2016年3月16日
於:サントリーホール(1階17列中央ブロック)

東京交響楽団、第638回定期演奏会
指揮:ドミトリー・キタエンコ
ヴァイオリン:成田達輝

チャイコフスキー:エフゲニ・オネーギンからポロネーズ
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

今日はかけ持ちだ。オーチャードで山田のマーラーを聴いた後サントリーに向かう。マーラーの後オールロシアプロを聴くのはちょっとしんどいがなかなか面白い演奏で楽しめた。でも疲れた。

 チャイコフスキーの協奏曲はじつにねっとりとした思い入れたっぷりの演奏だった。これはキタエンコのリードなのか成田によるものなのかはわからない。ただ1楽章のカデンツァが今日の演奏の縮図の様であるのでおそらく成田の考えなのだろう。成田のヴァイオリンは自由奔放、そして実に美しく、豊かに響く。グアルネリ・デル・ジュス1738だそうである。1楽章はすでに述べたようにカデンツァが延々と続くようでちょっと辟易する。これは緩急をとても大きく付けているからだろう。情感がこもっているのは良いが、ここまで来ると私にはちょっと辛い。2楽章も美しいがこれも最初だけでだんだんついていけなくなる。しかし真骨頂は3楽章、自由奔放奔馬の様なヴァイオリンが素晴らしい。緩急が実に大きく、止まるくらい遅くなったと思ったらつぎの瞬間猛ダッシュで音楽が突き進む。終結に向けて速度をあげてゆくがオーケストラも見事に呼応して興奮を呼ぶ。演奏時間38分はかなり長い。アンコールはバッハの無伴奏ソナタ3番からラルゴ。

 ショスタコーヴィチはキタエンコの見事な統率がこの現代の名曲を十分楽しませてくれた。音楽に妙な緩急付けはほとんどない。わずかに4楽章の導入が重々しくちょっと恣意的に聴こえるが、その他はまるで巌のような厳格さで音楽が突き進むのである。印象に残ったのはやはりラルゴの部分だろう。ここでの音楽の透明度は本来的なものだろうけれどそれにしても非常な感動をよぶレベルまで引き上げられている。アレグレットは諧謔的な音楽の様だけれども今日はその様には聴こえず、純音楽的に、実に気持ち良く演奏されている。終楽章の盛り上がりも云うことがないくらいだ。ここでも冒頭ちょっと音楽が大げさになるが主部に入ると後は右顧左眄せず一直線に終結に向かう。実に男性的である。演奏時間は46分強。