2015年2月26日
於:サントリーホール(1階17列中央ブロック)

東京交響楽団、第627回定期演奏会
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:大谷康子
ピアノ:キット・アームストロング

ヴォーン・ウィリアムス:グリーンスリーヴスの主題による幻想曲
サラサーテ:スコットランドの歌(ヴァイオリン:大谷康子)
ブリテン:ピアノ協奏曲(ピアノ:キット・アームストロング)

エルガー:交響曲第一番

イギリスにゆかりの曲ばかりのプログラム。そのせいか会場はいささかさびしい。私たちはどうしても独墺系の音楽が好きだから仕方がないかもしれない。それにしても前半のプログラムの盛りだくさんなこと。もうこの年になると一晩で集中できる時間には限りがあって、こういろいろと並べられるとちょっと嫌気がさしてくる。大体わずか9分ばかりのサラサーテなどなぜ演奏する必要があるのかよくわからない。大谷も可哀想に9分のためにブルーのドレスまで着て演奏していた。ここは世界的に売れっ子になっているキットを集中して聴くべきではなかったかと思う。グリーンスリーヴスもとってつけたような印象である。夜店ではあるまいし、客寄せにこれだけ並べたのだろうか?そうだったとしても残念ながら結果はでなかったということである。

 キットは天才である。世の中にはこのような天才がいるのだ。パリ音楽院では音楽の学位を、パリ大学から数学の学位をすでに(22歳)受けているのである。そのうえ作曲まですると云う。ブリテンの曲はまだ若い時に書かれたもので、非常に華やかで、オーケストラもピアノもにぎやかな曲である。4楽章からなり各楽章にそれぞれ、トッカータ、ワルツ、アンプロンプチュ、マーチという名称がつけられている。楽章の中での音楽の変化は相当大きくて1と4楽章は前半と後半とはまるで違う印象。両端楽章はキットの花火の様なピアノを楽しむ部分である。ぽんぽんぽんぽん打ち上がる音に驚くばかり。しかし1楽章の後半のドビュッシー風のカデンツァの部分などは繊細な煌めきも聴けて楽しめた。アンコールはウィリアム・バードの「森は壊れている」。

 エルガーは疲れ果てた耳にも素晴らしさは十分伝わった。秋山の演奏は非常に端正なたたずまいが印象的。音楽のどの部分をとっても無理な部分がない。全てあるがままに自然に流れるのである。エルガーのこの曲にもそういう要素があるかもしれないが、そうはいっても1楽章の終結部分とか2楽章、4楽章の終結部分などはちょっと力こぶを入れて見ようと思っても当然というところであるが、そこでも音楽は野放図に拡散しないで、むしろ抑制的に聴こえる。従って、全体にこじんまりと聴こえて、そこに物足りなさは感じられるが、しかしこれはこれで立派な演奏だと思った。3楽章は美しさの極みだが、そこも思い切り歌わせることはしないで、あたかも青磁の焼き物のごとく、穏やかな輝きを聴かせてくれた。これはおそらく秋山でしか演奏できない独特のエルガーという印象だった。演奏時間は53分。