2015年12月29日
2015年を振り返って、ブログにしたものから音楽、映画そして本の各ジャンルのベストを10作ほどリストアップした。順位付けは難しいがやっと音楽だけは付けて見たが、実際それほど大きい差があるわけでないので参考値である。
「音楽編」
今年も音楽会はかなり行ったがそれぞれ立派なもので凡演はほとんどなく、どの演奏もなにかしらの感動やら印象を与えられた。そのなかで次の10本+1をあげて見た。
1.「シベリウス作品集」
11/26,12/4、交響曲一番、五番、六番、七番、ヴァイオリン協奏曲、カレリアから。オスモ・ヴァンスカ指揮、読響。特に五番は今年聴いた中で最も深い感銘を受けたもの。というか、ここ数年でこれだけのインパクトを受けた演奏はない。
2.リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」
新国立劇場の公演。指揮はシュテファン・ショルティス。5/30,6/4
新国立劇場は今年も好調でどの公演も素晴らしいものであるが、この「ばらの騎士」をその中の代表で選んでみた。特に元帥夫人の歌唱には深い感銘を受けた。
3.モーツァルト「ドン・ジョバンニ」
ロイヤルオペラ公演。9/20
パッパーノ指揮。マクベスも聴いたがどちらを選ぶかと云えば歌手の魅力でこちら。特にディドナートのドンナ・エルヴィーラが素晴らしい。
4.バッティストーニのオペラ
プッチーニ「トゥーランドット」5/7
ヴェルディ「リゴレット」2/9
いずれも歌手には若干の不満はあるがバッティストーニの指揮には脱帽である。それは真にイタリアのオペラの醍醐味を味あわせてくれたからである。輝かしいオーケストラ、音楽の素晴らしい推進力は何ものにも代えがたい。
5.マーラー「交響曲第四番」
ハイティンク指揮ロンドン響、9/28
今年はハイティンク再発見の年だった。このほかCDでマーラーとブルックナーの選集を聴いたがいずれも自然でスケールの大きい演奏だった。
6.山田和樹のマーラーチクルス「交響曲一番、二番、三番」
それぞれ1/24,2/22,2/28に聴いた。オーケストラは日本フィルである。若きマエストロにマーラー全曲を託した企画に座布団をあげたい。初振りの曲が多いそうだが若さがそれを補って余りある。特に力こぶの入り過ぎない二番が素晴らしい。
7.ブルックナー「交響曲第八番」
ヤノフスキー指揮、ベルリン放響。今年はヤノフスキー再発見の年でもある。このブルックナーは一聴、味もそっけもないようであるが、その底に流れる自然な音楽の流れはまさに今日のブルックナーに相応しい演奏である。このほか東京春祭でワルキューレを振ったが、好みでブルックナーをとった。
8.マーラー「交響曲第三番」
東京交響楽団/ノットのコンビの熟成を思わせる演奏である。9/12
今年はこの曲を何回か聴いたがこの演奏がもっともオリジナリティの富んだ感動的な演奏だった。決して熱くならないこのマーラーは新発見である。ノット/東響ではその他パルジファル抜粋が良かった。
9.モーツァルト「レクイエム」
ダイクストラ指揮、都響10/16
珍しいジュスマイヤー版による演奏。スエ―デン放送合唱団が素晴らしい。
10.マーラー「交響曲第七番」
大野和士指揮、都響4/8
大野の就任コンサート一環である。このほかベートーベンやベルリオーズも素晴らしい。
番外
ワーグナー「トリスタントイゾルデ」
バイロイト2015ライブ映像
ティーレマンの指揮が圧倒的な感銘を与える。演出も比較的まともなのが良い
その他、ロト/読響の幻想、新日本フィルの青ひげ公、N響/ヤルヴィのショスタコーヴィチの五番、、ドゥダメル/ロスフィルのマーラー六番、二期会のダナエの愛なども忘れられない音楽会だった。
「映画編」
ゴーン・ガール、アメリカン・スナイパー、リスボンに誘われて、マップ・トウ・ザ・スターズ、ドラフト・デイ、マッド・マックス、、RUSH、ビッグ・アイズ、、バードマン、フォックス・キャッチャー、イミテーション・ゲームの11本
今年の映画は特にどうしてもという映画がなかった。ほとんどの映画がレンタルで見たものだ。映画館という限られた場所、限られた時間を消費してまで見たいと云う意欲がわかない。11本の作品に共通するのは(マップ~を除く)男の心である。友情であったり、愛情であったり、悔恨であったり、憎しみであったり、挫折であったり、憧れであったりである。
「読書編」
今年から本のブログも始めた。これはなかなか難しい。今回はやっと10本を選んだがどれも面白い本ばかりだ。
「鬼神の如く」葉室 麟
黒田騒動のの物語である。これも男のドラマである。逆賊か忠臣かの評価の分かれる人物の描き方が面白い。
「レコードはまっすぐに」ジョン・カルショー
デッカの名プロデューサーの自伝的作品である。新作ではないが古本サイトで見つけたので読んで見た。当時の音楽家たちが赤裸々に描かれていて面白い。
「ゲルマニア」ハラルト・ギルバート
1944年のベルリンを舞台にした一種の警察小説である。親衛隊がユダヤ人の元刑事を雇って捜査をさせるという設定が面白い。
「武士の碑」、「負けてたまるか」伊藤 潤
前者は村田新八、後者は大鳥圭介をモデルにした時代小説である。どちらかというと表舞台に出て来ない男たちである。その人生を克明に描いている。
「若冲」澤田瞳子
異色の画家、伊藤若冲の物語である。絵が目に浮かぶような作者の筆致が素晴らしい。私は「流」よりもこちらが直木賞に相応しいと思った。彼女の作品では「与楽の飯」という奈良の大仏に関わる男たちの物語も面白い。
「六度目の大絶滅」エリザベス・コルバート
六度目の絶滅期を迎えていると云う地球の実態を克明に描いた力作
「夢はまことに」山本兼一
鉄砲鍛冶の国友一貫斎をモデルにした時代小説。江戸時代に生まれた科学的精神が克明に描かれる。同系の書物では西條奈加氏の「六花落落」が面白い。
「胡椒、暴虐の世界史」マージョリー・シェーファー
胡椒に踊らされた人類、なかんずく欧米人の物語、欧米による纂奪の物語である。ヨーロッパ人がいなければ世界はもっとずっと違った形になったろうと思わせる本だ。
「狗賓童子の島」飯島和一
飯島の久しぶりの作品だ。大塩平八郎の乱の生き残り西村履三郎の息子の常太郎が主人公であるがむしろ幕末期の民衆の生き様や彼らによって引き起こされる隠岐の島の乱の描写が面白い、熱い小説だ。
〆
2015年を振り返って、ブログにしたものから音楽、映画そして本の各ジャンルのベストを10作ほどリストアップした。順位付けは難しいがやっと音楽だけは付けて見たが、実際それほど大きい差があるわけでないので参考値である。
「音楽編」
今年も音楽会はかなり行ったがそれぞれ立派なもので凡演はほとんどなく、どの演奏もなにかしらの感動やら印象を与えられた。そのなかで次の10本+1をあげて見た。
1.「シベリウス作品集」
11/26,12/4、交響曲一番、五番、六番、七番、ヴァイオリン協奏曲、カレリアから。オスモ・ヴァンスカ指揮、読響。特に五番は今年聴いた中で最も深い感銘を受けたもの。というか、ここ数年でこれだけのインパクトを受けた演奏はない。
2.リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」
新国立劇場の公演。指揮はシュテファン・ショルティス。5/30,6/4
新国立劇場は今年も好調でどの公演も素晴らしいものであるが、この「ばらの騎士」をその中の代表で選んでみた。特に元帥夫人の歌唱には深い感銘を受けた。
3.モーツァルト「ドン・ジョバンニ」
ロイヤルオペラ公演。9/20
パッパーノ指揮。マクベスも聴いたがどちらを選ぶかと云えば歌手の魅力でこちら。特にディドナートのドンナ・エルヴィーラが素晴らしい。
4.バッティストーニのオペラ
プッチーニ「トゥーランドット」5/7
ヴェルディ「リゴレット」2/9
いずれも歌手には若干の不満はあるがバッティストーニの指揮には脱帽である。それは真にイタリアのオペラの醍醐味を味あわせてくれたからである。輝かしいオーケストラ、音楽の素晴らしい推進力は何ものにも代えがたい。
5.マーラー「交響曲第四番」
ハイティンク指揮ロンドン響、9/28
今年はハイティンク再発見の年だった。このほかCDでマーラーとブルックナーの選集を聴いたがいずれも自然でスケールの大きい演奏だった。
6.山田和樹のマーラーチクルス「交響曲一番、二番、三番」
それぞれ1/24,2/22,2/28に聴いた。オーケストラは日本フィルである。若きマエストロにマーラー全曲を託した企画に座布団をあげたい。初振りの曲が多いそうだが若さがそれを補って余りある。特に力こぶの入り過ぎない二番が素晴らしい。
7.ブルックナー「交響曲第八番」
ヤノフスキー指揮、ベルリン放響。今年はヤノフスキー再発見の年でもある。このブルックナーは一聴、味もそっけもないようであるが、その底に流れる自然な音楽の流れはまさに今日のブルックナーに相応しい演奏である。このほか東京春祭でワルキューレを振ったが、好みでブルックナーをとった。
8.マーラー「交響曲第三番」
東京交響楽団/ノットのコンビの熟成を思わせる演奏である。9/12
今年はこの曲を何回か聴いたがこの演奏がもっともオリジナリティの富んだ感動的な演奏だった。決して熱くならないこのマーラーは新発見である。ノット/東響ではその他パルジファル抜粋が良かった。
9.モーツァルト「レクイエム」
ダイクストラ指揮、都響10/16
珍しいジュスマイヤー版による演奏。スエ―デン放送合唱団が素晴らしい。
10.マーラー「交響曲第七番」
大野和士指揮、都響4/8
大野の就任コンサート一環である。このほかベートーベンやベルリオーズも素晴らしい。
番外
ワーグナー「トリスタントイゾルデ」
バイロイト2015ライブ映像
ティーレマンの指揮が圧倒的な感銘を与える。演出も比較的まともなのが良い
その他、ロト/読響の幻想、新日本フィルの青ひげ公、N響/ヤルヴィのショスタコーヴィチの五番、、ドゥダメル/ロスフィルのマーラー六番、二期会のダナエの愛なども忘れられない音楽会だった。
「映画編」
ゴーン・ガール、アメリカン・スナイパー、リスボンに誘われて、マップ・トウ・ザ・スターズ、ドラフト・デイ、マッド・マックス、、RUSH、ビッグ・アイズ、、バードマン、フォックス・キャッチャー、イミテーション・ゲームの11本
今年の映画は特にどうしてもという映画がなかった。ほとんどの映画がレンタルで見たものだ。映画館という限られた場所、限られた時間を消費してまで見たいと云う意欲がわかない。11本の作品に共通するのは(マップ~を除く)男の心である。友情であったり、愛情であったり、悔恨であったり、憎しみであったり、挫折であったり、憧れであったりである。
「読書編」
今年から本のブログも始めた。これはなかなか難しい。今回はやっと10本を選んだがどれも面白い本ばかりだ。
「鬼神の如く」葉室 麟
黒田騒動のの物語である。これも男のドラマである。逆賊か忠臣かの評価の分かれる人物の描き方が面白い。
「レコードはまっすぐに」ジョン・カルショー
デッカの名プロデューサーの自伝的作品である。新作ではないが古本サイトで見つけたので読んで見た。当時の音楽家たちが赤裸々に描かれていて面白い。
「ゲルマニア」ハラルト・ギルバート
1944年のベルリンを舞台にした一種の警察小説である。親衛隊がユダヤ人の元刑事を雇って捜査をさせるという設定が面白い。
「武士の碑」、「負けてたまるか」伊藤 潤
前者は村田新八、後者は大鳥圭介をモデルにした時代小説である。どちらかというと表舞台に出て来ない男たちである。その人生を克明に描いている。
「若冲」澤田瞳子
異色の画家、伊藤若冲の物語である。絵が目に浮かぶような作者の筆致が素晴らしい。私は「流」よりもこちらが直木賞に相応しいと思った。彼女の作品では「与楽の飯」という奈良の大仏に関わる男たちの物語も面白い。
「六度目の大絶滅」エリザベス・コルバート
六度目の絶滅期を迎えていると云う地球の実態を克明に描いた力作
「夢はまことに」山本兼一
鉄砲鍛冶の国友一貫斎をモデルにした時代小説。江戸時代に生まれた科学的精神が克明に描かれる。同系の書物では西條奈加氏の「六花落落」が面白い。
「胡椒、暴虐の世界史」マージョリー・シェーファー
胡椒に踊らされた人類、なかんずく欧米人の物語、欧米による纂奪の物語である。ヨーロッパ人がいなければ世界はもっとずっと違った形になったろうと思わせる本だ。
「狗賓童子の島」飯島和一
飯島の久しぶりの作品だ。大塩平八郎の乱の生き残り西村履三郎の息子の常太郎が主人公であるがむしろ幕末期の民衆の生き様や彼らによって引き起こされる隠岐の島の乱の描写が面白い、熱い小説だ。
〆