2014年4月19日
於:トリフォニーホール(1階20列左ブロック)

新日本フィルハーモニー交響楽団、第524回定期演奏会トリフォニーシリーズ
指揮:上岡敏之

シベリウス:交響曲第四番
ベートーベン:交響曲第六番「田園」

珍しい組み合わせのプログラムだ。両曲とも、肌触りが違うにしても自然を感じさせるという意味で共通点があるのだろう。

 シベリウスはライブでは初めて。いつもはCDで聴いているが起伏に乏しく、大体途中で眠ってしまう。しかし今日の演奏ではその様なことはなく、この曲は本来、起伏がおおきいということがよくわかる。この曲がこれだけ面白い曲だということにも驚かされる。おそらく上岡の音楽作りによるもの大であろうが、新日本フィルの演奏も素晴らしい。
 後半の2楽章が特に素晴らしいと思った。3楽章は良く聴いていないと全く単調な曲に聴こえるが、今日の演奏では決してそのようなことがない。弦を中心にした前半から、美しく、月並みないい方だが北欧の自然のひんやり感が伝わる。そして最後では、ぱーっと拡がるような開放感が素晴らしい。
 4楽章はそのムードを引っ張って、晴れやかな音楽が気持ちよく響く。さざ波の様な弦の刻む音も印象的である。まだまだこの曲を楽しむ段階にはないが、そのトバクチまで来ていることは、この演奏で感じられた。なおチューブ・ベルはオルガンの左前で演奏された。演奏時間は36分弱。

 田園は更に素晴らしい。これほど満ち足りた気持ちにさせてくれた田園を聴いたのは何年ぶりだろう。
 1楽章からして喜ばしい気分が充溢して、実に楽しい演奏だ。高弦はさらさらと美しく、低弦は音楽をしっかり支えた素晴らしいバランスだ。2楽章も美しいが少々モノトーンに聴こえた。もう少し色彩感があれば更に素晴らしいだろう。3楽章~4楽章、農民の踊りはスマートだが、木管群の響きが気持ちが良い。嵐も過度にオーケストラをあおらないのが良い。これでホルンがもう少し滑らかならいうことはない。
 でも最も素晴らしいのは5楽章だろう。ここでは音楽を演奏するのが喜ばしくて仕方がないという上岡の気持ちが洪水のようにあふれ出てくる。実に感動的である。この演奏を聴いて心が動かない人はいないだろう。ベートーベンの素晴らしさを改めて強く感じた演奏だった。それ以上書く術が私には思いつかない。演奏時間は39分弱。

 両曲とも新日本フィルの演奏は素晴らしい。シベリウスのひんやりとした寒色系の音の質感から、ベートーベンの緑の匂いがするような暖色系の音の質感まで感じさせてくれた。田園の3楽章の木管の掛け合いなどぞくぞくするくらい美しいが、5楽章の弦の美しさはホールの響きと相まって聴き惚れてしまう。昨夜のN響は席が9列目なので同列には云えないが、このようには響かなくてもう少しきりっとしていると思う。どちらが好きかと云えば新日本フィルの弦だが、まあこれは好みだろう。明日は東響によるマーラーだが、ジョナサン・ノットがどういう響きにするか、楽しみである。