2019年10月18日
於:NHKホール(1階18列中央ブロック)

eukyou10

NHK交響楽団、第1922回定期演奏会
指揮:トゥガン・ソフィエフ
ピアノ(ラフマニノフ):ニコラ・アンゲリッシュ

バラキレフ:東洋風幻想曲「バラキレフ」
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

チャイコフスキー:交響曲第四番

このところ、良いオーケストラのサウンドを楽しんでいる。例えばベルリンドイツ/ティチアーティや都響/小泉の演奏である。これらはホールはそれぞれ違うが基本は一緒である。つまりオーケストラの基礎である弦楽部がどっしりとかまえ、真ん中の木管がその中間にぽっかりと浮かぶ、そして頂点には金管群。いわゆるピラミッド型の音場である。私にとってはオーディオでもライブでもオーケストラを聴くときはまずこの音場がしっかりできているかが最大の関心事なのである。

 今夜のN響は残念ながらそうは行かなかった。特にチャイコフスキーは金管の威力が強すぎて、音場は逆ピラミッドに聴こえるのである。もう1楽章の冒頭からしていけないのである。したがって両端楽章は私にとってはとても苦痛な演奏。金管だけが盛大に鳴り、弦は消え去っている。
 しかし2,3楽章はトゥッティの部分が少なく、小編成のオーケストラを聴く趣で、各パートが非常に明快に聴こえ、これはとても素敵な音楽に聴こえた。

 私が疑問なのは、ソヒエフは自分の出す音を例えばリハーサルで聴いているのだろうかと云うことである。聴いたうえで今夜の音を出しているのなら、これはソフィエフの嗜好なのだからうんぬんかんぬん云っても仕方がない。もうソフィエフは聴かないだけだ。しかし聴いていないのなら一度是非一階席で自分のサウンドを聴いて欲しい。
 N響のNHKホールで聴いてきてもう何年にもなる。音響については私も書いてきたし、だれもが悪口を言う。しかしそういうなかでいろいろ工夫して実に素晴らしい演奏を聴かせる公演もあるのだ。
 私が聴いた中で最高なのはクリストフ・エッシェンバッハの演奏したブラームス、おそらくあのサウンドは私がNHKホール聴いた中で最良なものだ。弦楽部に支えられたオーケストラはいかにも独墺系の良い音楽を聴かせてくれた。
 もう一例をあげると、ロジャー・ノリントンのベートーヴェンの演奏である。彼はオーケストラ中央の最後部に高い台を組みその上にコントラバスを置き、さらに反射板までおいて、低減の量感を補強していた。切れ味もよい、しかも量感もある素晴らしいベートーヴェンだった。
 N響の指揮者で何人がこのホールとサウンドの事を考えてくれているのかは私にはわからない。一度アンケートを取ってもらいたいくらいだが、これは冗談です。しかし過去聴いてきた演奏会を思い起こすとそういう工夫をしている指揮者は少ないのではないかと思わざるを得ない。
 一言言っておくと今夜の音の印象はあくまでも1階の18列の印象である。2階3階ともなるとどう響いているかはわからない。かつて2階席で1シーズン聞いたがはるかかなたで音楽が鳴っているようですぐやめてしまった。今の席は何度も試行錯誤をしたうえで決めた席だから、私にとっては満足のゆく席である、にもかかわらず久しぶりに今夜のような演奏会に遭遇してしまったのは実にショックだ。
 もしかしたら2階席、3階席に金管の音が聞こえるように今夜のような演奏になったのかと勘繰りたくなる。

 それはさておき、何度も会員をやめようかと思ったが、サントリーホールのBチクルスは入手困難でもあり、うじうじしながら今日まできている。とおもったら、来年からホールを改装することになり、Cチクルスは東京芸術劇場に移るという。ということで継続するか思案中である。

ラフマニノフの演奏までもう書く意欲がなくなった。すみません。聴きものの第18変奏もなにかとつとつとして全体に華が感じられなかった。アンコールはショパンのマズルカ63-2.