2009年11月24日
於:東京文化会館(11列左ブロック)

東京都交響楽団第689回定期演奏会

ブルックナー:交響曲第五番

指揮:エリアフ・インバル


ブルックナーの五番はかつては難解で遠ざけていた。この曲の良さが少しわかってきたのはギュンター・ヴァント/ベルリンフィルの演奏を聴いてから。特にアダージョの美しさはブルックナー随一だと思う。書棚をチェックしたら6枚のディスクが出てきた。

クナッパーツブッシュ/ウイーンフィル/56/改訂版
ヨッフム/コンセルトヘボウ/64
ヴァント/ベルリンフィル/96/(原典版)
ヴァント/北ドイツ放送/98/ハース版(DVD
ヴァント/ミュンヘン/95年/原典版
ティーレマン/ミュンヘン/04/原典版

学生のころはクナパーツブッシュばかり聴いていたが何かぶっきらぼうで特に一番好きな一楽章の展開部へのブリッジになるフルートの音が滅法速くてなじめずお蔵入りしていた。この曲にのめりこむのはヴァント/ベルリンの出現を待たねばならない。彼の北ドイツ放送響のライブDVDも深い感銘を与えてくれた。そして最近発売されたミュンヘンフィル``を指揮したCDはそれ以上の迫力がある。ヴァントは八番と同様演奏時間76分と長め。ただ長いと言えばティーレマン/ミュンヘンは81分ある。彼のライブはサントリーホールで聴いたが四楽章のすさまじい迫力と巨大さは今でも耳に残っている。

さて今夜の都響はどうか?昨夜のチェコフィルと比べると音色がかなり違うように感じた。チェコフィルの音がミネラルウオーターだとしたら都響は純水だろうか。弦はうるさくなる寸前でピュアーさを保ち、金管や木管も清潔さいっぱい。決してブルックナーサウンド(重厚な分厚い音のイメージ)とは言えまいがこれはこれで全然おかしくない。これにもう少し味がつくと良いのだが、ないものねだりでしょう。分厚さ、重厚さではやはりチェコフィルのほうが魅力があるように思う。

インバルの演奏時間は約73分で大体中庸のテンポである。三楽章のスケルッツオが若干遅く感じられたがその他は全く違和感のない安定したテンポだった。良かったのは二楽章,特に展開部に入ってからの後半頂点に達するまでの各楽器の素晴らしいこと。そして頂点の盛り上がりも巨大なもの。
また三楽章もトリオに入る前の頂点の素晴らしさ、こんなのは初めてだ。一楽章の展開部の入りのフルートも落ち着いたテンポで、自分のイメージ通り。終結部の盛り上がりもぞくぞくするくらい。
四楽章はいつも難解である。なかなか音楽の形が見えなくて、あれよあれよというまに終結部にきて、いろいろな主題がでてきて、最後大きな波に収斂して、圧倒されてノックアウト。この四楽章はまだまだ聴きこみが足りないと反省した。

各楽器とも前記の通りの印象だがティンパニもなかなか小気味よく熱演。ただまだ物足りない。切れ味はよいのだがずしりとくるものが今一つ足りないように思われた。この切れ味を保ちつつ重量感がでれば本当に素晴らしいと思う。
                          
                              終わり