ぶんぶんのへそ曲がり音楽日記

オペラ、管弦楽中心のクラシック音楽の音楽会鑑賞記、少々のレビューが中心です。その他クラシック音楽のCD,DVD映像、テレビ映像などについても触れます。 長年の趣味のオーディオにも文中に触れることになります。その他映画や本についても感想記を掲載します。

2013年02月

2013年2月26日
先週から体調を崩し音楽会にも映画にも行けなくなりました。先週はミンコフスキー/ルーブル宮廷音楽隊と二期会のこうもりを聴きそこなってしまいました。
ということでしばらく休耕いたします。

2013年2月18日
 
「ルーパー」、ブルース・ウィリス、ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演
新宿の映画館で観たのだが、なんと同時にダイハードの最新作もやっており、ブルース・ウィリスモテモテ状態だ。タイトルのLOOPERのLOOPは環のことで、LOOPERは環を作る人と云う意。20044年、30年後の未来から邪魔ものがタイムマシンで送られてくる。それを殺す役がLOOPERだ。未来の自分が送られてきて、それを殺すことををLOOPが閉じると云い、その場合自分は余命30年と云うことになる。これはそういう時代背景の物語。とにかく見ていて時間と場所がめまぐるしく変化するので忙しい。しかし理屈がわかってしまえば、インセプションほどのインパクトはない。前半の時代背景の解説のような物語は面白いが、途中の逃走劇は少々なかだるみ。ジョセフ・ゴードンが昔のローレンス・ハーヴェィみたいで、懐かしかった。後半でてくる少年シドはオーメンみたいで不気味だった。まあ面白かった。
 
「リンカーン弁護士」、マシュー・マコノヒー主演
社会のくずばかり弁護して金を稼いでいる弁護士がマコノヒ―で気持ちよく演技している。こう云う役がよく似合う。中古のリンカーンに乗っているのでリンカーン弁護士だ。しかも運転手つき。この運転手が黒人の悪みたいだが、マコノヒーに弱みを握られているのか安月給で仕えている。この二人に会話はおかしい。この弁護士はこう云うアメリカ映画に定番の×一で、元奥さんは検事、娘は奥さんが預かっている。まあこういう背景だ。そこに御指名で傷害事件の弁護の依頼が舞い込む、しかも大金持ちからの依頼だ。
 結末まで息もつかせず見せる面白い展開の続出。ただキイになる人物がさりげなくちりばめてあるのでみる場合はじっくりと見ること。面白かった。
 
「トータル・リコール」コリン・ファレル、ケイト・ベッキンセール、ジェシカ・ビール
シュワルツネッガー主演のリメイク版。シュワルツネッガー版はあまり覚えていないが、少々おちゃらけたような場面あったが、この映画はマジメに作られている。近未来が舞台。主人公が現状から脱出するために、記憶を売ると云うリコール社でその装置に入ったとたんに、ノンストップ・アクションが始まる。ファレルも凄いが、美女二人のアクションも見せ場満載。ただこうアクションシーンばかりが続くとだんだん飽きがくるのが少々残念。まあ過ぎたるは及ばざるがごとし。
 
「ハンガーゲーム」、ジェニファー・ローレンス主演
これも近未来映画だ。小説の映画化。子供同士が殺し合うと思って馬鹿にしてみたが、最後まで面白かったし、なかなか良く考えられた映画だと思った。近未来の架空の国が舞台。国民を抑圧するために国の12の地区から12ペアの少年と少女を選出させ、サバイバルゲームをさせるという。なぜ少年少女かという説明はなかったように思う。この戦いを都の住人達はお祭り騒ぎの様にみるのだ。まあ為政者の一種のガス抜きのようだ。
 SF仕立てではあるが、まるでローマ時代のグラディエイターの戦いのようだ。ただしコロッセウムは広大な森林の中。その森林の中で(属州から駆り出された)24人は殺し合うが全てモニターされTVでライブ放送される。ローマ時代の剣闘士も観衆を味方にせよというのが鉄則だが、ここでも観衆がスポンサーになると差し入れもできると云う仕組み。映画の大統領は皇帝であろうが、面白いのは腹心の名前がなんとセネカ、TV放送のMCはシーザーと云うのだから笑ってしまう。主演のジェニファー・ローレンスはどこかで見た俳優と思ったら「ウインターズ・ボーン」の主人公だった。この映画でも孤高の、独立心旺盛な、肉食系女子を痛快に演じている。これはくだらないサバイバルゲームのようだが、しかもローマ時代の衣裳をかぶっているが、その実、アメリカの格差社会や貧富の差などの問題を痛烈に皮肉っているように感じた。
 とても面白かった。
 
「コロンビアーナ」、ゾーイ・サルダナ主演
コロンビアのボコタでギャングから足抜けしようとした父親がボスから母親ともども殺されてしまう。ひとりぼっちでアメリカのおじさんを頼ってゆく。そこで仇打ちの為に殺し屋修行をするという。男でも奇想天外な活劇を女がやるということに、違和感を感じている自分は、古いのだろうか?それにしてもワルもオマワリも男が皆間抜けに見えるのは、作る側にも問題があるのではないか! 見るのは時間の無駄でしょう。
 
「エージェント・マロリー」、ソダーバーグ監督、ジナ・カラーノ、ユアン・マクレガー、マイケル・ダグラス、バンデラス
ソダーバーグ監督でこの俳優だからつまらないはずはないのだが!
 CIAと契約している民間会社でスパイ活動をしているマロリー(ジナ・カラーノ)はバルセロナで内部告発者を救出すると云う任務を与えられる。救出は成功するが!
 前作のコロンビアーナもそうだが、この映画も肉食系女子が主人公だ。これははやりか?そういえばハンガーゲームのジェニファー・ローレンスもそうだった。ここでも男どもは皆間抜けに見える。間抜けに見えるユアン・マクレガーがまるで似合わない裏表のある人間をやらされて可哀想。ソダーバーグの作品にしてはもたつき気味。話の進み方もぎくしゃくしているように思えた。それがリアリティを出す場合もあるだろうが、本作では作りが雑としか思えなかった。たとえば主人公だが、パーティ会場でドレスを着ている姿と、ダブリンで追いかけられる姿(サバイバルウエア?)とでは足の長さも、形も違って見えて、明らかにスタントだとわかるのは、興ざめだ。
見てがっかり。
 原題は「HAYWIRE」、干し草を束ねる針金のこと。そこから派生した意味か、計画が台無しになったり、混乱した状態をいう。
 
「ローマ法王の休日」イタリア映画
タイトルからして、コメディかと思ったが、邦題と予告編にだまされた。
 人間だれしも大役を仰せつかった時には、高揚感もあるが、その責任に押しつぶされそうになる。この主人公もそういう一人。しかも大役も大役、ローマ法王なんだから、大変だ。彼はヴァチカンを逃げ出してローマの町をさまよう。この場面がヘップバーンの「ローマの休日」の様なわかりやすいエピソードではなく、なかなか屈折したローマ法王殿でわかりにくい。
期待外れの一作
 
今月はルーパー以外はすべてDVDでした。
                                                       〆

2013年2月17日
於:東京芸術劇場(1階N列右ブラック)
 
東京芸術劇場、シアターオペラ
ビゼー 「カルメン」
指揮:井上道義
演出:茂山あきら
カルメン:ジュゼッピーナ・ピウンティ
ドン・ホセ:ロザリオ・スピナ
エスカミーリョ:ダニエル・スメギ
ミカエラ:小川里美
スニガ:ジョン・ハオ
ダンカイロ:晴 雅彦
レメンダート:ジョン・健・ヌッツォ
フラスキータ:鷲尾麻衣
メルセデス:鳥木弥生
管弦楽:オーケストラアンサンブル金沢
合唱:武蔵野音楽大学合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
 
東京、名取、石川、福井、富山の5都市公演と銘打った、セミ演奏会形式の公演。オーケストラは名取市公演のみ仙台フィル。合唱とバレエはその地域の団体によって行われる。非常に意欲的な企画である。
 ただ私にとってはいくつかの問題を抱えた「カルメン」だった。まず演出である。プログラムにはこう書いてある「日本でオペラを上演しようとすると、オペラ発祥の地であるヨーロッパの人間に似せた衣裳や化粧に走り、それがかえって違和感や滑稽感を生みだしてきた、と云う事実である。・・・略・・・もはや単なる真似ごとに満足するのではなく日本から、そしてアジアから、世界に発信するオペラのプロダクションがあったって良いはずだ。・・・略・・・今回のカルメンの舞台設定は、必然的に東洋へと向かった。結果、スペインの影響を多々受けたフィリピンに落ち着いた」と。これが今回のスタッフが舞台をフィリピンに置いた理由だそうだ。ちなみに指揮者の井上の意見でもあると云うのだから呆れてしまう。要するに東洋人が西洋の真似をしたって恥ずかしい公演しかできないよと云っているのだ。しかしそういう人々は昨年の二期会の「パルジファル」をご覧になったであろうか?そこには滑稽感など全くなく、深い感銘を私に与えてくれた。今日の様な独りよがりの演出は欧州だけかと思っていたら、日本でも最近出てきたようだ。私には今日の公演のほうが恥ずかしく、滑稽だった。
 もう一つは言葉である。今回の公演は部分的に日本語で行われる、ということであった。私はアルコア版なので台詞の部分だけ一部日本語になるのかと思っていたら、なんと導入の合唱から日本語、その後のたばこ工場の素晴らしい女工の合唱も日本語である。まあフランス語で歌われたって全部わかるわけではないのでえらそうなことは云えないが、困ったのは日本語とフランス語がちゃんぽんで出てくるのである。これは音楽の統一感を欠くのではないだろうか、と私は思うのである。基本的には「日本語はフィリピンの現地人の言葉、フランス語は主にスペインの征服者の言葉」ということらしいが、必ずしもこうなっていないので落ち着かない。東洋から発信するカルメンなら外人などいれないで、日本人だけでやった方がもう少し演出家の思想が生かせたのではないだろうか?こうなるとアルコア版だろうがなんだろうが関係ない。アルコア版の台詞もバッサリカットされてオペラ・コミックとしての「カルメン」は再現されなかったように思った。それと意訳がちょっと激しすぎやしないかと思った。ビゼーがこの公演を見たら「俺のカルメンもグローバル化が進んだなあ」と、喜ぶだろうか? 
 舞台には大きな円形の舞台があってその上と、舞台前の空間で歌とバレエが演じられた。舞台の奥には階段状のやぐらが組まれてそこに合唱が陣取る。オーケストラピットはほとんど平場である。舞台の進行などはきびきびしてまずまず。面白かったのは第4幕でホセがカルメンを刺すシーン。舞台上に柵がおかれ、赤い幕をバックに、ホセがカルメンに復縁を迫る。合唱は闘牛士に殺せと声をかけるが、それはあたかもホセにカルメンを殺せと云っているようだった。
 さて、歌手達である。カルメンのピウンティはベテランらしく堅実。安心して聴けるが、恋に命をかけるというぎりぎりの女という面はあまり感じられなかった。しかし歌唱は立派なもので、安心して聴けた。ホセのスピナはオーストラリアのパヴァロッティらしい。しかし1,2幕は残念ながらその様には感じられなかった。ミカエラとの2重唱や花の歌も私には不安定に聴こえた。しかし3,4幕は流石に立派なもので大いに心を動かされた。前半はセーブしたものと思いたい。エスカミーリョは声が立派ながら癖があって私は好きになれない。ミカエラの小川は拍手を一杯もらっていたが、なるほど声は美しい、しかし私にはまるでガラス細工のミカエラの様に聴こえ、生身の人間のようには感じられなかった。わずかに3幕の終結部で熱を感じた。久しぶりにヌッツォが出ていたが、流石に立派な歌唱。2幕最後の重唱もよかった。
 オーケストラはオペラの経験はあまり多くないはずだが、まず過不足ない演奏だった。ただ冒頭から淡白に聴こえたのはホールのせいか、東洋発信のカルメンだからか、定かではない。最後までカルメンの熱気はオーケストラからは感じられなかった。井上は結構いきり立ったり、思い切り歌わせたりするが、それに応えていないように思った。井上の指揮は相変わらず、オーバーアクションで、辟易させられる。金曜日の準・メルクルの簡素で美しい指揮の後だから、余計そう感じる。だからといって、出てきた音楽は品のない音楽ではなかったけれど!アルコア版の台詞や音楽のカットもあるが演奏時間は140分。参考までに鋭利な刃物のようなマゼールのカルメンもおよそ140分。ただマゼールのは今日の公演より台詞が多いので比較する意味はない。
                                                        〆
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2013年2月15日
於:NHKホール(1階9列右ブロック)
 
NHK交響楽団、第1749回定期演奏会
指揮:準・メルクル
チェロ:ダニエル・ミュラー・ショット
合唱:国立音楽大学
 
サンサーンス:チェロ協奏曲第一番
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲
 
サンサーンスは全く初めて聴く曲。聴きやすい音楽だがもう少し聴きこむ必要がある。チェロのショットの音は実に艶があって豊か。アンコールのラヴェルのハバネラ形式のヴォカリーズの精妙さも味わえた。
 さて、ラヴェルは掛け値なしの素晴らしさ。N響からこれだけの色彩感を引き出せる指揮者はシャルル・デュトワくらいしか思いつかない。色彩感と云うのはこういうことだ。有名な第三部の夜明けの部分、最初は小さな音から始まり、徐じょに音が膨れ上がってくる、これは当たり前だが、音が膨れ上がると同時に、色相の変化が感じられると云うことである。メルクルはそういう音を作り出す。もう一つ、例えば全員の踊りの様なオーケストラがフルパワーで盛り上がる時、音に全く滲みがないのだ、全ての音が、きちんとフォーカスしているのである。どんなに大きな音を出しても音は濁らないし、各楽器もクリアに聴こえるのである。メルクルの指揮は美しい。これは無駄な動きがないと云う意味である。指揮者によっては見て見て僕の指揮、といったナルシストのような輩もいるが、メルクルは全くそのようなことがない。だから彼の腕から指の動きを見ていると音楽の表情がよくわかるのである。N響も熱演だが、熱演と感じさせない余裕が感じられた。
いつもは不安定なトランペットも今日は安定していたし、木管群は相変わらず美しい。弦はもう少し柔らかさが欲しいが、前から9番目と云う座席のせいか、曲の性格によるものかもしれない。
 いずれにしろ、今夜のラヴェルは滅多に聴けるものではないと思った。
                                                         〆

2013年2月12日
於:サントリーホール(1階20列中央ブロック)

読売日本交響楽団、第557回サントリー名曲シリーズ
指揮とヴァイオリン:ライナー・ホーネック

ロッシーニ:歌劇「泥棒かささぎ序曲」
シューベルト:劇音楽ロザムンデから「間奏曲二番」、「バレエ音楽二番」
ベートーベン:ロマンス第二番
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第二番
ブラームス:ハンガリー舞曲第一番

ヨハン・シュトラウス供Т邁侶燹屬海Δ發蝓彌?
           :エジプト行進曲
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「遠方から」
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ヨハン・シュトラウス供?茵璽璽奸Ε轡絅肇薀Ε后Д團船ート・ポルカ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル「休暇旅行で」
ヨハン・シュトラウス供Д錺襯帖崙邱颪里个蕁
           :トリッチ・トラッチ・ポルカ

昨年の11月にもこういうアンコールピースを集めたような名曲コンサートがあった。あれはラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス選曲なんていう触れ込みだったが、中身は全く統一性がなくスペインものがあったり、ワーグナーがあったり、おまけにアンコールがラデツキー行進曲なのだから、少々そのセンスを疑いたくなるようなものであった。
 しかし、今夜はライナー・ホーネックらしくすべてウイーンに関係するものばかり。ロッシーニが異質と云えば異質だが、彼だってその音楽でウイーンを席巻したのだから、今日のプログラムに参加する資格が十分ある。
 前半5曲では、しまいの2つの舞曲がほろりとするくらい美しい。特にドヴォルザークは切なくなるくらいで、読響のしなやかな弦楽器群が素晴らしい。しかもチェロやコントラバスの豊かな響きはこのオーケストラからはなかなか聴けないものだった。ブラームスは一転情熱的ななかに、やるせない思いもでてこれも聴きもの。ロマンスはホーネックのヴァイオリン付きだが、私には甘ったるくてつまらなかった。シューベルトのロザムンデの間奏曲も素晴らしい。この弦のしなやかな響きはライナーが引っ張り出したものだろう。
 後半はウイーン音楽満載で、楽しいプログラム。8曲の内、3曲目から7曲目まではホーネックがヴァイオリンをもって指揮をしていた。昔のボスコフスキー時代のウイーンフィルのようだった。全て楽しいが、やはり作品の充実度から云って、こうもりが最も良かった。クライバーのような柔軟性はないが、かっちりした中に柔らかみがあり、このままオペレッタを聴きたい気分になった。今月は二期会で聴けるので楽しみだ。エジプト行進曲では楽団員がコーラスしていて、楽しい。
 なお、アンコールは「ラデツキー行進曲」でもちろん拍手つきである。こういう筋の通った名曲コンサートなら納得。なお蛇足ながらライナーはピッツバーグ交響楽団のマンフレッドの弟である。マンフレッド・ホーネックといえば素晴らしいマーラーの録音で絶好調の指揮者であり、彼の録音は注目している。特に一番の交響曲は今まで聴いたことのないような音楽が聴ける。録音はすこぶるつきの優秀録音。
                                     〆

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