2009年5月28日
読売日本交響楽団定期演奏会
於:サントリーホール(14列中央ブロック)

プログラム
シベリウス
 トゥオネラの白鳥
 レンミンカイネンの帰郷
プロコフィエフ
 バイオリン協奏曲 第二番
ラフマニノフ
 交響組曲

指揮:オラリー・エルツ
バイオリン;バーナバス・ケレメン

天気が悪く客の入りも悪い。85%程度の入り。プログラムも地味だからか?でも良く見ると考えられたプログラムだとわかる。シベリウスは指揮者が優勝したコンクールがシベリウス国際コンクールだから選んだと思うし、後の二曲はいずれもロシアの作曲家の作品。しかも二人はいずれもロシア革命後アメリカに移住している。プロコフィエフは後に帰国したが。更に帰国しなかったラフマニノフの最後の作品がこの「交響組曲」なのだからなかなかひねりがある。

シベリウスだがさすがにトゥオネラの白鳥は美しい。イングリッシュホルン、チェロの独奏も聴かせた。レンミンカイネンはあまりいい曲とは思わないが最強奏でも音が混濁しないのが凄い。指揮者の腕か、曲が良いのかわからないが!音が透明なのである。読響でこういう音はあまり聴いたことがないように思った。

プロコフィエフは初めて聴く曲。良かったのは第二楽章。まるで夢のようなアンダンテ。ワルツのリズムで奏でられる主題が美しい。あたかも彼の「ロメオとジュリエット」の一部を聴いているようだ。ケレメンのバイオリンは派手さはなく落ち着いた美音。楽器はグァルネリだそうな。これがグァルネリの音か。中間部はちょっとざわざわしたようなアレグレットで最後にまた最初の主題が戻ってくる。永遠に聴いていたい音。アンコールはケレメンの母国の大作曲家バルトークの無伴奏バイオリンソナタのプレスト。超絶技巧曲らしく聴衆は大喝さい。

最後のラフマニノフの「交響組曲」も初めて聴く曲。聴きものは三楽章。怒りの日のモチーフが随所に現れる。特に後半のド迫力は筆舌尽くしがたい。しかしサントリーホールが鳴動するような音ではなく透明感があるので音楽がきれいに分離して耳に入ってくる、不思議な音響を経験した。シベリウスと同様。これが指揮者の持ち味かもしれない。他の曲も聴いてみたくなる指揮者である。バトンはもたずに手をひらひらさせて指揮をする。スダーンもバトンをもたないが彼の場合はもっとかちっとした振り方をする。エルツはなにか融通無碍といった趣がある。そこらへんが音にも表れているのだろうか。世の中まだまだ立派な音楽家がたくさんいるんだなあと改めて教えられた夜でした。
                               〆