最後まで、引っ張られる作品だ。最後の数十ページでやっと全貌が明らかになる。大体この手の作品は途中で先が見えてくるのが通例だが、そうはならない。
柚木裕子「孤狼の血」の大上と日岡のコンビのごとく、2人の刑事が中心のクライムサスペンスだ。
1人は影山刑事、37歳、神奈川県警本部から最近所轄の川崎中央署刑事課に転任になった。本人が希望した異動だったらしい。10年前の通り魔による女性殺人事件を、刑事課の組織を無視して、独自に捜査をしている。
もう一人は村上刑事。交番勤務を終え、昇格し、川崎中央署の刑事課に配属になって、1週間の新米刑事である。影山はこの村上に目をつけ、捜査の動向を強制する。周りから胡散臭い目で見られている影山との同行はいやいやながらだったが、次第に10年前の事件に不審を持つようになり、自らものめりこむようになる。
そのような中、管内でまた殺人事件が起きる。村上はその捜査に忙殺されるようになる。10年前の殺人事件と起きたばかりの殺人事件の2つの狭間で、影山と村上のつながりは、次第に親密になってくる。
コロナ禍で外出もままならない、今日この頃、のんびりと読書もよいのではないか、そのようなタイミングに最適な作品だ。書きたいことはいろいろあるが、ストーリーに触れることになり、興を削ぐだろうからやめた。日ごろの空間と異次元の世界を体験しよう。〆