2012年10月28日
「ビヨンドアウトレイジ」ビートたけし監督
とにかく多彩な男優陣には驚かされる。たけしにそれだけ共感している俳優が多いと云うことか?
巷ではあまり評判はよろしくないようだが、平日にもかかわらずお客さんはかなりの入りで、男性一人で見に来ている方も多かった。
乱暴な言葉が機関銃のように飛び交うと云う前評判を頭に入れて見たが、そう思って見たせいか案外にまともな映画だと思った。こちらの頭がおかしくなっているからだろうか?アメリカ映画の汚い英語連発に比べればこんなものは可愛いように感じた。殺人や暴力シーンは前作同様。たけしの殺人姿はまるでノーカントリーのパクリの様だ。しかしこの映画の暴力や乱暴な言葉を一枚づつはがしてゆくと、そこにはどこの組織や社会にもある、権力闘争・抗争が見えてくる。それを暴力などのオブラートで包んだだけだ。そういう意味で現代社会のパロディのようにも感じた。ただ暴力という、ヤクザ社会という異常な世界でしかこう云う事を描けないと云うのはたけしの一種の照れではないか?しかしこの映画には仁義なき戦いの様な情念はあまり感じられない、人間はあくまでもテレビゲームの主人公の様に無機的にしか描かれていない。切れば血の出る人間としては描かれていない。切れば血が出るが、それは物理的な赤いものでしかないのだ。女っ気がないのも情念に欠ける一因だろうが、それが奇妙な清潔感を感じさせた。俳優は皆うまいが、加瀬亮は少々気合い乗り過ぎ。狂言回しの小日向の存在感は流石と思った。とてもとは言えないが面白く見た。(劇場にて)
「最強の二人」フランス映画
この手の映画は苦手だが、評判がよろしいので劇場まで足を運んだ。面白いことは面白いが私には本当の話とは思えないほど、おとぎ話風にしか思えなかった。実在の人々のお話だそうである。つまるところ健常者が障害者を障害者としてみないところから交流が始まり、やがてお互いの世界が変わったと云うことだろうか?障害者がめちゃくちゃな金持ちというのも本当だろうが、現実離れした設定である。心温まる映画で家族で見る価値があると思うが、PG12となっているのは、マリファナを吸ったり、ドラッグの密売をやっている社会の貧困層を描いていたからだろうか?(劇場にて)
「キリンの翼」阿部 寛、新垣結衣
テレビや映画で同じみの俳優が勢ぞろい、しかも原作(東野圭吾)とくればつまらないはずはない。前半快調、謎解きやかっこよすぎる阿部刑事の捜査、なかなか面白い。しかし後半の涙ちょうだいで、またかあと云った感じ。主役の刑事とその父親を、殺害された父親(中井貴一)と息子の関係をだぶらせてみたり、派遣切りを絡ませて社会性を表わしたりでやっていることが全て薄っぺらい。こうみえみえにしなくてもさりげなくやるだけで十分メッセージが伝わるはずだろうに!社会の最底辺で生きているはずの新垣がふっくらして、貧乏たらしく見えないのも興ざめだ。(DVD)
「タイタンの逆襲」サム・ウォーシントン
前作同様お子様向けである。ただあえてこの映画を見るのはその撮影技術の素晴らしさである。前作には感心させられた。神々の神話の映像化は子供の夢だろうが、それを現代の技術で実現させるのは映画の一つの役割だと思う。「ヒューゴ:スコセッシ監督作品」など見ていてもそういう映画人の思いは伝わる。ただ本作は前作に比べると面白さは減っているような気がした。それはTVゲームのような集団戦が多いからだと思った。CGを使った映像も新鮮味はあまり感じられなかった。女優も前作のほうが魅力的。まあ本質とは関係ありませんが。(DVD)
「ステキな金縛り」西田敏行、深津絵里
こう云う映画は自分に合わないと云うことを改めて感じた。面白さが全てへそ曲がりにできていて、いろいろ含蓄というか、メッセージが込められているが、それをわからすのにこんなに遠回りする必要はないんじゃないのと思った。しかも立派な俳優さんを山ほど使ってだ。エネルギーの浪費としか思えない映画だった。つまらなかったのかいと云われれば、つまらなくはなかった。ただいらいらする。(DVD)
「逆転裁判」三池崇史
これはひどい映画だ。途中眠くなって何度も巻き戻したが、いい加減こう云うおちゃらけた映画を作るのはやめたらどうだろう。近未来で人口増の社会での裁判制度と云う、面白い切り口なのに残念だ。原作は漫画か?人口増による近未来映画で「タイム」と云う映画があった、これもそうできは良くはなかったが、話の斬新さでは圧倒的にそちらのほうがスケールが大きく面白い。この逆転裁判の話のちまちましたこと!!
「マシンガン・プリーチャー」ジェラルド・バトラー
ならずものが戒心して、キリスト教の一派の新興宗教を信じ、南スーダンの子供たちを救う、実在のサム・チルダースの物語だ。話は大変面白いが、チルダースの心の変化があまりに唐突・単純なので、どこまで本当なのと、思わず眉に唾をつけてしまう。まあ映画と云うのは無制限の時間が許されるものではなく、せいぜい2時間程度に納めなくてはならないから、そう細密に描けないが、そこはプロなんだからもう少し本当らしく脚色したり、演出して欲しい。大体一回教会に行っただけで、狂信的な信者になるものだろうか?自分で教会まで建ててしまうくらいに!
(DVD)
「クリミナル・合衆国の陰謀」 ケイト・ベッキンセール、マット・ディロン
ナオミ・ワッツ/ショーン・ペン主演の「フェア・ゲーム」と似た話。フェア・ゲームはイラク侵攻に絡むCIA女性局員の暴露話だが、本作は架空でベネズエラに侵攻する話に絡むCIA女性局員の暴露話だ。ただ本作はそれを暴露した女性新聞記者側の話が本筋である。原題は「NOTHING BUT TRUTH」。実話に基づいた話だそうだが、案外とモデルはイラク侵攻事件かもしれない。暴露した記者は情報源を明かさない為に留置されてしまう。彼女の主義と法との戦いが肝である。重苦しく見終わった後も苦さの残る映画だ。(DVD)
「クリミナル・マフィア法廷」シドニー・ルメット監督
これも実話に基づいた話。20人のマフィアを76の訴因で訴えた、2年にものぼる裁判の生々しい再現劇である。マフィアは全員がひとりづつ弁護士をつけるが、一人弁護士を信じないディノーシオだけ、自らを弁護する。原題は「FIND ME GUILTY」。本作はこのディノーシオがどのように自分と仲間を弁護するかを克明に描いている。ルメットがマフィア裁判を映画化するからには何か裏があるはずだが、それは見てのお楽しみ。だがアメリカと云う国は本当に面白いと云うか、変な国だなあと思わされた一本だった。(DVD)
〆