2016年8月30日

「裁かれるのは善人のみ」ロシア映画
原題は旧約聖書にでてくる怪物「リヴァイアサン」、ロシア地方都市の政財聖の癒着を描いた恐るべき映画である。8/30朝日新聞の朝刊の記事「プーチン政権、地方のひずみ」をあわせて読むとこの映画で描かれた内容は荒唐無稽でないことが分かるだろう。
 ロシアの北部の漁港、プリプジヌイ市、小さな町である。そこは市長とギリシャ正教の司祭が牛耳っている町である。その町に古くから住んでいるコーリャ、妻は後妻である。市長の策謀で立ち退きを食らう。戦友の弁護士、ドミトリーの支援も受けて裁判で逆襲を図るが、市長側の反撃も厳しく、立ち退かざるをえない状況におちいってしまう。その後の展開は一言ではなかなか表わせない、人間ドラマであり社会ドラマである。
 この映画の面白さは地方都市の有り様をリアルに描いていることではないか?コーリャは絶望に陥り神に救いを求めているが、実はそこでも地方の権力との癒着があり、そこでは中央につながっていることも感じさせる政治構造を垣間見ることができる。見ていて何とも疲れる映画だった。

「1944、エストニア戦線」エストニア映画
珍しいエストニア製の映画である。エストニアとエストニア人の不幸な運命を描いた。
 1940年、エストニアはソヴィエトに占領され人々は徴兵されたり、収容所に送り込まれたりする。しかしナチスドイツが侵略してくると今度はドイツ軍として編入されてしまう。エストニア人はソヴィエト軍とドイツ軍とわかれて同志討ちになってしまうのだ。その中でドイツ軍のカールと赤軍のユーリに焦点を当てて、エストニアの不幸を浮き彫りにする。大国のはざまの小国の不幸が見ていて辛い。

「ブラック・スキャンダル」ジョニー・デップ、ジョエル・エジャートン、ベネディクト・カンヴァーバッチ他
「裁かれるのは善人のみ」はロシアの都市の癒着を描いているが、本作はアメリカのボストンの政官癒着が描かれている。1975年ボストン南地区、アイルランド系ギャングジミー・バルジャー(デップ)、FBIコノリー(エジャートン)そしてジミーの弟の上院議員のビリー(カンバーバッチ)は幼馴染である。ジミーはコノリーと協定を結びギャング仇のイタリアマフィアのアンジェロを倒すために情報提供を行う。そしてボストンを牛耳る大物ギャングにのし上がる。デップのメイクアップには恐れ入るが、3人の幼馴染役が私にはそれらしく見えないのが物足りないところ。特にカンバーバッチとエジャートンがそうだ。カンバーバッチがこの癒着にどうからむかもやもやしていて物足りない。
 ボストンのアイルランド系ギャングの物語といえば「ディパーテッド」を思い出す。血の濃さははどちらも感じるが、映画の出来は相当違うように思った。

「キジ殺し・特捜部Q」
デンマークのベストセラー小説の映画化。原作も読んでおり興味深く見た。映画化に際しては骨格には手を入れずほぼ忠実に再現している。俳優はウルレク以外は全くなじみのない人ばかり。キミー役、ローサ役はイメージに合わなかった。カール、アサド、ローザの特捜部Qのメンバーは20年前の殺人事件の再調査に取り組む。思いもよらない犯罪が背後にあることが暴かれる。回想シーンの挿入がうまくいっていて、面白いサスペンスに仕上がっている。

「砂上の法廷」キアヌ・リーブス主演
原題は「WHOLE TRUTH」、キアヌ・リーブスがアクション役ではなく、殺人事件の弁護士になっているのが面白いところ。弁護士のランダーは息子のマークに殺されてしまう。ラムゼイ(リーブス)弁護士はランダーの同僚でマークの弁護を引き受ける。しかしマークは完全な黙秘を貫くので、ラムゼイは弁護ができず検察にやられっぱなしになってしまう。果たして判決はどうか?誰の証言が正しいのか見ているほうも疑心暗鬼になってしまうストーリーが面白い。静かな抑えた音楽も利いている。