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原題は「CITY OF  GHOST」、スターリン政権下のソ連、1951年のレニングラード(原ザンクト・ペテルスブルグ)を舞台にした警察小説である。邦題にもあるように、結構血なまぐさい。

 主人公はレニングラード民警第17分署のロッセル警部補である。ある晩通報があって、出動すると線路の上に5体の惨殺死体。すべて無残に身元がわからないように処理されていた。上司のリプキン警部らと捜査を開始すると、泣く子も黙る国家保安省(MGB)絡みと云うことがわかってきた。
 やがて、ロッセル警部は自らの出自と事件との相関を発見する。この事件は1941年のレニングラード攻防戦の際に、士気を鼓舞するためのショスタコーヴィチ対ヴロンスキーとの作曲コンペがルーツにあったのだ。ロッセルはその当時レニングラード音楽院のヴァイオリン科の学生で、ショスタコーヴィチの出品作品のあの名曲「交響曲第七番・レニングラード」を演奏したのだった。

 トム・ロブ・スミスの映画化もされた「チャイルド44」を思わせる時代背景であるが、本作の方がずっと政治臭が強い。ベリヤやマレンコフなども登場する。保安省と対峙しながらロッセルが事件の真相を暴くわけであるが、面白いのは各章はオペラののように、1幕、2幕と名前が付けられているように音楽との関連が深いことだろう。
 なお、ショスタコーヴィチの交響曲は実際に存在するが、ヴロンスキーが出品したのは協奏交響曲だが、創作である、というか、ヴロンスキーそのものが創作である。実在しない作曲家である。
 登場人物の造形がそれぞれ面白く、ストーリー展開も小気味よく、面白かった。