2010年11月27日
於:サントリーホール(17列中央ブロック)

第583回東京交響楽団定期演奏会
指揮:ユベール・スダーン
ピアノ:ダン・タイソン

ショパン:ピアノ協奏曲第二番
ブルックナー:交響曲第八番

今年いろいろな団体でブルックナーを聴いたが、今夜がベストだと思う。東響/スダーン渾身の気合いをこめた演奏だった。これほど直載かつ、みずみずしいブルックナーは初めてだ。演奏時間73分はシューリヒト(CD)に次いで速い演奏だが音楽が充満しており、楽器と楽器の間の空間が全くない、ためか忙しさは皆無。このテンポが正しいのだと納得させられてしまう。ノヴァーク版第2稿による演奏。
 全楽章素晴らしいが特に良かったのは2-4楽章。スケルツオがこれほど雄大に鳴ったのはあまり経験がない。目をつぶると巨大な山が眼前に聳え立つよう。しかしトリオになると、相変わらず速いが、切なさや懐かしさが一杯。
3楽章のアダージョは今日最高の演奏。特に第2主題の弦の素晴らしいこと。ホルン・ワグネルチューバによるコラールも感動的。そして再現部のクライマックスは異様なまでにスケールが大きい。サントリーホールが鳴動しそうだ。 最後の4楽章、冒頭の全オーケストラの前進力、ティンパニの炸裂、圧倒的だ。そして聴きものはなんと言っても再現部からコーダまでの音楽の大きさ。久しぶりに心臓の動悸が速くなるくらい興奮してしまった。
 今日の演奏はもちろんスダーンのドライブ力に負うところ大ではあるがそれ以上に東響の熱演は勲一等ものである。金管群が特に素晴らしく次いで弦、そしてティンパニも十分力感があった。終わった後の演奏者のほっとしたというか、達成感一杯の誇らかな顔は、演奏への集中度が高かったことを物語っていたのではあるまいか?危険を恐れずに言えば昨夜のロンドン響の音よりも充実して、なおかつドイツ/オーストリアの音が出ていたと思う。こういう演奏は滅多にお目にかかれないだろう。

それにしてもブルックナーの前のショパンはどういうことだ。スダーンの選曲であれば理由を聞きたいくらいだ。もう「喝」だ。ブルックナー1曲で十分だと思うが演奏時間が短いのでサービス精神でもう一曲というのであればモーツァルトという選択もあったのではないだろうか?来週都響/インバルでブルックナーの六番を演奏するが、これはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第三番とのカップリングだ。ショパンの協奏曲は良い曲だと思うがブルックナーの前に聴く曲ではないと私は思う。ダン・タイソンは初めて聴くが強靱かつ歯切れの良い音で、特に2楽章の切切とした風情は忘れられない。
 今夜もブルックナーの演奏が終わった瞬間ブラボーだ。指揮者が指揮棒を下におろすまでなぜ待てないのだろうか?このような素晴らしい演奏の余韻を楽しみたかったのに蛮声で興ざめだ。
                                〆