2012年12月28日
於:東京文化会館(1階17列中央ブロック)
 
東京シティフィルハーモニック管弦楽団、第九特別演奏会
指揮:飯守泰次郎
ソプラノ:佐々木典子
メゾソプラノ:小山由美
テノール:望月哲也
バリトン:大沼 徹
合唱:東京シティ・フィル・コーア
 
ベートーベン:交響曲第九番「合唱付き」
 
男性的なベートーベンだ。スタイルは伝統型、演奏時間は68分強だった。今年飯守とはこれで3回目。どれも素晴らしい。二期会とのパルジファル、シティフィルとのブルックナー、そして今夜だ。
1楽章は実に印象的だ。第1主題の提示で度肝を抜かれたのは切り裂くような金管とまるで叩きつけるような、アクセントの付いた強烈なティンパニだ。更に凄いのは再現部でここでも金管がつんざくの寸前の叫びの様な趣でおもわずぞくっとしてしまう。しかし展開部は精妙でこの沈み込むような音楽はこの1楽章自身がもつ魅力だろう。精妙だが優美ではなく、少々武骨なところが飯守の真骨頂だろうか?
 2楽章のスケルツオも1楽章とほぼ同じ印象で、ここでも叩きつけるような、金管やティンパニが凄みをもつ。トリオの部分は決してチャーミングにはならず、ホルンやファゴットなどの木管が鄙びた雰囲気で独特の魅力だ。メトロノーム型だとこの楽章は遅くていらいらするが、飯守は11分40秒弱で駆け抜ける。1楽章は16分30秒だからこの1と2楽章の対比だけを見ると、典型的な伝統型のスタイルだと云うことが分かる。ちなみにフルトヴェングラーは18分対12分である(1951年、バイロイトライブ)。メトロノーム型だと1と2楽章の比がおよそ1:1になる。参考までにノリントンの旧盤では1と2楽章は14分対14分である。
 3楽章はとても美しいが、ここも優美さは皆無。武骨であるがとても魅力的だ。
 4楽章の素晴らしさは云うまでもないだろう。飯守の良いところは伝統型でありながら締まりがあるところだと思う。例えばvor Gottと合唱が歌うところはかなり引っ張ってはいるが、節度があるし、その後もむやみな休止で音楽が止まらず、テノールのソロFroh・・・に入ってゆく。この呼吸が素晴らしい。全体に時間をかけている割には冗長感が皆無なのはそのためではないだろうか?合唱は男声陣の人数が少ないせいか少々迫力に欠ける。ソロは皆素晴らしいが特にテノールの望月の伸びやかな声と、バリトンの大沼の落ち着いた歌いぶりは特筆ものだろう。東京シティフィルはもっと注目されても良い楽団だ。今夜も飯守の指示にくらいついて大熱演であった。今年最後の音楽会がこのような素晴らしい公演で大満足。
 外は氷雨で、電車は酔っぱらいばかりではあったが気にならなかった。
                                                         〆