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1492年、コロンブスの新大陸発見以前にもアメリカ大陸や、その他オセアニア、ユーラシア大陸にもアフリカ大陸にもそれぞれ文明があったというのは、もう誰でも知っていることだ。それは4大文明のあと、紀元1000年までの間の文明・国家の栄枯盛衰の末に、残っている世界の多くの文明国家。そのころは、中国を頂点として、アジア、アフリカが世界の文明国家の中心だった。ヨーロッパはいまだ文明と云うに程遠く、アジアの物産にあこがれの視線を向けている国々に違いなかった。

 本書はそういう、よく知られたことを羅列したわけではない。本書の優れたところは、紀元1000年ころの文明国家たちは、それぞれが単独で盛衰を繰り広げていたわけではなく、ある時は交易で、ある時は宗教でつながっていたということを実証的に論じたことにある。それが今日のグローバライゼーションとの近似系であるということから、本書のサブタイトルがつけられているのだ。

 本書はまず、ヴァイキングたちが、グリーンランドを経てコロンブス以前に北アメリカに入植したところから始まる。ここで注目すべき点は、ヴァイキングたちは北米にとどまることなく、南下して、ユカタン半島(マヤ文明)との接点があったと実例で説明している。

 次いで、ヴァイキングたちは、バルト海を経て、現在のロシアへ入り、ロシア人の祖となる、ルーシ人となり、ユーラシア大陸の大きな部分を占める。彼らは土俗宗教から、ギリシャ正教会へ信仰を変えることによって、世界のその他の文明との交流を可能にしてゆく。そこには当然交易も始まるのだ。

 宗教と云うとイスラム教の影響は大きく、中央アジアの多くの国家はイスラム教徒になることから、多くの国々との接点を持つことができるようになり、それはアフリカにも言えた。
 本書で最も面白いのはアフリカの記述である。世界一の金持ちは、マリの黄金王だというのだから痛快だ。このころのアフリカの主要物産は黄金と奴隷だったということも興味深い。
 イスラム教と仏教との激突が中央アジアで繰り広げられるが、一方それはシルクロードという交易路を切り開き、文明や物産の交流にもつながった。
 有名なイスラムとキリスト教の激突は、十字軍での遠征の中で繰り広がられるが、ここでも物産の交易の道は開かれるのである。

 最後は中国だが、中国については多くの書物が描いているのでそれほど新鮮味はない。

 コロンブスやバスコ・ダ・ガマやクック船長らが新しい航路を切り開いたということになっているが、実はそれはすでに1000年のころの人々によって切り開かれたものであり、ヨーロッパ人たちはそれに便乗したに過ぎないという。
 例えばガマのインド航路はアフリカ沿岸の喜望峰までのルートを越えると、そこから先のインドまでの道は、もうハイウエイだったのである。また中国から香料諸島~マラッカ海峡~シンガポール~インドまでの道も確立されていたのでる。
 これは新視点であり、今日世界の頂点にある西洋が世界を制覇してグローバライゼーションと威張っているが、それは決してオリジナルではなかったということである。大変面白い作品だった。〆