2011年9月27日
於:サントリーホール(2階LCブロック)

東京都交響楽団第721回定期演奏会Bシリーズ
指揮:マーティン・ブラビンス
ピアノ:上原彩子

プロコフィエフ:歌劇「戦争と平和」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第二番
プロコフィエフ:交響曲第五番

指揮者はイギリス人のようだがオールロシアプロ。ムーシンに師事していた様で、そのせいでロシアものが得意なのかもしれない。
 交響曲が断然良かった。プロコフィエフは一番「古典」がとても親しみやすい交響曲だが、その後の2-4はまるで別人のような曲になってしまう。しかしこの五番は一転スケールが大きい上に、叙情性もあるとても親しみやすい曲になっている。この曲は1944年、ちょうど対独戦争に終止符を打ったときに初演されている。そのせいかこの曲は華やかで、明るい曲である。デュトワ/モントリオールでずっと楽しんできたが最近はゲルギエフの小気味良い演奏もいいなあと思っている。しかし今夜の演奏は今まで聴いてきたこの曲とはちょっと違って聴こえた。この曲の持つ外面的な親しみやすさの陰にあるものがぬーっと顔をだしたような演奏に聴こえた。
 1楽章はスケールの大きな、戦勝を喜ぶような華々しい曲だが、今夜の演奏はのっけからかなり重苦しく、開放感と言うより音の重圧を感じる、2楽章はコミカルなスケルツォだが、何かに追いかけられているような、焦燥感に駆られたような演奏に聴こえる。3楽章は美しいアダージョだが何かうっとうしい。そして4楽章は華々しいが、決して万々歳の明るさではなく、勝利の凱歌のなかにも何か鬱屈したものを感じてしまう。と言った具合でかなり面白い演奏だった。この印象、もしかしたら久しぶりにこの曲を聴いたのでゼロベースで音が耳に入ってきたからかもしれないし、ロシアの曲は表面だけで判断してはいけないということがわかってきたからかもしれない。正直言ってこのごろショスタコーヴィッチの五番も素直に耳に入ってこないのだ。まあ週末にでもCDを聴いてみよう。都響の演奏は全く破綻はなく素晴らしい。若干きらびやかな高弦も曲想にあって効果的。金管群もバランスを崩さないでしっかりと吹いていた。

 チャイコフスキーは有名な一番ではなく二番で、慣習的にカットされた部分を復元した原典版による演奏だった。45分近い大曲。正直言ってカット版でも良かったかなあという印象。まあ初めて聴いたから軽るがるしく判断してはいけないだろうが!
 印象的だったのは2楽章でヴァイオリンのソロで始まり、その後チェロのソロがそれに絡む、そして終わりころにピアノが絡むアンダンテ楽章。この部分はとても美しく、演奏も素晴らしいが、協奏曲なのにピアノの出番がほとんどないのはちと面妖。1楽章で疲れたからお休みと言うわけでもないだろうが?ブラームスのヴァイオリン協奏曲の2楽章よりももっとソロ楽器の出番が少ない。両端楽章はまるでサーカスのような名技的なピアノの演奏で、オーケストラもあいまって相当喧しい。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を更にロシア風にしたような感じだ。正直言って退屈だった。
 上原のピアノはとても硬質で、しかもダイナミズムがすごい。3楽章のコーダの部分などは手に汗握る追い込みで興奮してしまう。更に素晴らしいのは出番の少ない2楽章で最後に彼女のピアノが加わると、空気感が変わるように音楽の透明度が上がる。この部分はちょっとドキッとしてしまう。弱音の明晰さ、透明さは圧倒的だった。このような曲ではなく例えばブラームスの一番の協奏曲などを聴いてみたい。チャイコフスキーコンクールで1位になったからと言ってチャイコフスキーにこだわる必要はないと思うのだが!なおアンコールはなし。
 1曲目の序曲は5分くらいの短い曲で小手調べか!
                                            〆