2012年8月27日
最近見た映画その16
今月は映画館に足を運んで見た映画が多かった。きっかけは日比谷のみゆき座で古い映画を週替わりでやっているということを聞いて、早速見たのがウエストサイド物語、そのあと続けて映画館に行くことになってしまった。やはり映画館の大きな画面と音響は素晴らしい。ただしウエストサイド物語はオリジナルの70mm上映ではないのが不満。こういう上映はできるだけオリジナルで上演してもらいたいと思う。アラビアのロレンスも上演するとのことだったが、そういう上演スタイルならわざわざ行くことがないので止めてしまった。
「ウエストサイド物語」:リチャード・ベイマー、ナタリー・ウッド他
この映画を初めて見たのは高校生のころである。あまりの衝撃で何度見たことだろうか?ロメオとジュリエットの翻案ということは知っていたが、それよりなにより踊りと音楽の素晴らしさに圧倒されてしまった。バーンスタインのこの曲、どれを聴いても素晴らしいがダンスと組み合わされると更に一層映える。
その後何度もこの映画に接するが最近この映画の肝はその翻案の見事さだと思うようになった。プロコフィエフのバレエのロメオと比べても面白い。
ロメオ→ト二―(ベイマー)
ジュリエット→マリア(ウッド)
マキューシオ→リフ(タンブリン)
ティボルト→ベルナルド(チャキリス)
キャピュレット夫人→アニタ(モレノ)
ローレンス神父→ドラッグストアの主人
キャピュレット夫人については異論があるかもしれない。ベルナルドが殺されマリアとアニタの2重唱はまさにティボルトを殺されたキャピュレット夫人の悲嘆に匹敵するだろう。
舞踏会のシーンは体育館のダンス、バルコニーの場は非常階段、シャークス団の「アメリカ」やジェット団の団結の歌はプロコフィエフの町の踊りに匹敵しよう。冒頭の両団の争いなどもオリジナルをうまく生かしている。
音楽と踊りで好きなのは「アメリカ」、「クインテット」、「体育館のダンス」、「I feel pretty」、「アニタとマリアの2重唱}、「クール」など枚挙のいとまがない。このミュージカルは舞台にも接したことがあるが、この映画に毒されているせいか今一つスケールに物足りない。監督のロバート・ワイズ・ジェローム・ロビンスの力によるところ大であろう。懐かしいと同時に今になっても新鮮さが全く失われないということを改めて感じた。
「雨に唄えば」:ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ
これもみゆき座にての再上映を見た。この映画ニューズ・ウイーク誌でアメリカ人の選んだ映画の第五位に入っており、前から興味を持っていたが見る機会がなく今回が初見である。トーキーに切り替わる直前の映画界の立身出世物語だが、話としては他愛のないもの。やはりジーン・ケリーを中心とした踊りとダンスが素晴らしい。ドラマの部分では眠くなるが踊りになると目が覚めるという按排。アメリカの古き良き時代を思い起こさせるのがアメリカ人にとって人気のある理由だろうか?
「ブラックスワン」:ナタリー・ポートマン
ナタリー・ポートマンの怪演に座布団をあげたい。正邪両面をもつ白鳥の湖の主役を獲得した主人公はダークサイドの部分の表現がうまくゆかず追いつめられてゆく。だんだん幻覚を見るようになって現実か幻想か境がわからなくなってくる。後半はまさに狂気の世界でどきどきはらはらである。彼女の自傷行為も伏線になって驚愕の結末。最後まで飽きさせない。ただこういうハッピーエンドでない作りは何か見た後のもやもや感を払しょくできないのは年のせいだろうか?全部夢で大成功という終わりを別バージョンで作って欲しい。バレエの世界が良くわかり面白かったが、振付師がマフィアみたいで気持ちが悪かった。
(日比谷シャンテ・シネ)
「ツーリスト」:アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ
面白い組み合わせの映画で話題になった。案の定がっかりした。終結が半分予測されるような筋立て。大体デップがウィスコンシンの田舎教師には見えない。ジョリーが女スパイ。ソルトの延長線かあ。彼女ももう年なんだからもう少し路線を変えたほうが良いのではないか?だんだん叶姉妹に似てきたのが気持ち悪い。(逆だけど)チェンジリングは叫んでいるだけだったしなあ。彼女で印象に残っているのは「ボーン・コレクター」だ。ああいうシリアスな役を自然にやっていたような気がする。
まあ2人のファンでなければ時間つぶしにしかならない。このように全く緊張感のないサスペンスというのも珍しい。
(レンタルDVD)
「ツリー・オブ・ライフ」:ブラッド・ピット、ショーン・ペン
こういう映画が商業ベースに乗るのだろうか?カンヌ映画祭でパルム・ドールを獲得した作品。欧米人には比較的受け入れやすい映画かもしれない。なぜなら「神」=キリスト
という言葉が何十回も登場するから。欧州の歴史を見て行くとキリスト教の影がおそらく日本人が思っている以上に大きいのだということが最近分かってきた。
地球の誕生、生命の誕生、そしてツリーオブライフというように命の連鎖が始まる。その命の個の代表がブラッド・ピット家でそれを受け継ぐのショーン・ペンだ。映画は地球や命の誕生を前段で長々とやる。ここは美しいが眠気を誘う。ピット家がでてくると少しは話が面白くなるかと思いきや、ただピット家の日常を点描的描くだけである。こういう営みが地球上のすべての生命にありそれが繰り返されて行くということを語りたいのであろうか?私にとっては映像の美しさと音響の素晴らしさ、モルダウ、マーラーの巨人、ブラームスやバッハなどの選曲の妙を楽しむ映画のように思われた。
(新宿ミラノ)
「復讐捜査線」:メル・ギブソン、レイ・ウインストン
オリジナルはテレビドラマだそうだ。娘を殺されたボストンの刑事の壮絶な仇打ちの話。原題は「edge of darkness],真実の暗闇のかろうじてはしっこにしがみつく刑事の心境だろうか?それにしても邦題の品のないこと。
ギブソンは相変わらずでこういう役をやらせたらぴか一だ。話は核兵器の密造などというスケールの大きいもので筋立ては面白い。これでもう少しそれにかかわるアメリカの役人たちの描き方を類型的なものからリアリティーを持たせたらさらに面白い映画になったろうがそうなると更に30分ほど長くなるからちょっともたれるかもしれない。難しいところだ。怪しげなイギリス人役のレイ・ウインストンが面白い。
(新宿ミラノ)
〆
最近見た映画その16
今月は映画館に足を運んで見た映画が多かった。きっかけは日比谷のみゆき座で古い映画を週替わりでやっているということを聞いて、早速見たのがウエストサイド物語、そのあと続けて映画館に行くことになってしまった。やはり映画館の大きな画面と音響は素晴らしい。ただしウエストサイド物語はオリジナルの70mm上映ではないのが不満。こういう上映はできるだけオリジナルで上演してもらいたいと思う。アラビアのロレンスも上演するとのことだったが、そういう上演スタイルならわざわざ行くことがないので止めてしまった。
「ウエストサイド物語」:リチャード・ベイマー、ナタリー・ウッド他
この映画を初めて見たのは高校生のころである。あまりの衝撃で何度見たことだろうか?ロメオとジュリエットの翻案ということは知っていたが、それよりなにより踊りと音楽の素晴らしさに圧倒されてしまった。バーンスタインのこの曲、どれを聴いても素晴らしいがダンスと組み合わされると更に一層映える。
その後何度もこの映画に接するが最近この映画の肝はその翻案の見事さだと思うようになった。プロコフィエフのバレエのロメオと比べても面白い。
ロメオ→ト二―(ベイマー)
ジュリエット→マリア(ウッド)
マキューシオ→リフ(タンブリン)
ティボルト→ベルナルド(チャキリス)
キャピュレット夫人→アニタ(モレノ)
ローレンス神父→ドラッグストアの主人
キャピュレット夫人については異論があるかもしれない。ベルナルドが殺されマリアとアニタの2重唱はまさにティボルトを殺されたキャピュレット夫人の悲嘆に匹敵するだろう。
舞踏会のシーンは体育館のダンス、バルコニーの場は非常階段、シャークス団の「アメリカ」やジェット団の団結の歌はプロコフィエフの町の踊りに匹敵しよう。冒頭の両団の争いなどもオリジナルをうまく生かしている。
音楽と踊りで好きなのは「アメリカ」、「クインテット」、「体育館のダンス」、「I feel pretty」、「アニタとマリアの2重唱}、「クール」など枚挙のいとまがない。このミュージカルは舞台にも接したことがあるが、この映画に毒されているせいか今一つスケールに物足りない。監督のロバート・ワイズ・ジェローム・ロビンスの力によるところ大であろう。懐かしいと同時に今になっても新鮮さが全く失われないということを改めて感じた。
「雨に唄えば」:ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ
これもみゆき座にての再上映を見た。この映画ニューズ・ウイーク誌でアメリカ人の選んだ映画の第五位に入っており、前から興味を持っていたが見る機会がなく今回が初見である。トーキーに切り替わる直前の映画界の立身出世物語だが、話としては他愛のないもの。やはりジーン・ケリーを中心とした踊りとダンスが素晴らしい。ドラマの部分では眠くなるが踊りになると目が覚めるという按排。アメリカの古き良き時代を思い起こさせるのがアメリカ人にとって人気のある理由だろうか?
「ブラックスワン」:ナタリー・ポートマン
ナタリー・ポートマンの怪演に座布団をあげたい。正邪両面をもつ白鳥の湖の主役を獲得した主人公はダークサイドの部分の表現がうまくゆかず追いつめられてゆく。だんだん幻覚を見るようになって現実か幻想か境がわからなくなってくる。後半はまさに狂気の世界でどきどきはらはらである。彼女の自傷行為も伏線になって驚愕の結末。最後まで飽きさせない。ただこういうハッピーエンドでない作りは何か見た後のもやもや感を払しょくできないのは年のせいだろうか?全部夢で大成功という終わりを別バージョンで作って欲しい。バレエの世界が良くわかり面白かったが、振付師がマフィアみたいで気持ちが悪かった。
(日比谷シャンテ・シネ)
「ツーリスト」:アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ
面白い組み合わせの映画で話題になった。案の定がっかりした。終結が半分予測されるような筋立て。大体デップがウィスコンシンの田舎教師には見えない。ジョリーが女スパイ。ソルトの延長線かあ。彼女ももう年なんだからもう少し路線を変えたほうが良いのではないか?だんだん叶姉妹に似てきたのが気持ち悪い。(逆だけど)チェンジリングは叫んでいるだけだったしなあ。彼女で印象に残っているのは「ボーン・コレクター」だ。ああいうシリアスな役を自然にやっていたような気がする。
まあ2人のファンでなければ時間つぶしにしかならない。このように全く緊張感のないサスペンスというのも珍しい。
(レンタルDVD)
「ツリー・オブ・ライフ」:ブラッド・ピット、ショーン・ペン
こういう映画が商業ベースに乗るのだろうか?カンヌ映画祭でパルム・ドールを獲得した作品。欧米人には比較的受け入れやすい映画かもしれない。なぜなら「神」=キリスト
という言葉が何十回も登場するから。欧州の歴史を見て行くとキリスト教の影がおそらく日本人が思っている以上に大きいのだということが最近分かってきた。
地球の誕生、生命の誕生、そしてツリーオブライフというように命の連鎖が始まる。その命の個の代表がブラッド・ピット家でそれを受け継ぐのショーン・ペンだ。映画は地球や命の誕生を前段で長々とやる。ここは美しいが眠気を誘う。ピット家がでてくると少しは話が面白くなるかと思いきや、ただピット家の日常を点描的描くだけである。こういう営みが地球上のすべての生命にありそれが繰り返されて行くということを語りたいのであろうか?私にとっては映像の美しさと音響の素晴らしさ、モルダウ、マーラーの巨人、ブラームスやバッハなどの選曲の妙を楽しむ映画のように思われた。
(新宿ミラノ)
「復讐捜査線」:メル・ギブソン、レイ・ウインストン
オリジナルはテレビドラマだそうだ。娘を殺されたボストンの刑事の壮絶な仇打ちの話。原題は「edge of darkness],真実の暗闇のかろうじてはしっこにしがみつく刑事の心境だろうか?それにしても邦題の品のないこと。
ギブソンは相変わらずでこういう役をやらせたらぴか一だ。話は核兵器の密造などというスケールの大きいもので筋立ては面白い。これでもう少しそれにかかわるアメリカの役人たちの描き方を類型的なものからリアリティーを持たせたらさらに面白い映画になったろうがそうなると更に30分ほど長くなるからちょっともたれるかもしれない。難しいところだ。怪しげなイギリス人役のレイ・ウインストンが面白い。
(新宿ミラノ)
〆