2011年7月17日

最近見た映画その15

今回もすべてDVDレンタルだ。もう予告を見てもこれは見たいと思うのがない。独りよがりの映画や観客におもねる映画が多すぎるような気がする。今は我が家のコレクションを繰り返して見るほうが多くなってしまった。先日も「遠い橋」という戦争映画を見たがもうこういう正統派戦争映画は見ることはできまい。俳優も凄いが、イギリスの英雄、モントゴメリー元帥を正面から批判していて、なおかつ官僚制の弱みみたいな点もクローズアップ、娯楽性も盛りだくさん。今見ると少し古いかなと思うがそれでも最近の映画のような軟弱さは皆無。今夜は「シリアナ」という謀略物の傑作を見る予定だ。

まあごちゃごちゃいってもなんだから退屈しのぎに借りた何本かの作品に触れたい。

「アンストッパブル」、デンゼルワシントン主演
これは結構面白かった。鉄道員のミスで39両をひいた貨物列車が暴走してしまう。それを別の列車にのった機関士と車掌の勇敢な行動で脱線寸前に止めると言う感動もの。約100分、はらはらしっぱなしで面白かった。その中でアメリカの社会の現場のモラルの低下が印象に残った。仕事中の私語や携帯電話の使用などひどいもの。俳優では現場の運行係のフーバー役のロザリオ・ドーソンが威勢の良い管理職を演じていてなかなか小気味が良かった。

「ソーシャルネットワーク」、デビッド・フィンチャー監督
フェースブックの創始者マーク・サッカーバーグの物語。フェースブックというものが具体的にどういうものかが、ピンと来ていない者にとっては隔靴掻痒の感があるが、新時代の創造というものは、こういうものだと言う感触は良くわかる。全編機関銃のように言葉が飛び交って迫力のあるドラマとなった。

「チェーシング」、ラッセル・クロー主演
何だか良くわかない映画だった。原題は「TENDERNESS」、両親を殺害した少年、それを殺人鬼として追い回す(少年院受刑後も)刑事がラッセルクロー。義父に犯され、少年殺人鬼の犯罪を目撃してしまう少女。どういういきさつかわからないが、その少女が少年院を出た殺人鬼に接触する。トマス・ハリスの猟奇もの的な話にならないのがなんとももどかしい。それぞれの人物像が全く読めないので最後までいらいらする。結局何だったのと言った印象。これこそ時間の無駄でした。ラッセル・クローももっと作品を選んで欲しい。

「ネスト」ケヴィン・コスナー主演、
原題は「NEW DAUGHTER」、これもケヴィン・コスナーが何でこんな映画に出るのと言った印象。サウスカロライナの田舎町へ越してきたコスナー親子。コスナーは奥さんに逃げられた小説家。そして長女と息子の3人家族が新しい生活を始める。裏庭に大きな塚がありそれが鍵。そこは先住民の古い墓で、その霊を体現したものと少女が交流し新しい生命を宿す。そして霊たちの殺戮。ここらへんの霊たちの行動が不可解で最後までよくわからなかった。もう少し説明が欲しい。ラストは何ともやりきれない。

「完全なる報復」ジェイミー・フォックス主演
原題は「LAW ABIDING CITIZEN」、法に忠実な市民と言ったような意味だろう。いわゆる報復ものだが一ひねりあり途中までは面白い。妻子が惨殺され犯人は捕まるが、主犯が司法取引で軽い刑になる。ここらがアメリカの司法の仕組みがわからないので今一つしっくりこない。司法取引した検事補が出世の塊でジェイミー・フォックスが演じている。
 妻子を惨殺された父親は大金持ちで、しかも政府の仕事(暗殺ほう助)もやっている怪しげな男。彼が10年間練りに練ったプランを実行する過程はなかなか面白い。これが唯一の見もの。しかし一番最初に殺されなければならないフォックスが最後まで生き残るのは、物語としてはそうとはわかっていても何か割り切れないものがある。ご都合主義的な結末は食い足りない。

「白いリボン」ドイツ映画
これは評判が良かったので期待してみたのだが、ひとりよがりというか、思わせぶりと言うか何ともいらつく映画だった。一次大戦直前のドイツのある荘園、その村の大半が小作人というその時代の社会の描写が面白い。その村で事件が次々起きるが、犯人はわからない。その謎解きの部分はそれなりに面白いが、それよりもそれぞれの家庭の子供たちの異様な行動や立ち居振る舞いが目を惹く。この映画の根底に流れるのは抑圧された村人たちのさらに抑圧された子供達の制御が利かない行動。子供たちにとって許せないことに対してのレジスタンスが陰惨な行動に導く。まるでヒットラーユーゲントの走りみたいのようだ。ただ子供たちの残虐な行動が映像では全く出てこないので本当はどうなのか、年寄りには今一つついて行けないところ。そういう意味で言うと謎解きの視点はこのドラマでは二の次だ。そこをもう少しクローズアップしてくれるとうれしいのだが。

 「13人の刺客」、役所行司他
1986年のリメーク。役所をはじめなかなか時代劇向きの俳優がそろって、そこそこ見られる重厚な娯楽映画に仕上がっている。最後の肉弾戦はもう少し仕掛けの工夫をして敵の数を減らしてから入ったほうがリアルさが増したろう。海外の活劇でもこのピストル、何発弾丸が装填されているのと、言いたいくらいの射ち合いにお目にかかるが、まあそれのチャンバラ版と思えばよろしい。こういうゲーム感覚で人が死ぬのはテーマが「武士道」だけにちょっと厳しさに欠ける印象を受ける。明治維新まであと23年という時代設定は面白い。武士道は地に墜ち、ろくすっぽ刀も振り回すことができない武士。その中で忠義・武士道を守って主君を守る、一方その愚昧な君主を暗殺するさむらい達が激突するというのはもうすぐ明治維新と言う設定の中で時代錯誤とも感じるが、逆にそういう設定だからこそ忠義や武士道を金科玉条のごとく掲げる人々への皮肉な視点も感じる。作りによってはもっとリアルさを築けたろう。

「最後の赤穂浪士」役所行司、佐藤浩市主演
これも「武士道」がテーマだが、こっちはずっと渋い。内蔵助の命で16年もの間遺族をケアしてきた佐藤と、内蔵助の隠し子を素性を隠して育てた役所。その2人の貫く武士道を描いておりその忠実さはいらいらするくらいだが、この時代はそれが希薄になりかけたころでありそういう時代背景を認識したうえで見ると感動ものだろう。しかしこの武士道は結局自発的なものではなく上司に命ぜられたものだ。サラリーマン道にも通じるだろう。そういう点に共感した人々もおられるに違いない。

「バレッツ」ジャン・レノ主演のフランス映画
英語で22BULLETSとあったからこれが原題かと思いきや「IMMORAL」のフランス語が原題で悪徳と言った意味か。まあマフィア同志の抗争が背景だからそういう題も良かろう。
22発も弾丸を撃ち込まれた元マフィアの親分その犯人達を追いつめ殺してゆくという話。実話だそうだ。その親分がジャン・レノ、ただ22発撃たれて右手がマヒしている割にはえらく敏捷で嘘っぽいのが難点。実話ならもっと本当らしく作って欲しい。まあ仇討ちのプロセスが話の中心でそれはそれで面白いが、いとも簡単に殺されるのは変だし、警察の無能ぶりもいつものフランス映画らしくない。それにやたら友情や家族愛が出てくるので辟易する。題名らしくハードにやって欲しかった。ジャン・レノは「レオン」1作でもう他の作品はいらないように思う。
                                    〆