2009年4月24日(金)
第609回日本フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会
第609回日本フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会
プログラム
浦田健次郎:北穂に寄せて(世界初演)
ブルックナー:交響曲第四番「ロマンティック」
指揮
小林研一郎
浦田健次郎:北穂に寄せて(世界初演)
ブルックナー:交響曲第四番「ロマンティック」
指揮
小林研一郎
「北穂に寄せて」は標題音楽と思いきやあまり山を彷彿とさせる曲想はなく少々がっかり。シュトラウスの「アルプス交響曲」のようなものを想定していたけれども案外と面白く聴けた。特に中間部の大太鼓、小太鼓そしてティンパニーの三重奏は聴きもの。いろいろな撥を使い分けて多彩な音を出していた。ただ全体としては淡彩画の趣。日本人らしい。先日の読売の定期でもそうだがこのような初めての曲に遭遇するのも定期会員になる楽しみである。
さて「ブルックナー」であるが小林の指揮するブルックナーは初めてなので大いに期待した。彼の「マーラーの八番」を何年か前に聴いてえらく感激したのを覚えている。さてブルックナーはどうか?
ブルックナーの四番は彼の曲でも最もポピュラーで聴きやすい。若いころから慣れ親しんだ曲である。私が最初にレコードで聴いたのはケルテスがロンドンを振ったものだと思う。デッカの録音の良さにひかれて買ったがこれは本当によく聴いた。その後カラヤンの70年代に録音したものをずっと聴いてきたが、最近はもっぱら録音の良いギュンター・ヴァントの指揮したベルリンフィルをよく聴いている。どれも良い演奏だと思う。この曲の最高の体験は1974年ルツェルン音楽祭でカラヤンがベルリンフィルを振った演奏である。最前列でカラヤンの指揮を近くから見て感激したのを覚えている。このときの演奏ですごかったのは四楽章の冒頭数分間の音の変化でもりもりと音量がデジタルのように増量してゆく様は奇跡としか思えなかった。
実はこの年シカゴでもう一度カラヤンに接している。シカゴのオーケストラホールでのブルックナーの第八番であった。演奏はベルリンフィル。このホールはシカゴシンフォニーの本拠地でなかなか音響が良い。ただ比較的音が飽和しやすいのが欠点だと記憶している。このときのブルックナーは生涯の音楽体験で最高のものだと思う。終わったあと足は震え、帰りの車に乗ってもしばらく運転できなかった。特に第四楽章の巨大さは言葉には表せない。カラヤンを批判する人がよくいるがこのような演奏に接したことがない方たちであろう。
ただこのような名演奏もベルリンフィルという良きパートナーがいたから可能になったと思う。今日の日本フィルの演奏を聴いてつくづくそう思った。日本フィルの技術は私にはわからない。ただアウトプットの音を聴くと違うのである。まず低減の分厚さ、それと金管だろう。これは技量ではなく体質だろうと思われる。ゲルマンのあの深い森に住んだ人々のDNAをもったオーケストラしか出せない音である。あのもりもりした低音と分厚いハーモニーこそブルックナーサウンドの肝ではないだろうか?
さて今日の日本フィルの演奏だが全体に遅い。これは遅い部分がかなり遅いからだと感じた。ただ三楽章は約10分でこれはヴァントの98年の11分14秒、カラヤンの76年10分43秒よりかなり早い。他の楽章が遅い分三楽章がさらに速く感じた。
一楽章は19分50秒かかっておりカラヤンの18分14秒、ヴァントの19分9秒から比べると遅い。そのせいかオーケストラに不満が残る。特に金管、特にホルンが弱いように感じた。先ほど述べたように低減がもりもりこないのも不満。したがって一楽章のコーダはいまひとつ盛り上がりに欠けた。
一楽章は19分50秒かかっておりカラヤンの18分14秒、ヴァントの19分9秒から比べると遅い。そのせいかオーケストラに不満が残る。特に金管、特にホルンが弱いように感じた。先ほど述べたように低減がもりもりこないのも不満。したがって一楽章のコーダはいまひとつ盛り上がりに欠けた。
しかし、二楽章はよかった。17分10秒はカラヤンの14分27秒ヴァントの15分58秒よりかなり遅い。金管もここではリカバリーして木管との掛け合いも美しく、いつもは眠くなる楽章だが最後まで魅かれた。
時間については実はあまり意味がない。というのは小林が選んだ版は1881の初演版、カラヤンは1880年ハース改訂版、ヴァントは1878,80年稿でそれぞれ版が全然ちがうのだ。楽譜の読めない悲しさ、違いはわからぬが、時間に影響していると思う。この二楽章は聴感上も遅かった。
三楽章はオーケストラの威力を感じた。やっとエンジンが温まってきたのかもしれない。金管も頑張った。ただ低弦は今一つ。
四楽章は22分であるがこれはヴァントとほぼ同じ。カラヤンは約21分。カラヤンのハース版では冒頭の盛り上がりでシンバルが入っている。1881年版では入っていない。どちらがよいかは好みかもしれないが私は今夜の版のほうがブルックナーらしいと思う。四楽章の最後も盛大に盛り上がったが先週のルイゾッティの東響のブラームス四番の一楽章や四楽章に比べると音が物足りない。ルイゾッティではサントリーホールを埋め尽くすような音の豊穣感があるが小林では少し希薄な感じがした。これはオーケストラも持ち味かもしれない。また座席の違いも微妙に影響しているだろう。(今日は20列右ブロック、先週は18列中央ブロック)
今日のオーケストラで一人気を吐いていたのはティンパニ。東響のティンパニと双璧だと思った。
以上
時間については実はあまり意味がない。というのは小林が選んだ版は1881の初演版、カラヤンは1880年ハース改訂版、ヴァントは1878,80年稿でそれぞれ版が全然ちがうのだ。楽譜の読めない悲しさ、違いはわからぬが、時間に影響していると思う。この二楽章は聴感上も遅かった。
三楽章はオーケストラの威力を感じた。やっとエンジンが温まってきたのかもしれない。金管も頑張った。ただ低弦は今一つ。
四楽章は22分であるがこれはヴァントとほぼ同じ。カラヤンは約21分。カラヤンのハース版では冒頭の盛り上がりでシンバルが入っている。1881年版では入っていない。どちらがよいかは好みかもしれないが私は今夜の版のほうがブルックナーらしいと思う。四楽章の最後も盛大に盛り上がったが先週のルイゾッティの東響のブラームス四番の一楽章や四楽章に比べると音が物足りない。ルイゾッティではサントリーホールを埋め尽くすような音の豊穣感があるが小林では少し希薄な感じがした。これはオーケストラも持ち味かもしれない。また座席の違いも微妙に影響しているだろう。(今日は20列右ブロック、先週は18列中央ブロック)
今日のオーケストラで一人気を吐いていたのはティンパニ。東響のティンパニと双璧だと思った。
以上