2012年7月29日
於:新国立劇場(1階2列、中央ブロック)
日中国交正常化40周年記念
ヴェルディ「アイ―ダ」:演奏会形式による公演
指揮:広上淳一
アイ―ダ:ヘー・ホイ
ラダメス:水口 聡
アムネリス:清水華澄
アムナスロ:ユアン・チェンイェ
ランフィス:妻屋秀和
エジプト国王:ティエン・ハオジャン
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
合唱:新国立劇場合唱団
国家大劇院合唱団
日中の中堅どころがそろって、絢爛たる、歌の饗宴だ。演奏会形式だから歌手は声で勝負するしかない。レコード芸術8月号のマレク・ヤノフスキーのインタビューでも演奏会形式について語られているが、へたな演出があるよりずっと楽しめる。今日の公演は歌手に穴がないこともあって久しぶりにヴェルディのオペラを堪能することができた。最近は演奏会形式でも手が込んだことをする場合があるが、今日の公演では、まさに演奏会形式で、シンプルそのもの。舞台の奥に合唱団が陣取り、その前にオーケストラ、そして舞台左前に歌手たちが並ぶ。演技はほとんどない。わずかにラダメスとアイ―ダが3幕や4幕で手を握るぐらいだ。
まずタイトル・ロールのヘー・ホイ。堂々たる声で立派なアイ―ダだ。しかし私にはたとえば1幕の「勝ちて帰れ」など少し味付けが濃いように感じた。だからアムネリスの清水との恋のさや当てではアイ―ダのほうが押し気味でドラマとしては少々アンバランスの感あり。これはこの曲を長年カラヤン59年盤/ウイーンフィルで聴いてきたからだろう。あの録音のアムネリスはシミオナート、アイ―ダはテバルディでもちろんテバルディのアイ―ダも素晴らしい、が役作りのせいか可憐なイメージの歌唱で、シミオナートの女王然とした歌唱と対照的だった。この録音を40年以上聴いているのでその印象がこびりついているためだろう。ちなみにカラヤンはその後ベルリンフィルで入れなおしているが、私にとっては59年盤のほうがヴェルディを聴くのにしっくりする。新盤は何か構えが大きすぎるような気がする。それがヴェルディの音楽の熱気と云うか勢いを削いでいるように感じる。まあ余談です。
アムネリスの清水は先日のサントゥッツァよりずっと良い。声が低い声から高い声までのつながりに違和感がない。4幕のラダメスの説得の場面などは誠に情感あふれる歌唱で聴かせた。
男声陣では水口が熱唱。ヘー・ホイに負けずに張り合うから、2人が絡む場面はものすごい迫力だ。例えばアイ―ダがラダメスに抜け道を聴く3幕の2重唱など大熱演。
アモナスロのチェンイェも立派な歌唱。3幕のアイ―ダとの2重唱は手に汗握る迫力だ。声に凄みがある。底力があると云うよりもう少し張りのある声だ。
妻屋もハオジャンも全く過不足ない歌唱。このように歌手陣が充実しているので、例えば2幕の後半から幕切れまでのアンサンブルが素晴らしかった。演奏会形式でも十分ヴェルディの音楽の素晴らしさを味わうことができた。東フィルももう新国立の座付きオーケストラのようで安心して聴ける。指揮の広上もきびきびした指揮だった。演奏時間は2時間と短かったのはかなりカットがあったため。例えば2幕冒頭のバレエシーンなど5か所ほど。広上は「はあはあ」と声を出したりする相変わらずの指揮ぶりで、演奏会形式のオペラでは邪魔であり、抑えて欲しい。
〆