2009年6月19日
日本フィルハーモニー第611回定期演奏会
於;サントリーホール(20列右ブロック)

プログラム
チャイコフスキー;組曲四番「モーツァルティアーナ」
モーツァルト;ヴァイオリン協奏曲第三番
プロコフィエフ;交響曲第二番

演奏
ヴァイオリン;ニコラ・ベネデッティ
指揮;アレクサンドル・ラザレフ

チャイコフスキーの組曲四番は珍しい曲ではないだろうか?でもなかなか面白い曲である。チャイコフスキーは猛烈なモーツァルトの信奉者だったらしい。モーツァルトの小曲をベースにしてチャイコフスキーが手を入れたもの。4つの曲からなっている。二十数分の曲だが半分は第四曲が占めている。良かったのは3曲目、モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスをリストがピアノ編曲したものを更にチャイコフスキーが手を入れたものだからややこしいが、音楽はなかなか素敵だし、日本フィルも好演。何より良いのは高弦が今夜は美しい。そして低弦が音楽をしっかり支えているので音楽に安定感がある。4曲目もなかなか面白い。ヴァイオリンやクラリネットの独奏とオーケストラの絡みが楽しい。

ラザレフは初めてだがなかなかのもの。指揮棒なしで指揮をする。

2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲三番、ニコラ・ベネデッティは若い女性ヴァイオリニスト。名前からするとイタリア人かも。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は5曲あるが彼がまだ19歳の時に書かれておりそれ以降このジャンルのものはない。ピアノ協奏曲は27曲もあるのだが。だからピアノ協奏曲のように年代別の成長は味わえない。フレッシュな音楽に浸るしかないのである。この曲集はムターが弾き振りしたものと、カルミニョーラとアバドの組み合わせと2セット持っている。カルミニョーラが出てからはそれを主に聴いている。この演奏はとにかく鮮烈である。ヴァイオリンもそうだがアバドの指揮もすごいと思う。ギャラントな趣を期待するとのけぞってしまう。おすすめです。

さてベネデッティはどうか?最初オーケストラから入り、しばらくオーケストラが続いたあと、ヴァイオリンが入ってくるが、彼女の音がでたとたんストラディヴァリウス(アール・スペンサーという名称がつけられている)の美音に酔いしれる。四の五の言わないでこの音楽に浸ればよろしい。そして二楽章もますます冴えわたるが、人間て天の邪鬼ですね。こういう音楽が続くと何か物足りなくなってしまうんです。もう少し何か「smomthing new」を期待したい。オーケストラもうまくつけていて非常に安定している。いつものような腰高の音楽にならずに身を任せていられる。今夜もアンコールをやった。イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ第五番の緩徐楽章、初めてだがすさまじい技術が要求されていると思われる。特に後半はすごかった。こういう曲のほうが彼女には良いかもしれない。プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲などは彼女にぴったりではないかと思われた。とにかくストラディヴァリを聴けたのはよかったなあ。

最後はプロコフィエフの交響曲第二番、しかし一番のあとなぜこのような曲になるのだろうか?一番は古典交響曲といわれる非常に斬新かつなじみやすい名曲なのにこの二番は正直無機的な音が続き辟易させられる。セルゲイ・ゲルギエフの指揮したロンドンシンフォニーのCDを聴いているがなかなか親しめない曲だ。プロコフィエフの交響曲は1,5,7が親しみがあるが2-4までは彼らしさが感じられない。彼の良さはやはりメロディーだと思う。たとえば「ロメオとジュリエット」などは全編美しいメロディで彩られ、本当に素晴らしい。今夜の二番もところどころそういう場面もでてくるが、一部を除いて工場のなかのオートメーション装置ががなりたてているような、マシンライクな音が続く。まるでターミネーターかロボコップの行進のようだ。

しかし二楽章はちょっと面白い。最初印象的なメロディーが流れ、その後しばらくアラビアのロレンスがラクダに乗って砂漠を行進しているような、ゆらゆらした音楽が続く。その後はまた元に戻り無機的な音が続く。初演はさんざんだったらしい。

ラザレフ/日本フィルの演奏はどうだったか?ゲルギエフより若干遅め、良かったのは高弦が総奏になってもキンキンせず透明感を保ったこと、それと低弦がいつものように軽くなく、しっかり音楽を支えたことでそれにより、音楽が安定して聞こえたことである。こういう演奏を毎回期待したい。

ラザレフはよいしょがうまいのか終わってからさかんにオーケストラをたてていたのはあけっぴろげのロシア人らしい。

そして最近ではめずらしくアンコールを演奏、「三つのオレンジの恋」から行進曲でした。ロメオとジュリエットの騎士の踊りでもやってくれたらよかったのに!
以上