2013年8月24日
夏休みの間は映画館は混んでいるので以下の映画は全てレンタルDVDなどによる
「ジャンゴ・繋がれし者」、タランティーノ監督、ジェーミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ主演
タランティーノの西部劇だから一筋縄ではゆかない。ドイツ人の賞金稼ぎで早撃ちのシュルツ博士(ヴァルツ)はひょんなことから黒人奴隷を解放して早撃ち賞金稼ぎに育てる(フォックス)、それが主人公ジャンゴ。彼はシュルツと組みながら賞金を稼ぎ別々に売られてしまった妻をを取り戻そうとする。黒人が主人公の西部劇などと云うものは過去あったろうか?最近ではイーストウッドの「許されざる者」のモーガン・フリーマンくらいしか思い出せない。
それにしてもこの映画のタイトルは「繋がれざる者・UNCHAINED」で「許されざる者・UNFORGIVEN」と似ているから、タランティーノはこれを意識してないとは云えないだろう。そういう意味ではこの西部劇は過去の西部劇のオマージュとも云えよう。ひとつはマカロニウエスタン。大体主人公の名前のジャンゴは1968年の「血闘のジャンゴ」と云うマカロニウエスタンの主人公の名前だ。音楽もそれらしいしフランコ・ネロまで出ている。もう一つはこの映画は最新の西部劇だが映画の構造はまるで昔のB級西部劇だ。タイトルからしてもう懐かしい西部劇の雰囲気だ。そして主題歌にのって配役が赤い字で紹介される。そして賞金稼ぎが悪人を追いかける、そして殺す。そして・・・・・!シュルツ博士はまるでドック・ホリデーだ。なぜなら彼は歯医者の看板を掲げている。違うのはアル中の代わりにドイツ人であることだ。ドイツ人と黒人奴隷の組み合わせの西部劇など誰が思うだろう。そこにタランティーノの独創性と時代を読む鋭い感性がある。アメリカの大統領に黒人がなる時代なのだから!
この映画のもう一つの面白さは脇役陣の豪華さだ。楽しそうに演じているデカプリオやL・ジャクソンはいうまでもなく、フランコ・ネロ、ドン・ジョンソンなど挙げればきりがない。そしてなんといってもヴァルツの怪演はイングロリアスバスター同様だし、「大人のけんか」とはまた違ったユニークな演技力だ。フォックスのジャンゴも気持ちよさそうにやっている。そりゃそうだろう、黒人の殺し屋が白人をめちゃくちゃにやっつけるのだから!一方奴隷制度の悲惨さを十分描いていて、それもこのドラマの伏線にしているし、シュルツ博士の奴隷制度への不快感も南北戦争前夜の世相を良くあらわしている。お薦めの一本だ。前作の「イングロリアス・ナスターズ」より好きだ。
「世界で一つのプレイブック」、ジェニファー・ローレンス主演
原題は「SILVER LINING PLAYBOOK」、銀の背表紙の脚本、が直訳だろうが、なにかアメリカ人にはわかる意味があるのだろう。普段はこんなラブロマンスは見ないのだが、お気に入りのジェニファー・ローレンスが出ているのでつい見てしまった。彼女の「ウインターズ・ボーン」や「ハンガー・ゲーム」は印象的だった。しかしこの映画は途中で投げ出したいくらいつまらない映画だったが、彼女のきめ細かな演技で最後まで見てしまった。ただ見終わってみると他愛のないラブロマンスとしか言いようがないのだが、良く見るとなかなか厳しい目で作られていることが分かる。主人公の男女はどちらも心を病んでいる(女性はローレンス、男優は忘れた)。男は精神病院を出たばかりで薬物治療を受けている。ローレンスも同様。彼らがダンスを通じて生きる希望を見出すと云うまあ臭いストーリーなのだが、この二人のまわりに出てくる人物はことごとく良いやつなのである。父親(デニーロ)、母親、兄、友人夫婦、おまわりさん、インド人の精神科医、その他全員、悪人は一人もいない。二人の主人公は演技がうまいせいか、こんな輩がいたら、こっちがまいってしまうほどだが、それにもかかわらず周りの人々の目は終始温かいのである。これはおそらく今のアメリカにないものを描こうとしていたのではあるまいか?こうあって欲しいと云う願望がこの映画の肝の様な気がする。そういう意味では失われたアメリカの開拓精神を描こうとした「ウインターズボーン」に通じるものがあるように感じるのは少々無理だろうか?
「ロストID」オランダ映画
情報漏洩ものである。時代背景を捉えて、なおかつオランダ公安委員会のテロ対策とからめたなかなか面白い一品。
主人公は自分のパソコンからの情報漏えいで第三者になりすまされてしまう。銀行口座から、資産まで全て乗っ取られる。しかしその裏には大きな企てが秘められていた。少々話の進め方は乱雑ながら今日性がありそのリアルさが怖い。それにしてもフランスもそうだがオランダの警察は怖い。
「裏切りの戦場・葬られた誓い」フランス映画
1988年、仏領ニューカレドニアで、独立戦線の一派が、フランス憲兵部隊を襲い、人質を取り、島の洞窟に立てこもる。仏政府は治安部隊のルゴルビジェ大尉ひきいる交渉部隊を派遣。しかしときあたかもミッテランとシラクの大統領選挙の真っ最中で、大尉は交渉に臨むも、政争の具になったこの独立戦線の取り扱いに苦慮する。しかも現地には正式な陸軍も派遣されそれとの軋轢や、独立戦線のリーダーとの約束にも縛られ、苦慮すると云う窮地に追い込まれ、一人大尉は木の葉の様に翻弄される。実話に基づく話。
ニューカレドニアが仏領とは不勉強で知らなかった。2014年にやっと独立の国民投票が行われるそうだ。この映画は一大尉のおかれた苦境、苦悩を余すところなく伝えた異色の戦争ドラマになっている。
「東ベルリンからきた女」ドイツ映画
ベルリンの壁、崩壊の8年前の東ドイツのある地方都市に東ベルリンから女医が転任してくる。彼女は外国の恋人に会いたいために海外出国の希望を出したがそれがスパイ行為とみなされて地方に飛ばされる。しかしこれはスパイものではなく人間ドラマ。お互いに監視し合う東ドイツの体制下での自己犠牲が悲しい。佳作
「フライト」デンゼル・ワシントン主演
最後は予測できそうで出来ないなかなか面白い作品。腕は超一流のパイロットのワシントンは実はアル中で、ヤク中の最低の男。本当に嫌な奴をワシントンがやっている。飛行機事故を起こす。当初は奇跡の操縦と云われて英雄扱いだったがアル中がばれて落ちた偶像。さて結末は?ドン・チードルが弁護士役ででているがあまり似合わない。アル中やヤク中問題も絡めた社会派ドラマともとらえることができるだろう。
「マリー・アントワネットに別れを告げて」、ダイアン・クルーガー、レア・セトウ
フランス大革命の1789年の7月14日からの何日間をベルサイユ宮殿やトリアノン宮殿での実ロケにより映像化している。マリー・アントワネットや貴族のおろおろする様がリアルに描かれていて、フランス革命の裏面史としての面白さがある。シャンタル・トマと云う人の書いた小説の映画化。アントワネットの朗読係の少女が主人公でセトウが好演。クルーガーのアントワネットとポリニャック夫人との関係も興味深い。ポリニャック夫人の身代わりになるようにアントワネットに頼まれる少女の気持ちが切ない。
「踊る大捜査線FINAL」
ファイナルというタイトルにつられて借りたが誠にバカバカしい映画で呆れてしまう。よくまあこんなシナリオをかくなあと逆に感心してしまう。
「シャドー・ダンサー」、クライブ・オーエン主演
アイルランド紛争で弟を殺された主人公コレットはそれから20年後、IRAの戦士として活躍していたが、ある事件で逮捕されてしまう。そして自分の息子の命か、スパイになるか強要される。しかしそれにはおもいもよらない罠があった。息詰まるスパイものだ。他国の人間から無益な争いとしか思えないが双方からみれば、必死に守らなければならないものがある。みていて虚しさも感じる怖ろしい映画だ。ほんわかした日本人はみるべし。
そういえばブラッド・ピット×ハリソン・フォードの「デビル」もIRA戦争を描いているが、こちらはハリウッド映画らしさがあって、面白さが先に立つ。
「ルアーブルの靴磨き」フランス映画
マルセルは靴磨き、妻と二人でその日暮らし。そこへガボンからの密航者イドリッサが転がり込む。ロンドンに住む母親に会いにゆきたいと云う。マルセルは東奔西走、近所の人々もそれを助けると云うほんわか映画。港町ルアーブルの風景や庶民の暮らし、コミュニティなどきめ細かく描かれている。ただし映像で見るルアーブルは少々暗めで、何年か前に行ったルアーブルの港は明るく輝いていた、その風景とはちょっと異なっていたのは季節せいかもしれない。ルアーブルと云えばオペラのマノンレスコーがアメリカに流刑になる時の出発地、デグリューとの場面が印象的だが、そういうことも思い出しつつ見てしまった。なかなか面白い一品。
以下はケーブルテレビなどで見た古い映画。
「軍閥」、小林圭樹主演
終戦のエンペラーの代わりに見た。小林と火野の東条比べが楽しみだ。
「セントオブウーマン」、アル・パチーノ
パチーノがアカデミー賞をとった作品だったか?初めて見たが面白かった。パチーノはゴッド・ファーザーやセルピコなどギャング映画以外でも同じパターンだと云うことがよくわかった。
「グッドモーニングベトナム」、ロビン・ウイリアムス
ベトナム物は「地獄の7人」なんていうゲテモノ的なものまで皆見ているつもりだったがこの作品は見逃していた。ベトナム戦争の裏面史を描いて興味深い
「戦火の中へ」韓国映画
朝鮮戦争を舞台に学徒動員された71人の学生たちが浦項と云う基地を11時間死守するという実話に基づく映画。韓国にも学徒出陣があったのは知らなかった。
〆