2020年5月23日


大体毎朝1時間ほど歩くが、今朝はどういうわけかマスクをしている人が少ない、まさか気が緩んだのではあるまいと思うが、今少しの辛抱。


 さて、先日バロック音楽というか、なにか騒々しくなく、ひたすら音に浸るような音楽を聴きたいと思って、ラモーのクラブサン曲集を聴いた。

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セリーヌ・フリッシュと云う人が2007年にベルギーのフラン=ヴァレ教会でその当時の楽器を弾いて録音したものである。ラモーは長生きした人でこのCDには1706年、1724年、1728年に作曲された組曲が収録されている。ベルサイユの宮廷の華やかさと哀愁と云ったものが感じられる曲集である。まあこれは部屋の中が教会になるほど録音も良いのでオーディオマニアのひとにも推薦盤である。

 さて、ラモーのこの年代と云えばドイツではバッハであり久しぶりにバッハが聴きたくなってしまった。バッハと云う人は私にとっては最も遠い作曲家で滅多に聴かないが、CDは40‐50枚近くあるという不思議な存在である。リヒターの受難曲などみな持っているが、一度も聴かない曲もあるという大変失礼な人間であると思っている。
 そんな私でもブランデンブルグ協奏曲は聴く。この曲は1721年に作曲されたらしいが、なんとラモーのクラブサン曲集第二巻が書かれたころであり、いよいよ聴く気になってしまった。
 さて、ではどの盤を聴くか?我が家には4種類もある。昔はリヒター盤ばかり聴いていた。さて、リヒターの襟を正すような演奏を、あのラモーの後には聴きたくないと思い、取りいだしたるは、アバド盤である。ヴァイオリンはカルミニョーラ、管弦楽はオーケストラ・モーツァルトというアバドの手兵である。

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聴いたのは偶数番号の曲である。素晴らしいのは四番だろう。ソロのヴァイオリンとリコーダー、フルートが華やかで如何にも聴き映えがする演奏で、バッハのあの肖像画からは想像もできない浮き浮きした気分になるのだ。それはカルミニョーラの存在が大きいと思う。しかし彼だけピリオド楽器なのだから、混ざると変なことになりやしないかと云う心配は当然あるだろうが、この演奏では若い木管奏者たちと全く齟齬がないアンサンブル。アバドの統率もきっと大きいのだろう。とにかくバッハを聴いて楽しくなりたければこのCDが第一であろう。

 さて、ヴァイオリンと云えばバッハのヴァイオリン協奏曲も好きな曲だということを急に思い出し、聴きたくなった。この曲はもうずっとシェリングの演奏を聴いてきた。彼の演奏もどちらかというと至極真面目な演奏だ。

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しかし、今日の気分ではヒラリー・ハーンだろう。とにかく彼女の演奏は聴いているとバッハを忘れる。速いテンポですかっとするような演奏だ。

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このCDはエソテリックが初期のころに発売したSACD盤である。スピーカーの中央にまるでハーンがすっくと立って演奏しているように聴こえる。まるで弾き振りのようだが指揮者はついているが、それを忘れるようなハーンの2002-3の録音である。

 さて、今バッハと云うと必ず引っ張り出してくるCDがある。それはハープシコード協奏曲集である。演奏はRETROSPECTアンサンブルと云う古楽の団体である。演奏者はわずか7-8人である。この曲集の面白いのは1曲目と2曲目である。1曲目はなんとブランデンブルグ協奏曲の四番の焼き直しである。ハープシコードとリコーダーの組み合わせである。2曲目はヴァイオリン協奏曲一番焼き直しである。これをハープシコードでこの団体で聴くと、なんともひなびた味わいで、アバドやハーンで聴くバッハとはまるで違う。しかしリヒターやシェリングの、云っては悪いがくそまじめな演奏とも違う。そりゃそうだ、ピリオド楽器で超小編成なのだから、サウンドが違うので、聴いていて異空間にいるように思えるのである。これはおすすめのCDである。
 オーディオメーカーのLINNからでているだけに、音は素晴らしい。たしか昨年、タワーレコードでLINNレコードのバーゲンをやっていたのを見つけて5枚ほど買い求めたうちの1枚である。
 こうしてとっかえひっかえていると時間を忘れる。音楽は素晴らしい。そして今日のバッハは素晴らしい。