2020年3月27日
ガーンジー島160

タイトルの「ガーンジー島の読書会の秘密」から連想するのは、こりゃオカルトものかとおもいつつ見始めた。
 しかしこれはそういう怪しげなものではなく、至極まっとうなヒューマン劇であり、ラブストーリーである。コロナウイルス禍で人と人との接触を断たざるを得ない私たち。それはこのドラマの1941年のナチスドイツ占領下の外出禁止令を彷彿とさせる。しかしこの島の何人かの人々はそういう環境の中でもあたたかな人間と人間とのコミュニケーションを維持してきた。これはそういう人々への畏敬とあこがれを持った女流作家の物語である。

 戦後1946年、ジュリエット・アシュトンは戦時中に書いた何冊かの本でベストセラー作家となる。
彼女の周りには人が群がり、賛辞の嵐、マーク・レイノルズという米軍の高級将校の恋人まででき毎日享楽の日々。
 しかしある日、見たことも聴いた事のないガーンジー島のアダムスという男性から手紙をもらう。ある随筆を彼が島の本屋で見つけたのだがそれにはアシュトンの蔵書のしるしがあったのだ。それから二人は文通をはじめ、アシュトンはガーンジー島の読書会なるものを知る。次の作品の題材に悩んでいた彼女は予告なしでその島を訪れ、読書会のメンバーとあって話を聞いた。しかし4人のメンバーは口を閉ざし、取材はおろか掲載も断ったのである。しかもこの会のリーダーだったエリザベスがいないのだ。
 アシュトンは丹念にこの島のナチス占領下で何が起きたのか、そしてこの読書会はどういうものだったのか、調べてゆく。二日の滞在予定が伸びに伸びてしまったが、アシュトンは真相を突き止める。それは驚愕のストーリーだった。まああとはご覧ください。損はしません。
 ここでは人間の生き方をエリザベスがアシュトンに教えると云ことになっているが、それだけではないいかなる非常事態において、最も大事なのは人と人との交わりであり、愛情だということはこの映画の観客全員に教えてくれる。
 
 ガーンジー島は初めて聞く名前だったが、ちゃんと地図に載っている。イギリス海峡のチャンネル諸島の中の島である。おそらく漁業・牧畜が中心の島なのだろう。イギリスよりもノルマンディーに近い。

 役者はみなうまい。アシュトン役のリリー・ジェームズ、アダムス役のミキール・ハウスマンが秀逸だが、脇では読書会のメンバー、こころの美しさだけが取り柄だといつも卑下している密造酒を作っているアイソラ役のキャサリン・パーキンソンが実に魅力的だ。助演女優賞を上げたい。
 なお、同じ読者会のメンバーの長老の郵便局長にトム・コートネイが出ていた。なつかしい。その他の脇も締まっていて、近来まれにみる佳作。

 なお、原題は「GUERSY LITERACY and   POTATO PEEL PIE SOCIETY」。ポテトピールパイなるものは食べたことがないが、映画の中でご覧ください。