2009年9月25日
ウイーンフィルハーモニー管弦楽団日本公演
於:サントリーホール(二階LBブロック)

一昨年はアーノンクールの指揮、昨年はウイーン国立歌劇場としてムーティの指揮、そして今年はズービン・メータの指揮でほぼ毎年ウイーンの音を楽しんでいる。日本でこういうことができるのは本当に幸せなことだと思う。

 今夜の公演は実にサービス精神旺盛のプログラムでアンコールを含め終演時間はなんと9時50分でした。オーケストラの公演でこんなに長いのは初めての経験だった。少々くたびれたが満足した夜でした。

プログラム
ハイドン:交響曲104番「ロンドン」
ショパン:ピアノ協奏曲第一番
(アンコール:ショパン、練習曲作品25-1エオリアンハープ)
リヒャルト・シュトラウス:英雄の生涯
(アンコール1:ヨハンシュトラウス、アンネンポルカ
 アンコール2:ヨハンシュトラウス、ポルカ 雷鳴と電光)

指揮:ズービン・メータ
ピアノ:ランラン

まぁ、こんな具合です。日本の定期では考えられないです。ハイドンかショパンのどちらかといったところでしょう。今夜の席は初めての二階でしかも左ブロックということでどういう音になるか期待半分、不安半分でした。一階に比べると直接音が少ないせいか各楽器が少し細くというか繊細というかいつもと違って聞こえました。特に低音楽器が何か抜けが悪く、悪く言えばモゴモゴといった感じ。音楽がはじまればあまり気にならなくなりましたが!

さて、ハイドンです。演奏時間28分で我が家のクイケンより1分遅く、ヨッフムより1分速い演奏でした。一楽章が長めで四楽章がフルスピードといった印象。一楽章の序奏でパーンとティンパニーが響いたあとしばらくして緩やかな部分がくるがここの弦の美しいこと。そして二楽章のアンダンテも持ち味十分の美しい演奏でした。最終楽章はクイケンやヨッフムより速い演奏でしたがせかせかした感じはなく非常に盛り上がった。おそらく今夜の曲の中で私の印象ではこのハイドンが最上のものと感じた。
 余談ではあるがハイドンは今春ブリュッヘンが新日本フィルを振ってハイドンセットを全曲演奏したがこの印象がものすごく強い。ノンビブラートのため音はきりりとしティンパニも小気味よく全体に締まった音楽でこういうハイドンもいいなあと思った次第。しかし今夜の様なゆったりとした流麗なハイドンも好きだ。

次はランランの独奏による、ショパン。どうも今夜のお目当てはランランで終わった後の拍手は凄まじいものだった。しかし演奏はかなり速くてどうも落ち着かない。我が家のツィンマーマンに比べるとなんと二分も速い。緩やかな部分は思いいれたっぷりでゆっくり演奏し聴かせるが速い部分で
は猛スピードでこれほどまでに速くひかなくても良いのではないかと思うほどだった。今夜の席は二階の左だったのでピアノの鍵盤がよく見え、特に右手は真下に見えくるくる独楽鼠のように動くのでそれを見ているうちに終わったという印象。まあもともとショパンのこの曲はつまらない(失礼)曲なんでこんなものかと思えばそれまでだが!
でも、アンコールで弾いた練習曲はとてもよかった。少しテンポを動かしながら演奏していたように感じたが実に心を動かされるショパンだった。わずか数分の曲だが胸が熱くなってしまった。こういうのを聴くとランラン只者ではないと思った。

最後はリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」。シュトラウスの交響詩は聴き映えがするので若いころは夢中で聴いた。この英雄の生涯はその中でも愛聴した曲で、昔はLPだったので片面では録音しきれず英雄の戦場のところでB面にひっくり返すわけだがCDで聴いていてもその場面になるとひっくり返さなくては思ってしまうほどよく聴いた。しかし同じ英雄という標題のベートーベンの英雄交響曲との決定的な違いは、ベートーベンでは苦悩や戦いを乗り越えた勝利や新たな創造を第四楽章で表現しているのに対してシュトラウスは結局自分の自慢話かと思わされてしまうところにあるように思われてこの頃はあまり聴かなくなった。
 今夜の演奏、メータの指揮は奇をてらわない立派な演奏。特に英雄の妻の場面はウイーンフィルの美しい弦との相乗でとてもよかった。英雄の戦場の場面もド迫力で、サントリーホールの天井が抜けそうな音楽だったが私は自分の年齢のせいか最後の英雄の引退の音楽は共感を持って聴けた。

アンコールの「アンネンポルカ」と「雷鳴と電光」はご当地ソングみたいなものだから悪いはずはなく大喝さいを浴びていた。ウイーンフィルズービン・メータのサービス精神とスタミナに脱帽の夜だった。

一つ付け加えると海外からの演奏家の公演というと大体高額のパンフレットがつきものであるが今夜は非常にシンプルなものでしかも無料ということで主催者のセンスが感じられた。高額のチケットを購入した上にパンフレットまでが高額では誠に馬鹿にした話だとかねがね思っていたけれども是非これを他の団体でも踏襲してもらいたい。
                               以上