東京で爆弾テロが起きたという話である。クリスマスイブに恵比寿や渋谷の繁華街に爆弾が仕掛けられたという事前通告が犯人からマスコミを通じて行われた。条件は首相と面談させろということだった。果たして、犯人の真の狙い、首相に何を要求するのか?
平和ボケの日本に警鐘を鳴らす作品だ。そういう意味ではあたっているだろう。原作もそういう狙いがあったのだろう(読んでいませんが)。しかしこと映画作りと云うことになると少々出来上がった映像を見ると不満が大きい。
まずこのような作品を90分で描くのは、どうしても説明不足になる、何かをカットしなくてはならないが、結構詰め込んでいるので、私のようなアルツハイマー寸前の老人にはよくわからないところがあるのだ。
ひとつは、人間関係がよくわからない。佐藤浩市と石田ゆり子の夫は一体どこの戦場でどういう関係だったのだろう。これは戦争によるPTSDによるテロとも言って良い作品だろうが、その戦争なるものが、いかにも抽象的で、自衛隊がどこの戦場に何しに行って、それがどうして、テロにつながったということが、私の頭にはつながらない。大勢の人間が犠牲になるテロの原因が抽象的な概念と云うのは、ちょっと無理ではないのだろうか?
首相のテロに対する硬直的な描き方は、時間の制約だろうかお粗末だし、若者たちのテロに対する、行動はいかにもステレオタイプであり、劇画風だ。
要するに、爆弾を仕掛け、爆発させるという行為そのものはリアルに描かれているが、それをとりまく物語が、いかにも実在感が乏しいので、ドラマとしてどう受け止めてよいのやら。単なるアクションと描いたわけでもなかろうに?
したがって、登場する俳優は如何にもありそうな姿で描かれているので、小説を劇画にしたように思える、決して生身の人間を描いているとは感じられなかったのである。もっと丁寧に描けばおそらく120分ははるかに超える上映時間になるだろうが、テーマがテーマだけに、そうして欲しかった。
多くの著名な俳優を使っているのにもったいないことだ。犯人に操られるバイトの青年、ベテラン刑事(西島秀俊)、首相(鶴見慎吾)、なんだかよくわからない青年(中村倫也)、テロを見に行って友人に大けがさせる女(広瀬アリス)、怪しげな男(佐藤浩市)などなど、操り人形を見ているようだった。
〆