2010年2月20日
於:サントリーホール(17列中央ブロック)

指揮:大植栄次
ピアノ:フランチェスコ・ピエモンテーシ

シューマン:ピアノ協奏曲
リヒァルト・シュトラウス:アルプス交響曲

昨日の読響のマーラーに続いて、今日はシュトラウス。図らずも東西オーケストラのドイツ名曲の競演となった。この2日に限れば大フィルのほうが断然良いと思った。
最初のシューマン、彼が31歳の時に着手したそうだ。自分にとっては青春の音楽だ。20代に良く聴いたがこのごろは何か気恥ずかしいというかあまり素直にメロディに浸れない。しかし今日のシューマンはとてもよかったし久しぶりに恥ずかしながら(失礼)感動してしまった。最初、オーケストラ、そしてピアノ、そしてオーケストラとくるがこの部分があまり素晴らしいのでびっくりしてしまった。大フィルは以前、朝比奈の指揮で同じサントリーホールでシューベルトのグレイト交響曲を聴いたが、何かいやに鈍くさい音で眠くなったのを覚えている。しかし今日は、もちろん重厚な音は朝比奈の時代の伝統にしても弦が実に豊かな音でありながらきりりとしており、あたかも中音域の充実したタンノイスピーカーで鳴らしたような音で聴き惚れてしまった。
素晴らしかったのは2楽章。ここは何か艶めかしくてあまり好きな楽章ではないが、ゆったりとしたテンポでピアノに付けたオーケストラが実に美しくここも聴き惚れてしまった。
ピアノはオーケストラの音色に合わせてかさわやかなもの。2楽章は呼吸が合っていて特に良いと思った。1楽章のカデンツァもむやみに突っ走らず落ち着いていたのも良く、終楽章も大いに盛り上がり、もうこの一曲で帰っても良いくらい満足した。
アンコールはなんと3曲:最初はガーシュインのembraceable you、2曲目はストラヴィンスキーの火の鳥からフィナーレ、最後はモーツァルトのソナタk282の1楽章。火の鳥は実に爽快な演奏。

後半はアルプス交響曲である。これも感心してしまった。聴かせどころは言うまでもなく山の頂~景観である。大フィルのオーケストラの機能を十分発揮した演奏。第一にどんな大きな音を出しても高弦は常にさわやか、決して嫌な音を出さない。在京のオーケストラは残念ながら、この点で匹敵しているのは東響くらいだろう、あとは強奏になるとどうしてもキンキンしてしまう。第二に低弦が充実している。これは朝比奈のころの伝統だろう。そして立派なのは金管群、非常に安定しており安心して聴けた。特にホルンが良かったように思う。危険を恐れずに言うとドイツの音でドイツの音楽を聴いている感じだ。大植は長い間ドイツで活躍していたからドイツの音が体に染みついていて、このような音を出せるのかもしれない。演奏時間は愛聴盤であるティーレマン/ウイーンフィルとほぼ同じの51分、ティーレマンに負けない充実したアルプス交響曲だった。ちょっと褒めすぎかなあ。褒めついでに言うと「嵐の前の静けさ」や「余韻」のような静かな曲も非常に澄明な音であった。
珍しくアンコールがあり、同じくシュトラウスの最後の4つの歌から「モルゲン」だった。弦楽とホルン中心の曲だがなかなか考えたアンコールだった。でもいらない。
演奏が終わった後何か得意そうな顔をするのがちょっと「キザ」だったがまあ良い演奏だったから仕方ないか!
若手の指揮者では飯森範親とならんで今後注目したい指揮者である。4月の日本フィルの定期に登場してワーグナーとメンデルスゾーンを振るから楽しみだ。あの日本フィルからどういう音を引き出すのだろうか?
                               終わり