2014年12月22日
於:サントリーホール(1階20列中央ブロック)

読売日本交響楽団、第577回サントリーホール名曲シリーズ
指揮:レオポルド・ハーガー
ソプラノ:アガ・ミコライ
メゾ・ソプラノ:林 美智子
テノール:村上敏明
バス:妻屋秀和
合唱:新国立劇場合唱団

本年最後のコンサートが第九と云うのも何か出来過ぎているか!以前は12/31に東京文化会館の小ホールでベートーベンの中期~後期の弦楽四重奏曲を聴いて、年を越すのだが、流石に9曲を続けて聴くのは、このごろはちょっとしんどくなったので、止めている。3日くらいに分割して演奏していただけると良いのだけれど!
 さて、流石に第九の集客力は凄い。私の席から見渡すとP席にわずかに空席が目立ったが、満席に近い。
 1年ぶりにこの曲を聴いて、やはりこれは凄い曲だなあと改めて感じた。1楽章~2楽章の男性的な、闘争心一杯の音楽にはいつも圧倒されるし、3楽章の慰めの、癒しの音楽にほろりとさせられ、4楽章の迫力に熱くさせられる。これだけの曲はそうざらにない。こうなるとわかっていて、こうなってしまうのだから、大した曲だ。
 ハーガーの指揮は一見何の変哲もないような音楽作りのようだ。1楽章の提示部は実に自然だ。余計なことは何もしていない。展開部も同様だが展開部~再現部への移行部分が唯一あらぶる音楽となっている。展開部のフーガも整然としている。
 2楽章はモルト・ヴィヴァーチェの指示だがあまり速くない。ここはメトロノーム重視派になったかのような演奏だ。中間のトリオの部分は超快速だ。
 3楽章は伝統型のように、繊細で美しく、まさに天上の音楽の様だ。4楽章も実に安定している。導入の部分は腰が座っている。合唱が入ると幾分テンポが上がるが、妙な小細工は全くないから全て安心して聴けるのが何よりである。ソロは皆素晴らしいが、男声二人の歌唱は邦人としては最高の部類だろう。アガ・ミコライはもう少しやれそうにも思ったがここぞというところでの瞬発力が凄い。コーダもフルトヴェングラーのようにはならず、よく云えば堂々と終わる。ここはもう少しプレスティッシモを強調しても良かったのでは、と思った。演奏時間63分は速い方だ。

 全曲聴いた印象は伝統的なスタイルをベースとした折衷型の様に感じた。伝統型でもフルトヴェングラーではなく、カラヤン風である。ただ先日のカンブルランの指揮したラインや英雄のように何か名状しがたいものに突き上げられるようなシーンには残念ながら遭遇しなかった。しかしこの名曲コンサートのもつ、安定した、上質の音楽を提供するという役割は、十分果たしたのではなかろうか?