ぶんぶんのへそ曲がり音楽日記

オペラ、管弦楽中心のクラシック音楽の音楽会鑑賞記、少々のレビューが中心です。その他クラシック音楽のCD,DVD映像、テレビ映像などについても触れます。 長年の趣味のオーディオにも文中に触れることになります。その他映画や本についても感想記を掲載します。

2019年04月

イメージ 1

2019年4月30日

「七年の夜」、チャン・ドンゴン、リン・スンリョン他

韓国でベストセラーになったという同名小説の映画化。韓国映画らしく感情をあらわにし、わめく、叫ぶ、泣く、怒るなど表情が濃い。ただ不思議なことにこの映画には微笑みも含めて笑いがほとんどない。わずかに主人公たちの子供に、ほんのわずかに見ることができるのだ。そういう意味では実に夢も希望もないくらい映画だった。

 主人公はダムの警備員をしているヒョンス。ソウルに大きなマンションを買うがローンを払えずに、また貸しし、一家は地方のセリョン村のダム近くの警備会社の社宅に住むことになる。妻と長男ソウォンの3人暮らし。

 もう一人の主人公はヨンジェ、大きな歯科医医院の院長をしており、セリョン地区の大地主。こちらも妻と娘との3人暮らし。セリョンにある大豪邸に住んでいる。この二つの家族がある事件で遭遇してしまうことから、この映画が始まり、さらに大きな悲劇を呼ぶ。
 2つの家族はそれぞれ問題をはらんでいることが伏線になる。ヨンジュは妻とは別居状態で離婚訴訟中、いわゆるDV亭主で子供も犠牲になっている。一方ヒョンスは一人息子のソウォンを溺愛して身分不相応のマンションを買うが財政が破綻し、妻とは喧嘩の毎日。時には手を出す。ヒョンスの父親はDVでヒョンスとその母は犠牲者だったというトラウマがある。

 この映画はこのような現在の韓国の代表のような二つの家族を描く特に父と子のきずなに焦点を当てる、そしてこの二つの家族が遭遇した大事件の真相に迫るミステリーも追及するという、2重構造になっている。粗っぽいつくりはハリウッド並みだが、物語の骨子がよく最後まで面白く見た。ソウォンを育てる潜水士のスンファンの落ち着いた演技で指し示す苦悩は、周りが騒々しいだけに,光る。

2019年4月26日
於:サントリーホール

東京都交響楽団・第877回定期演奏会Bシリーズ
指揮:大野和士

武満 徹:鳥は星形の庭に降りる
シベリウス:交響曲第六番

ラフマニノフ:交響的舞曲

二人の巨匠の後期大作を並べた、オーケストラの力量を問うプログラムだ。シベリウスが自分の好みもあってとても感銘を受けた。

 特に、弦楽部の緊張ははらんでいるが、しなやかな響きは、単細胞的に云うと、自分のフィンランドのイメージ、そこから受ける音の空気感にあっていたように感じた。フィンランドと云えば森、湖、そして雪、の大自然と云うのがそれだ。その清澄かつ冷ややかな空気感がシベリウスの五番以降の交響曲では色濃い。それが再現できるかどうかが私のこの曲の演奏の好悪の別れるところ。

 話はそれるが、この空気感を最もうまく録音しているのが60年代にカラヤンが録音したCDである。特にこの六番と五番の演奏は部屋の空気がおやっと思うほど変わってしまうのである。グラモフォンのきりっとした録音も助けになっていると思うが、カラヤンの巧みさも大きいのではないだろうか?バルビローリ盤もSACDになってこの空気感が感じられるようになったが、カラヤンには及ばない。一つはEMIの録音が私には合わないせいだろう。とにかく今はシベリウスと云うとカラヤンを聴いている。残念なことにグラモンフォンでは四番以降しか録音してない。なぜそうなったのか、とても残念である。

 今夜の大野の描く六番もカラヤンの雰囲気を味わうことができる。特に1楽章の多彩な響きの底に流れる音楽の清澄さがうまく掬い取られ、私の好きなシベリウスサウンドになっている。3楽章のスケルツオもきりりとしてこれは実にスマートで、若々しい。とても気持ちの良い都響の弦と管楽のミックス。4楽章も1楽章と同じく多彩で彩りが鮮やかになる。七番の中間の歌謡性にも近似した懐かしい響き。すべて素晴らしい。最近のシベリウスのライブではオスモ・ヴァンスカ/読響の演奏した五番以来の名演だと思う。なお演奏時間はカラヤン、バルビローリとほぼ同じの30分弱。印象は速いテンポだったが、結果はそうでもなかったようだ。

 最近在京のオーケストラの企画ものが少ないような気がする。一時はズダーンのシューベルト、シューマン、ブリュッヘンのシューベルトやベートーベン、インバルのブルックナーやマーラーなどなど。
是非大野にはシベリウスを短期集中で聴かせてほしいものだ。

 ラフマニノフは彼の最後の作品だそうだ。彼はピアノ協奏曲二番や三番、パガニーニラプソディそして交響曲二番があまりにも素晴らしくて、この曲などは影は薄くなる。勿論聞けばこれはラフマニノフだとわかるがなぜか人工的なお城を見ているみたいで感情移入のしにくい作品である。特に2楽章は退屈でそれは今日の演奏の影響かもしれない。両端楽章の元気さは流石だがそれだけである。演奏時間はおよそ33分。

 前半に武満をカップリングしたのは時間調整のためか?意図がよくわからない。はじめからシベリウスを演奏すべきだったと思う。

イメージ 1

2019年4月26日

「ミッシング・レポート」、ガイ・ピアース、ピアース・ブロズナン主演

自分の記憶と、信じたいものを信じるという、人間の性の狭間でくるくる回る「spinngman」、これが現代である。人間はくるくる回るネズミのようだ。

 アメリカの、アディソン大学の学生ジョイス・ボナーが失踪する。誘拐か殺人か?警察のマロイ警部(ブロズナン)が捜査に取り組む。失踪した湖でアディソン大学のバーチ教授(哲学科)のボルボが目撃されたことから、彼の過去を含めて周辺が洗われる。バーチ夫妻は5年前にこの地にシカゴのエバンストンから移住した、何かの過去を引きずる夫妻である。そういう思わせぶりの映像がフラシュのように点滅。バーチの記憶の断片のようなものを見せられる。
 果たしてバーチは真犯人なのだろうか?それは見てのお楽しみだろうが、人は本当に信じるものを真実として信じてしまうものだろうか?

イメージ 1

2019年4月23日

「ザ・プロフェッサー」ロバート・ベイリー著、小学館文庫

著者の第1作でアメリカで評判をとった作品。2014年に第1作でその後シリーズ化しすでに4作まで刊行が決まっている。ちなみにこの作品は訳者の吉野弘人氏が出版社に持ち込んだという。

 主人公のプロフェッサー、マクマートリー教授はアラバマ大学のロースクールの証拠学の権威、68歳。アラバマ大学生の時にシュガーボールで優勝した時のディフェンスの選手だった。学部の新陳代謝の波に押しきられ、引退に追い込まれる。
 そんな時に昔の友人のルース・アンから自分の娘家族の交通事故死について相談が持ち込まれる。しかし彼は40年も法廷に立っていないので自分の教え子のドレイクをルースに紹介する。そして事故を起こした運送会社を相手の訴訟をするが被告弁護人もなんとマクマートリーの教え子だった。この2人はいずれもマクマートリーとは因縁がある人物。
 クライマックスは法廷シーンである。被告弁護人側からの急追でがけっぷちに立ったドレイクの逆転の目はあるのか、マクマートリーはその時?
 これはもう一気に読むしかない、昨夜AM3時ごろまでかけて読み切ってしまった。この本を途中で読むのを休む人はまずいないだろう。
 久しぶりに面白い法廷もの。またアラバマ州と云う馴染みのない場所を舞台にしたと云うのも新鮮だ。

イメージ 1

2019年4月23日

「エア・ストライク」
ブルース・ウイリスが主演してメル・ギブソンがコンサルタントをしている、米中合作映画。それにしてもブルース・ウイリスともあろう大俳優がこのような出来の悪い映画に出ているとは(失礼)!
 中国側の俳優たちの下手な芝居、下手な格闘、恥ずかしくなるような臭いシナリオ、日本人役の変な日本語(不明瞭)など。3Dで評判?の空中戦もまるで飛行機のラッシュアワーの中での戦闘でリアリティがまるでない。日本の重慶空爆を題材にしたのはよくわかるが、であればこれだけの多くの若者が登場し、中国市民が登場したのだから、もう少し群像劇的に一人一人をリアルさをもって描いたらもっとよくできた反戦映画になったろう。これでは単なる国威発揚もので、それにアメリカが一枚加わっているのは誠に面妖な話だ。ブルース・ウイリスは米軍の大佐で、中国空軍パイロットの育成に派遣されてきている。圧倒的な機能のゼロ戦との不利な戦いを繰り広げる中国の若者たち。良い題材だけに料理を(わざと)誤ったのはもったいないことだ。〆

↑このページのトップヘ