2012年12月19日
於:サントリーホール(1階20列中央ブロック)
 
読売日本交響楽団、第555回サントリー名曲シリーズ
指揮:シルヴァン・カンブルラン
ソプラノ:木下美穂子
メゾ・ソプラノ:林美智子
テノール:小原啓楼
バリトン:与那城敬
合唱:新国立劇場合唱団
 
このコンビでベートーベンは2回目だ。最初は七番であった。今夜の九番も七番同様誠に印象的な演奏だった。
 全曲を速いテンポでぐいぐいと進め、右顧左眄せず突き進む、生気にあふれた、誠に生きの良い音楽は非常に魅力的だった。重々しさやもったいぶったところはいささかもない。演奏時間は63分速い方であり、全体の音楽の作りはメトロノーム派に近い。しかしただ単にメトロノームの指示通りに音楽が進むのではなく、そこには切ったら血の出るような、生命力を感じた。シャイーとはまた少し違うような気がするが、この音楽の作りは支持したい。
 印象に残ったのは、まず2楽章のスケルツォだ。この生気あふれた、前進力は圧倒的なインパクトだ。トリオ部分も素っ気ないくらい速いが生き生きとしている。3楽章は粘りっこさは皆無のさらっとした音楽だ。ここは好き嫌いがあるかもしれない。4楽章は妙な小細工はまったくない、ストレートな進め方が気に入った。もってまわったように、休止を伸ばしたりするような、やりかたによってはわざとらしさを感じさせるような部分は皆無だ。独唱陣も安定している、特にソプラノの情熱的な歌唱は感動を呼ぶ。1楽章はその音楽の勢いが素晴らしい。時折強調するティンパニの強打も印象的。七番の時もそうだったが、2楽章や4楽章でもティンパニは雄弁だった。読響の切れ味の良い演奏も素晴らしい、4楽章の終結部も十分プレスティッシモだが、まだまだ余裕がある弾きぶりが頼もしい。
 新国立の合唱陣は力強く全体を支えていた。
 フルトヴェングラーやティーレマンのような、重厚な伝統型の演奏も良いが、今夜のような若々しさすら感じさせるベートーベンに最近は嵌まっている。
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