そうは聴こえなくて、案外と響きが薄く感じられ、音がばらばらとは云わないが、収斂しないのである。巨大な音の構造物と云う趣が聴きとれないのだ。これは4楽章の再現から終結にかけても同様である。この構えの大きな音楽の中にも透明な響きを狙ったのか、それとも会場のせいなのかはよくわからないが、おそらくサントリーやミューザで聴いたら少し違った印象受けたのではないかと思った。サウンドと云う意味では2楽章や4楽章の木管が絡む部分の透明感、爽快感は狙い通りだったのかもしれない。2楽章の淡淡とした、感傷を少し抑えた演奏は特にサウンドにフィットしていた。
 演奏時間は43分。