3月16日
読売日本交響楽団第480回定期演奏会
サントリーホール(14列中央ブロック)

曲目:ベートーベン「荘厳ミサ曲」
指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー
ソプラノ:インドラ・トーマス
アルト:シャルロット・ヘルカント
テノール:ロイ・コーネリアス・スミス
バス:ジェームズ・ラザフォード
新国立劇場合唱団

 読響定期今シーズン最後の演奏会。期待にたがわず満足ゆくものだった。
キリエの最初の音からベートーベンを聞いているなあという気にさせる。出だしはゆったりとして実に座りが良い。オーケストラと合唱に身を浸している感覚。これは自宅のオーディオ装置ではなかなか難しいのである。
 グロリアに入りテンポは急変かなり早いがすごい迫力。しかし「われらは主に感謝したてまつる」に入るとゆっくりに戻る。つまり緩急が実に鮮やかなのだ。そしてグロリアのフーガがまた強烈、ティンパニの強打、割れるような金管、迫力満点であった。
 クレドも出だしはかなり早いジンマンなみか?しかし盛り上がりがすごい。「聖霊によって宿り・・・」の中間部はゆったりとしたテンポでじっくりと聞かせる。そしてクレドのフーガがまた強烈。気が付いたら指揮者のバトンがなくなっていた。サンクトゥスの前に団員が指揮者に何やら渡していたがおそらく指揮棒だろう。あまりの熱演に吹っ飛んだのかもしれない。
 サンクトゥスから後半に入るがここはオザナを除けば静かで実に美しい。そしてあのベネディクトゥスのヴァイオリンも聞かせる。
 アニュスデイも静かに始まるが中間部の戦争を思わせる場面ではまたオーケストラが荒れ狂う。そして「われらに安らぎを与えたまえ」と静かに、荘厳に締めくくる。
 かなりテンポが速いと思いきや1時間20分弱かかっている。やはり静かな部分では思い切りテンポを落としたのだろう。たとえばジンマンの演奏はなんと65分である。これはちょっとせわしい。

 スクロヴァチェフスキーは今年86歳だそうだ。年を感じさせない立派なベートーベンだったと思う。まだまだ頑張ってほしい。来年はブルックナーの8番で締めくくるそうだ。いまから楽しみである。

 今日のコンサートの演奏者の配列であるが合唱がオルガンの前の観客席に陣取り、オーケストラと合唱の間に独唱陣が位置した。独唱はしたがってオーケストラの音を貫いて観客に声をとどかせなくてはならないので二人の女性はちょっと可哀想だった。男性陣は立派な声で良く響いていた。テノールは特に自分の好きな声で気持ちよかった。女性陣もベネディクトゥスやアニュスデイでは美しいアンサンブルで良かった。

 新国立の合唱団には万雷の拍手が贈られていたが立派な演奏で感激した。そしてオーケストラ、今年の読響定期の中で今日は最高の演奏会であったと思う。満足な気持で帰路についたのであった。
                                         〆